in front of.『何卒』

慶應義塾　創像工房　

　―ギミックとクリシェのオンパレード―

　場内に入ると銭湯の男湯の脱衣所。その作り込みがスゴイ。生きている金魚、アイスクリームケース、マッサージ機(もちろん動く)などなど。(了解をとって撮影)

　ラジオ放送が流れていて「増川のイブニングシーンレディオ」という番組。もちろんオリジナル。CMが入ると「スジャータ」、かける音楽はJ.ブラウンのゲロッパの「肉まん」バージョン。交通情報も入り「白装束の集団により渋滞」などとあり、これはヒントかなと思わせる。

　風呂から上がってきた青年が出てくる。

　場内にカッパが入ってきて一番前に座る。(最後まで座っていたので、観客のひとり)

　風呂から上がってきた青年が二人出てきて、その三人で脱力系の会話を延々と続ける。例えば「風呂から上がって牛乳を呑みたくなるのは謀略」この牛乳を別の物にしたら「新しい維新だから、新維新、あるいは維新改だ」など。

　その会話は観客の笑いを誘う。

　そして、これから文明開化があるとすると宇宙との関わりだと言う。

　他の客もぽつぽつ入ってくるが、それぞれ変。

　RPGに出てきそうな剣を持った少年だったり、「白装束」の宇宙人だったり、翼をもった天狗だったりする。しかしそれらは青年たちの会話に登場してきたもの。ところが彼らはその人物に全く関心を示さない。

　宅急便が届く。

　その箱の中はたくさんの「ダルマ」

　テレピのリモコンを探すが見当らない。

　柱にいくつかのスイッチがありそれでテレビが点くか試す。ダルマが落ちてきたり、マトリューシュカが出てきたり…最後のごっついレバースイッチを倒すと壁から樋が出てきて大量のダルマが流れてくる。

　彼らはスイッチを押すという冒険心に騒ぐが、ダルマにはほとんど関心を示さない。

　そうこうしていると作業員がひとりやってきて、壁際に何かを組み立てる。出来上がると扉である。

　天の声があり、三人の青年は「何か美味い物でも喰いに行こう」とその扉を開ける。その扉には緑の光が溢れていて、三人は去っていく。

　そして、幕が下りるが歌舞伎幕。

　彼ら三人は外来者であり、彼らには自由がなかったことが分かる。

　40分の小品ながら佳作である。クリシェのオンパレードが効果を生む実例…ただダルマの意味が未だに分らないが…しかも「何卒」と記されている特製品。キーワードは「タカサキ」?あるいは「ゼンジ」?ベンジー北京じゃないよな。

2013.11.14-17

日吉塾生会館地下

慶應義塾 創像工房 in front of.『何卒』