2項モデルとは、オプションの対象となる原資産価格(ストックオプションなので株式を前提)が、上昇した場合と下落した場合の2パターンを仮定して、オプション価格を求めるモデルです。
原資産価格の推移を「××%上昇」、「△△%下落」と捉えるわけです。
「金融資産の価格は、それがもたらす将来キャッシュ・フローの現在価値の合計である」というファイナンス理論の基本原理を以前紹介しましたが、逆の見方をすれば、「将来キャッシュ・フローの現在価値の合計が同じ金融資産であれば、価格も等しい」はずだといえます。
この考え方から、金融資産のバリュエーションにおいては、キャッシュ・フローがバリュエーション対象の金融資産と等しくなるポートフォリオを市場価格のある金融資産から合成することよって、金融資産の価格を求めることがしばしば行われます。
このポートフォリオは裁定ポートフォリオと呼ばれます。
裁定ポートフォリオは「すべての投資家が合理的行動をとり、価格形成が行われる効率的な資本市場においては、満期時に同じ価値をもたらすポートフォリオ同士は、投資額も同じでなければならない」という概念です。
オプション(コールオプション)は原資産(株式)と借入金でキャッシュ・フローを合成できることが知られています。
2項モデルでも、原資産と借入から裁定ポートフォリオを作ることにより、オプション・プレミアムを求めることができます。
以下のような簡単なモデルでオプション価格を求めてみます。
現在の株価:1,000円 権利行使期間:1年 権利行使価格:1,100円 オプション価格:??円 リスクフリーレート:年率10% 満期日株価:上昇した場合1,400円、下落した場合800円 オプション・タイプ:ヨーロピアン(満期日のみ権利行使できる場合) |
まず上記条件のオプションを1単位購入した場合のキャッシュ・フローはどうなるでしょうか?
【オプション1単位購入の場合のキャッシュフロー】
| 現在のキャッシュフロー | 1年後のキャッシュフロー | |
株価が800円に下落した場合 |
株価が1,400円に上昇した場合 | |
オプション1単位:△??円 |
0円(=権利行使せず) | 300円(=1,400円-1,100円) |
| 合計:△??円 | 合計:0円 | 合計:300円 |
オプション価格を求めたいので、当然、現在のキャッシュフローは??です。
では上記オプションを1単位を購入した場合のキャッシュフローを原資産と借入により合成してみましょう。
オプションを1単位を購入した場合のキャッシュフローを合成したいわけですから、1年後キャッシュフローは「株価が800円に下落した場合の正味のキャッシュフローは0円」「株価が1,400円に上昇した場合の正味キャッシュフローは300円」になります。(下記図の赤字の部分です)
【株式と借入による裁定ポートフォリオのキャッシュフロー その1】
| 現在のキャッシュフロー | 1年後のキャッシュフロー | |
株価が800円に下落した場合 |
株価が1,400円に上昇した場合 | |
株式購入:△??円 借入金 :+??円 |
+??円 △??円 |
+??円 △??円 |
| 合計:?? | 合計:0円 | 合計:300円 |
それでは??の部分を解いていきましょう。
① まずは株式購入数を求めることにより上図の青字の部分を求めます。
オプション1単位を購入した場合の正味キャッシュフローと等しいキャッシュフローを合成したいのですから、株価が800円に下落した場合と株価が1,400円に上昇した場合のキャッシュフローの差分が300円になるような購入単位にします。
株式購入単位をSとすると (1,400円-800円)×S=300円 という方程式が導けます。
これを解くと S=0.5 となり、株式を0.5単位購入すればよいことがわかります。
これをさきほどの図に入れてみると下記のようになります。
【株式と借入による裁定ポートフォリオのキャッシュフロー その2】
| 現在のキャッシュフロー | 1年後のキャッシュフロー | |
株価が800円に下落した場合 |
株価が1,400円に上昇した場合 | |
株式購入:△500円 借入金 :+??円 |
+400円 △??円 |
+700円 △??円 |
| 合計:?? | 合計:0円 | 合計:300円 |
そうするといくら借入を行えば、合計額と整合するかわかりますね。1年後キャッシュフローで400円となる借入をすればいいのです。現在のキャッシュフローには、現在価値で算出する必要がありますので「400円÷1.1=363.64円」になります。
これをさきほどの図に入れてみると下記のようになります。
【株式と借入による裁定ポートフォリオのキャッシュフロー その3】
| 現在のキャッシュフロー | 1年後のキャッシュフロー | |
株価が800円に下落した場合 |
株価が1,400円に上昇した場合 | |
株式購入:△500円 借入金 :+363.64円 |
+400円 △400円 |
+700円 △400円 |
| 合計:△136.36円 | 合計:0円 | 合計:300円 |
1年後の将来キャッシュフローを合成がすることができました。
したがって、オプション1単位の現在キャッシュフローも当該裁定ポートフォリオのキャッシュフローと等しくなければならないため、「オプション価格=136.36円」であると求めれることができるわけです。