オレはこの世界の人間じゃない
この仮説に辿り着くまで、もの凄い時間を要した
いつ、こっちに来てしまったんだろう オレは、もっと平凡でどこにでもいるようなつまらない人間だったはず
見分けのつかない並行世界 作り物だとしても、それはなに変わらない
オレはただの人間だったし、元の世界でもそうだった
この世界のオレは、不運の塊みたいな男で、なにをやってもあり得ない確率でアクシデントに見舞われる
だが、一つ言えるのは、こんな状況でも決して死ぬことがない どんなに不運でも、飢え死にすることもなく、人を殺めることもない 首を吊ることもなく、銃口を咥えて引き鉄をひくこともない
元の世界に戻ることもできない だが、この世界もそんなに悪くはない 得られるものはないけれど、失うものも持っていない
いつか、命の灯が尽き、再び暗黒の眠りについたとき、オレの意識は過去の全てを忘れ、そしてまた別な世界へと導かれる
オレの意識の下で出会う見ず知らずの人間たち 元の世界の住人か、これから行く世界の知り合いか
答えを知っているのは、オレの全てが終わるときを知っている別なオレだけだ