夜、ノートパソコンの前に座る。
Excelで作った履歴書のフォーマットを開いたまま、しばらく画面を見つめていた。
氏名、住所、連絡先。
そこまでは数日前に入力していた。
でも、それ以降、何も進んでいない。
特に「志望動機」の欄だけが、ぽっかり空白のままだ。
職務経歴書も、まだ真っ白なままだった。
履歴書よりも具体的な内容が求められるその紙には、なぜか手が伸びなかった。
どこから、どう書けばいいのか。
考えすぎて、動けなくなっていた。
この会社を辞めることは決めた。
けれど、じゃあ自分は何がしたいのかと問われると、まだはっきりとは言えない。
「今のままじゃだめだ」と思った気持ちは本物だけど、それだけじゃ次へは進めない。
履歴書って、未来のことを書くものなんだな。
ただ過去を並べるだけじゃ足りない。
これからの自分を、どう描くか。
それを言葉にしなければならない。
ふと視線を落とすと、机の端に置きっぱなしだった古いメモ帳が目に入った。
めくってみると、過去の点検記録や資格の勉強メモ、現場での気づきが書き込まれていた。
細かい数字、図、走り書きのようなメモ。
こんなふうにして、僕はここまでやってきたんだ。
大きな成果はなくても、少しずつ積み重ねてきたものが、ちゃんとある。
それは、これから先にもきっと繋がっていく。
もう一度、パソコンの画面に向き直る。
ゆっくりとキーボードを打ち始める。
「現場経験を活かし、設備保全の専門技術をより深められる環境で――」
短い一文。でも、それが今の僕の言葉だった。
完璧じゃない。でも、これが僕の“今のかたち”だ。
空欄はまだある。
職務経歴書にも、まだ一文字も書かれていない。
でも、今日はこれでいい。