先に本ブログで投稿した「まとめプレゼンテーション」を作成してみて、私は今の世の中の子育て常識には多くの誤解があると考えました。
 そこで今回は、それらの「誤解」と本来の「正解」とを挙げてみたいと思います。


【第1章】
◯《誤解》「抱き癖がつく」として、泣いている赤ちゃんを抱かずにそのままにしておく。
→《正解》ある専門家はこれを「“放置”と言う心理的虐待」として警鐘を鳴らしている。
◯《誤解》「子供がまだ物心もつかない時期に親が育児の手を抜いたからといって子供の成長に影響出るはずがない」というネット意見に多数の「いいね」。
→《正解》・人間の生後1年間は「生理的早産」により、他の動物が生前1年間母胎内にいるのと同じように完全な保護を要する未熟状態であり、その時期の養育が子供に決定的な影響を与える。



・愛着形成に最も大切な時期は、幸せを感じ取る受容体の数が最も増える時期である1歳半まで。その時期に十分に世話をされないと子供の一生を心理的に支える「基本的安心感」や「基本的信頼感」、更には知能面、結婚意欲、各種依存症、心身の健康面他にまで大きな悪影響及ぼし、それが様々な社会問題にまで発展する場合もある。
◯《誤解》「育児は父親でも構わない」
→《正解》・“始め”は誰でも良いと言うものではなく、子供には始めは母親という「特定の人」の存在が必要。・子供が父親を信頼するまでは“育児”の分担は不適で、母親が育児に専念できるように家事を担う方が好ましい。
◯《誤解》「0歳児保育をしても家で愛情を注げば大丈夫」
→《正解》・「三つ子の魂百まで」から「幼児期までに愛情を注げば良い」という考えからかも知れないが実質は精神科医の岡田尊司氏が言うように「一つ子の魂百まで」。子供が登校拒否に陥る要因として、母親自身が乳幼児期に親から愛されないために今の子供への母性が不足する「真性の母性喪失」以外に、母親自身は自分の親から愛されて育ったが仕事等のために育児時間が減り知らない間に子供に対する母性が不足する「状況性の母性喪失」がある。・「特定の人」の存在が保証されない0歳児保育が引きこもり等の子供の心の病や原因の分からない非行問題を招く。

◯《誤解》「保育園に行って困らないように、できるだけ早く身の回りのことができるようにさせてあげたい」等と乳児期のうちからトイレトレーニング等を始める。
→《正解》子供が自分の気持ちをコントロールする必要があるトイレトレーニング等は「絶対依存の時期」を過ぎた1歳半以後に行うようにしないと、生涯にわたって心に大きな傷を残し、後に、長く学校に登校できなくなるなどの大きな問題として表面化することがある。
◯《誤解》「小一プロブレム」(小学1年生の子供が、授業中にも関わらず教室内を歩き回ったり、先生の指示通りに行動できなかったりする現象)は親のしつけが甘いために起きる。
→《正解》幼児期のうちに愛着を修復できないと小学校に上がってから発達障害のADHDと似た症状を示すことが指摘されており、「小一プロブレム」はその表れと考えられる。つまり乳児期以来の愛着形成行為の不足が根本的な原因。

【第2章】
◯《誤解》親曰く「自分がそうだったように、子供と言うのは厳しく叱られて育つもの。その方が打たれ強い人間に成長する」「自分がそうだったように、子供は大人の言うことを何でも聞くもの」
→《正解》そういう誤った認識から①親が何気なく使う「早くしなさい!」「うるさい!」「何度言ったら分かるの!」等の否定的な言葉による叱責や、②褒めたり褒めなかったり注意したり注意しなかったりする一貫性の無い気まぐれな指導が行われ子供が愛着不全に陥る(①によって「回避型」愛着不全、②によって「不安型」愛着不全に陥る可能性あり)。
◯《誤解》「親に頼らず自分の力で頑張れ」「弱音を吐かず自分の気持ちを強く持ちなさい」等という指導で子供の心が強くなる。
→《正解》過度に自立を求める親が子供を「回避型」愛着不全に陥らせる。
◯《誤解》子供がゲームやギャンブル等に依存したり原因不明の頭痛や腹痛に襲われたりするのは子供の気持ちが弱いから。
→《正解》何れも親子間の愛着によって持たらされる安心感が不足していることから、依存することで得られる一時しのぎの安心感でそれを補おうとしたり、自律神経に負荷がかかったりしているため。
【第3章】
◯《誤解》母親らしさとは子供をしつけること。
→《正解》母親らしさとは、父親のしつけの指導等を受けて不安を抱えている子供の気持ちを受容すること。
◯《誤解》父親と母親とが一緒になって子供を叱る。
→《正解》本来「安全基地」になるべき母親からも責められることで子供は逃げ場を失い精神的に追い詰められる。
◯《誤解》父親らしさとは子供を厳しく叱ること。
→《正解》子供に任せて試行錯誤する様子を見守ったり適宜指導したりすること(暴力や大声は不必要)。
◯《誤解》「母親か父親かどちらか一方の立場が弱くても子供の教育には影響しない」
→《正解》父親と母親の役目は異なり、それぞれが互いに尊重し合うことで初めて子供がバランス良く健全に成長する。
◯《誤解》「子育ては母親の役目」
→《正解》本来しつけ役は父親の役目
◯《誤解》子供の才能を伸ばすために早期教育を行う
→《正解》特に幼児後期(3〜5歳)は親から強いられる事ではなく子供自らが関心を持った事に没頭させることで子供の脳が発達し将来の仕事に役立つ問題解決能力が獲得される。
◯《誤解》父親が育児休業を取得せず母親に「ワンオペ育児」をさせている。
→《正解》日本の愛着不全は高度経済成長期に今で言う「ワンオペ育児」が始まったために見られるようになった。つまり現在も「ワンオペ育児」が行われている家庭の子供は将来愛着不全になる可能性が高いと言える。
【第4章】
◯《誤解》朝保育園で母親と別れる時などに泣く子供に「がんばって行きなさい」等と叱咤激励する。
→《正解》・母親と別れることを強く拒むのは、それまでの親と離れても親のイメージが湧くだけの愛着形成行為が不足していたためであり、急に「行きなさい」と強いるのは無理。無理に登園させようとすると、子供が「過興奮性」の精神疾患をきたしたり、脳の自律神経系がダメージを受けホルモン系や免疫系の異常をきたしたりする。・幼児期に問題が解消されないと、その後子供が親に強く反発する思春期や鬱症状や精神疾患が見られ長い引きこもりに陥る青年期にさらに大きな問題として現れるため、幼児期は子供を休ませ愛情をかけ直すチャンス。
◯《誤解》「何度注意したら分かるの!」「あなたはどうしていつもそうなの?!」
→《正解》子供は少なくとも思春期を迎えるまではどんなに厳しくされても親の言葉を受け止めようとすることが多い 。それにも関わらず、その親から言われたことを何度注意されても直せないという背景には、「この人の言うことをがんばろうと思えない」という「回避型」の愛着不全や、「どんなにがんばってもできない」という発達障害等、何らかの深刻な要因が潜んでいることが考えられる。
◯《誤解》熱心に取り組んでいる子供に親がアドバイスをする。
→《正解》特に幼児後期(3歳〜就学時)に子供の活動に親が口を出し過ぎると、脳の発達や将来の仕事に必要な問題解決能力の発達が損われてしまう。
◯《誤解》「日常場面では何も指導する必要がない」
→《正解》子供によっては普段の“安心貯金”が足りていないために不登校や自殺に陥る場合がある。
◯《誤解》問題のある子供に直ぐに注意する。
→《正解》子供は自分がピンチに陥った時こそ親がどう行動するかを観察しており「親は自分の気持ちを分かってくれた」という実感を持てた子供は「自分の気持ちを理解してくれる、この親の言うことを聞きたい」という気持ちになる。つまり、子供に問題が見られた時には先ずは子供の気持ちを受容し共感する母性が必要。
【オプション】
◯《誤解》親「この子は聞き分けが良く思いやりのある良い子」
→《正解》先天性の感覚過敏のHSCである可能性が強く、親の「良い子」「思いやりがある」という親の期待を敏感に察知しそれが過度なプレッシャーとなるが、それを我慢し続ける傾向が強く、後で爆破して登校拒否に陥ることもある。
◯《誤解》「こだわりが強くマイペースな面倒な子」
→《正解》先天性の感覚過敏のASDである可能性が高く、否定的な接し方をしていると、自分の世界に頑なに閉じこもってしまい引きこもりに陥る可能性が高い。


 精神科医の岡田尊司氏によれば、日本の愛着不全現象は戦後の高度経済成長期に核家族が誕生し、それ以前と違い祖父母からの援助が受けれなくなった環境の中で、今で言う「ワンオペ育児」が初めて行われたことから始まったとされています。その後、その育児によって育てられた子供が大人になり自らがされた同じ育児によって子供を育て、更にその子供がまた大人になり…の悪循環によって今に至っています。更に様々な価値観が見られるようになった結果、今やネットに投稿された「子供がまだ物心もつかない時期に親が育児の手を抜いたからといって子供の成長に影響が出るはずがない」という意見に多くの「いいね」が集まり、子供を自宅に残し夜に遊び歩く親までも現れる世の中になっています。

 できれば小学校に入学するまでに、子供への接し方を本プレゼンの第3、4章のように改善できれば比較的リスク少なく子供の愛着は修復できるのですが、上記のような悪循環を断ち切って根本的な解決を図ろうとするならば、出産前に少なくとも本来の育児環境について説明した第1章での「誤解」を知った上で正しい育児を行う必要があるでしょう。