【今回の記事】
体罰禁止のガイドライン案 親はどうする(日テレ「news every.」の「ナゼナニっ?」のコーナーより)

【記事の概要】
   東京豊洲のタワーマンションで、同居する女性の3歳の息子を暴行し死亡させたとして、34歳の会社員の男が3日逮捕された事件。子どもが親の体罰の犠牲になる事件が相次いでいる。
   こうした中、厚労省は3日、親による体罰が来年4月から禁止されるのを前に、何が「体罰」にあたるのか、ガイドラインを示した。

   番組では、ガイドラインの紹介に先立ち、次の4つの行為のうち、どれが体罰に当たるかを推理。


1〜口頭で注意しても聞かなかったから頬を叩いた。
2〜子どもが友達を叩いたので、同じ痛みを味わわせるために子どもを叩いた。
3〜子どもが道路に飛び出そうになったので反射的に子どもの手を強くつかんだ。
4〜子供にやる気を出させるために、兄弟と比較してダメ出ししたり無視したりした。

   番組ではここで、厚労省が示したガイドラインを次のように紹介。



   この定義に当てはめると、1と2については明らかに体罰。3は子どもを危険から守る“保護”行為であり、逆に車にひかれることによる「不快感」を防いでいるので体罰とは言えない。問題は4…。

   解説では、「今回のガイドラインでは、物理的な力によるものではなくても、言葉子どもの心を傷つけ「不快感」を与えているのでアウトとされている」と説明。出演者は皆「へえ〜」という表情。

【感想】
   さて、私はこの「解説」を聞いて、「え?定義では『身体に苦痛や不快感を与える』とあるのに、『に苦痛や不快感を与える』ことも体罰に含まれるの?」と思いました。

定義と事例との矛盾

   因みに、別報道によれば、「来年4月に施行する改正法では『“言葉”や“態度”によって戒める行為は禁止対象外』とされているが、今回の検討会では『言葉による暴力も体罰と同じ』との意見が相次ぎ、『きょうだいを引き合いにダメだしや無視する』『冗談で生まれてこなければよかったと存在を否定』などの暴言も禁止した」とありました。

   つまり、当初は定義にある通り「(体罰とは)身体に苦痛を与える罰」とガイドラインを作成したのですが、検討会の意見の中で「言葉による暴力も体罰と同じ」との意見が相次ぎ、それに対応した禁止事例を急遽追加した、というのが実際のところのようです。それならば『身体』ではなく『心身』とするべきではないでしょうか?会議の流れの中で勝手に定義を曲げて示された事例など、とうてい受け入れられるものではありません!…と言いたくなるところですが、それは少々早合点かもしれません。


実は言葉も体罰

   実は、私は以前紹介した記事で次のように紹介しています。

「体罰や暴言により、子どもの脳に“萎縮”や“変形”が起きること親子関係の悪化や精神的な問題が起きやすいことが、国内外の研究で明らかになっている」

   つまり、国には「脳という身体の一部への暴力」という捉え方までして欲しかったのですが、今回の発表ではそこまではふれられていないので、定義と事例との矛盾は否めない形です。
   では、世間的には言葉による心への苦痛はやむを得ないのでしょうか?

コンプライアンス上の問題
   因みに、私の個人的な考えを言えば、“無視”行為は、大人の職場においては、脅迫名誉毀損侮辱仲間外しと並んで「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」という「パワハラ」として厚労省によって認定される(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html)ものです(職場でなければ「モラルハラスメント」)から、そこで裁判沙汰にさえなることもある深刻な精神的ダメージを考えれば、当然子どもに対しても禁止行為でしょう。同様に、兄弟と比較してダメ出しをする行為は、年上としてのプライドを傷つける“侮辱”行為と捉えられるものと思われます。
   同様に「パワハラ」行為とされる「過大な要求(明らかに不要なことや遂行不可能なことの強要⇨例:虐待で亡くなった船戸結愛ちゃんが父親から課せられていた「朝4時に起きて平仮名の練習をする」等)」や「過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと⇨例:小学生に「お前にはこれくらいが丁度いい」として3歳児用の練習帳をさせる等)」も禁止行為でしょう。
   このように、子どもの心を傷つけるのは、コンプライアンス上の問題があるからなのです。

大人も子ども同じ人間
   私達大人はややもすると「子どもは親から怒鳴られるのは当たり前」と考えがちかもしれませんが、大人が職場でされて苦痛なことは、まだ未完成である子どもであれば尚更苦痛です。ましてや、私達が職場で上司から怒鳴られることはそうそうあることではないのかも知れませんが、子どもはそれがほぼ毎日なのです。仮に私達が子どもと同じように職場で日常的に怒鳴られていたらどうなるでしょう?現実に自殺する大人さえいるのですから、SNSで優しい言葉をかけてくる見知らぬ大人についていきたくなる子どもが現れるのも当然かもしれません。
   それならば、これらの「パワハラ」や「モラハラ」という考え方を、普段私達が同僚に対して配慮しなければならないモラルとしてのみ意識するのではなく、子どもに対する養育とセットにしたコンプライアンス意識として覚えると良いのではないでしょうか?そうすれば、先のような“疑問”も起きないのではないと思います。

どうすれば体罰をしないで済むか?
   それでも、
何度言って聞かせても直らない。どうすればいいのか?
とお考えの方には是非「段階的注意」をお勧めします。詳しくは「【叱り方】~段階を踏んだ叱り方のルーティンで子どもは進んで行動を改める~」をご参照ください。