【今回の記事】

【記事の概要】
①相次ぐ児童虐待による死亡事件を踏まえ、東京都は保護者による子どもへの体罰暴言を禁じる条例案をまとめた。20日開会予定の都議会に提出し、4月1日の施行を目指す。都道府県レベルで家庭での体罰禁止を明記したのは初めて。児童相談所(児相)間の引き継ぎなどを徹底する規定も盛り込み、虐待の未然防止や早期発見を目指すが、実効性には課題も残る。
   民法では、親権の一つとして「懲戒権」を認めているが、条例案は体罰や暴言を「子供の品位を傷つける罰」として禁じ、都の責務を「体罰などによらない子育ての推進」と規定した。都は子の利益のため」かどうかを判断基準とし、体罰・暴言は子の利益に反することから、懲戒権には当たらないとしている。ただ、条例案には罰則規定や、具体的にどの行為が体罰に当たるかの定義は盛り込まなかった。都の担当者は「時代や家庭環境、子どもの性格などによっても体罰の定義は変わるため」と説明。まずは児相などを通じて「しつけであっても体罰はいけない」との考え方を広めたい考えだが、線引きがあいまいなままで体罰や虐待を防げるかは不透明だ。
②都が昨年末、条例の骨子案をもとに都民に意見を募ったところ、65人から248件の声が届き、「どこからが体罰なのか」「多少のしつけも体罰となるのか」といった疑問が相次いだ。体罰の禁止については「とても意義がある」と賛成する意見が7件だったのに対し、「家庭内に自治体が介入することは適切ではない」「体罰が子どもの成長に資すると思われる部分もある」と反対意見が21件だった。「言葉で注意しても聞かないときにはどうすればいいのか」といった声もあった。


【感想】
   虐待以外に体罰暴言を禁じる条例は今回の東京都がが初めてです。

   今回の条例制定の動きの中で、最も疑問視されているのは、次のことだと思います。
どこからが体罰なのかが分からない
多少のしつけも暴言や体罰となるのかが分からない

これらの答えを導き出すために、まずは、「体罰」とは何か?「暴言」とは何か?について考えてみたいと思います。

「体罰」とは何か?「暴言」とは何か?
   まず、体罰とは?
そもそも「罰」とは一般に次のように捉えられています。
「罪や過ちに対するこらしめ。仕置き。『一週間外出禁止のを受ける』『として廊下に立たされる』」
すなわち「体罰」とは「罪や過ちに対する身体に苦痛を与えるこらしめ」です。つまり今回の条例では、子どもが犯した何らかの罪や過ちをこらしめるために身体に苦痛を与えることを禁止されていることになります。
   では、体が接触する行為は全てこれに当てはまるかと言うと、そうでは無いと考えられます。例えば、子どもの頭に親が手を優しく当てながら熱心に説諭する行為は体罰とは言えないでしょう。なぜなら、子どもが嫌がっていないからです。逆にこれは“スキンシップ”と言えるでしょう。つまり「親からの接触行為で子どもが肉体的な苦痛を受けたかどうか?」の基準は、「痛い」等の“嫌がる子どもの発言や表情”と言えると考えます。

   次に「暴言」とは?
「暴言」とは、一般に次のように捉えられています。
「他人を傷つけるような乱暴な言葉。『 -を吐く』」
この場合の「傷つける」とは、「いじめ防止対策推進法」の言葉(「(いじめとは)心身の苦痛を感じているもの」)を借りれば、「他人に精神的な苦痛を与える言葉」と言えます。つまり「親からの言葉で子どもが精神的な苦痛を受けたかどうか?」の基準は、やはり嫌がる“子どもの発言や表情”と言えると考えます。

体罰や暴言の基準
   以上のことから、以下の結論が得られます。
「どこからが体罰なのか」
⇨身体接触の際に、子どもが嫌そうな発言や表情をしたら体罰。
「しつけも暴言や体罰となるのか」
多少の親がしつけのつもりでも、子どもが嫌そうな発言や表情をしたら暴言や体罰。

   都は「時代や家庭環境、子どもの性格などによっても体罰の定義は変わるため」と、具体的にどんな行為が体罰に当たるかの定義は盛り込みませんでした。しかし「子の利益のため」かどうかを判断基準としているならば、その時の子どもの発言や表情という“子どもの気持ち”が現れる要素が基準になるのは極当然の考えです。いじめ問題で加害者意識に関係なく被害者意識が最優先されるのと同じように、体罰・暴言問題でも加害者の親意識ではなく被害者である子どもの意識が最優先される「子どもファーストのスタンスに立つことが重要なのだと思います。

子どもが納得する行為なら“しつけ”
   もしかしたら、「子どもが嘘をついてわざと嫌がる演技をしたら?」と言う疑念を抱く方もいらっしゃるかも知れません。仮にそうだったとしても、「疑わしきは罰せず(『犯罪事実がはっきりと証明されない時は、被告人の利益になるように決定すべきである』という裁判原則)」の考え方に則り、はっきりと嘘だと分からない限り、体罰や暴言だったと判断するべきだと思います。そして、その後に嘘をついたことが分かった時点で、厳しく叱っても、いや“怒って”もいいのではないでしょうか?なぜなら、その事は子ども自身が「嘘をついた自分が悪い」と納得するからです。ちなみに、“しつけ”行為の定義は、文科省の定義によると「何をしたら褒められ、何をしたら罰せられるのか、子どもでも理解し予測できるもの」とされています。ですから、その場合は“しつけ”と判断できるのです。

「相手が嫌がることはしない」という原則
   これは、親だけでなく子どもにおいても同様です。例えば子どもが友達に対して、何らかの働きかけをした時に、その友達が辛そうな発言や表情をしたら、その働きかけをストップさせなければならないのです。いわゆる「友達が嫌がる事はしないようにしましょう」というアレです。しかし親が子どもに「友達が嫌がる事はしちゃダメだよ」教える限りは、親も子どもに対して同じように気をつけることは、条例云々以前の当たり前のことだと言えるでしょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   次に多い疑問は
言葉で注意しても聞かないときにはどうすればいいのか?
についてです。
   長くなったので、このことについては次回お話しします。
(つづく)