【今回の記事】

【記事の概要】
①山口県周南市で2016年、県立高2年の男子生徒が自殺した問題で、県いじめ調査検証委員会が教職員による「いじめに類する行為」を認め、報告書をまとめたことを受け、両親と代理人の石田達也弁護士が6日、県庁で記者会見した。父親は「最も怒りを覚えたのが教員による“いじめ”。子どもを守るべきなのに息子を傷つけていたとは想像できなかった」と話した。

②6日放送の『とくダネ!』(フジテレビ系)での、獨協大学経済学部特任教授の深澤真紀氏の指摘に称賛が集まっている
    この日の同番組では2016年、山口県の高校2年生が自殺した事件を紹介。検証委員会の調査によって、教職員から全校生徒の前で名前を呼ばれて笑われたり、授業中にアダ名で呼ばれたりするなど様々な“いじめ”があったことが判明。ただ、最初に真相究明にあたった県教育委員会は報告書で「いじめ」を「イジリ」と言い換えていたことも発覚している。これについて深澤氏は、学校教育の間で「イジリといじめの問題がとても大きくなっている」と言及。人気のある教師はバラエティ番組のMCのようになり、特定の生徒をイジって笑いを取るようになっていると語った。

ただ一方で、「イジられる側は、いじめと変わらないと思っていることがほとんど」と糾弾。こうした風潮が蔓延している背景に、「おいしい」とか「おいしくしてあげる」といった人間関係で笑いを取るバラエティがお手本になっていると持論。「テレビに出ている人間の責任がとても大きい」「もうそろそろ考えないといけない」と見解を述べた。これについてSNS上で「とても共感できる」と評価する声があがる一方、伊藤利尋アナウンサーの「イジって良い人と悪い人の見極めは先生には必要」という発言にはあきれる意見が続出。深澤氏も「先生がイジって良い人(生徒)はいませんよ、バラエティとは違う」と反論していた。先日もカジサックこと梶原雄太が、堀江貴文氏主催の運動会イベントで評論家・宇野常寛氏に「こいつら弱そう」「宇野さんは運動できないキャラ」などとイジった結果、宇野氏はイベントを退席。宇野氏はその後、Twitterを投稿。カジサックから形式的な謝罪はあったものの、「みんなが面白くなるためにした」と自己弁護を繰り返していたことを明かし、「芸人なら、バラエティならいじめが許されるなんて間違ってる」などと怒りのツイートを連発している。さらには、こうした彼の告発を、脳科学者・茂木健一郎氏がリツイートして「賛成」とつぶやくなど、波紋が広がっている。バラエティタレントたちの意識改革が求められている中、彼らは聞く耳を持つのだろうか……。

【感想】
    先ずは補足です。上記の脳科学者茂木健一郎氏のリツイートには、次のように綴られていたそうです。
「宇野常寛さんが怒ったのは当然で、宇野さんの感性は尊重されるべきだった。だって、それが多様性だから」(https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201902070000210.html

    さて、記事中には次のような記述があります。
「最初に真相究明にあたった県教育委員会は報告書で(教職員による生徒に対する)『イジメ』を『イジリ』と言い換えていた」
これは『イジメ』を『イジリ』と言い換えることで重大性を目立たなくするための“ごまかし”でした。県教育委員会が指すその“イジリ行為”とは、「教職員から全校生徒の前で名前を呼ばれて笑われたり、授業中にアダ名で呼ばれたりするなど」でした。当の担任も同じように“イジリ行為”と認識していたのでしょう。しかし、県いじめ調査検証委員会は、これらの行為を教職員による「いじめに類する行為」と認め報告書をまとめています。つまり、当時は、県教育委員会さえ“イジリ”の重大さに気付いていなかったのです。これは重症です。

    また、記事②では、評論家・宇野常寛氏が、あるタレントが「みんなが面白くなるためにした」と自己弁護する行為によって気分を害し途中退席した事例が紹介されています。この背景には、「イジられる側は、いじめと変わらないと思っていることがほとんど」と言う深澤氏の指摘が存在しています。あるタレントが「みんなが面白くなるためにした」と考えていたとしても、実際にそのイジリを受けた宇野氏はイベントを途中退席する程気分を害していたのです。私達は一刻も早くこの事に気がつく必要があります。

    また、記事中で紹介されている伊藤利尋アナウンサーの「イジって良い人と悪い人の見極めは先生には必要」という発言にはがっかりしました。この伊藤氏は、同局のアナウンサーの中でベテランの位置に存在する方です。私自身、災害報道などを通して良識あるアナウンサーだと思っていました。そのような人が「中にはイジっても良い人がいる」と認識していることについては驚きを隠せません。
    それはもしかしたら、体罰を当たり前のように経験してきた一世代前の人間が未だに根強く“体罰容認論”を持っているのと同じように、そのMCアナが、芸人をはじめとした多くのタレントと共演するバラエティ番組の中で当たり前のように行われているイジリを経験してきたために生まれた“感覚麻痺”によるものではないでしょうか?

    更に、記事②はこう綴られています。
「人間関係で笑いを取るバラエティが(教師達の)お手本になっている」
テレビに出ている人間の責任がとても大きい
このように、教育現場にいる教師でさえ、バラエティタレント達の影響を強く受けている中、それらの番組を見る家庭内の親や子ども達も影響を受けているであろうことは想像に難くありません。テレビタレントやお笑い芸人のように家族をイジっていることはないでしょうか。特に、“親によるイジリ行為”の子ども達への影響力は大きいと思います。イジられる子どもはその子の自己肯定感が下がり、親による家族へのイジリを見せられている子どもは自分も友だちなどに同じように接する“種”をまかれているのです。

    最後に、記事②は次のように結ばれています。
「バラエティタレント達の意識改革が求められている中、彼らは聞く耳を持つのだろうか…。」
最近では、NGTグループのアイドルについて「体を使って…」と発言した芸人が非難を浴びていました。
   どうかご自身の言動の影響力の大きさを自覚して、適切な情報伝達に努めていただきたいと切に願います。