【今回の記事】
【記事の概要】
机に座って問題を解かせるだけでは、子どもの学力は決して上がらない」と唱えるのは、世界の脳科学知見を著書『一流の頭脳』にまとめたアンダース・ハンセン氏。子どもの一生を左右するといっても過言ではない「学力向上」について、世界最新の知見をお届けします。   
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「体育の時間」と「国数英」の意外な関係
   スウェーデンのブンケフロという町に、研究のため、時間割に毎日体育の時間が組み込まれたある小学校のクラスがあります。このクラスと、通常どおり体育を週2回こなすクラス比較した結果、体育の授業回数以外の条件(居住区や授業内容など)は全く同じだったにもかかわらず、毎日体育をしたクラスのほうが算数・国語・英語において成績が明らかに優秀だったことがわかりました。さらにこの効果はその後何年も続くことが確認され、男女ともに3教科の成績が飛躍的に上がることが確認されたのです。
「最少4分で学習効率が上がる」という前代未聞の報告
   なぜ「体育の時間」が子どもの学力向上を強力に後押ししたのか――その理由は「海馬の成長」にあると考えられています。記憶”中枢として脳に鎮座する海馬は、運動によって刺激を受けると成長することが確認されていて、10歳児の脳をMRIでスキャンした結果、体力のある子どもは実際に海馬が大きいことが判明しました。さらに、身体を動かした直後、物事に集中”できる時間が長くなることも立証されており、記憶”力集中”力の向上、この2つの効果によってより多くの学習内容を脳に定着させられたのだと考えられています。
   では、集中力と記憶力が高い状態を維持するには、最低どれくらいの運動をすればいいのでしょうか?それを探る調査が数々行われていて、9歳児が20分運動すると、1回の活動で読解力が格段に上がる、というデータがあります。また別の実験では、10代の子どもたちが12分ジョギングしただけで、集中力が高い状態が1時間近く続き、読解力が向上しました。それだけではありません。たった4分の運動一度するだけでも集中力が改善され、10歳の子どもが気を散らすことなく物事に取り組めることも立証されたのです。

   PISA上位の常連として名をはせるフィンランドでは、「歩数」に関する調査が行われています。ある実験の結果、「毎日たくさん歩いた子ども」は、時間制限つきの計算をさせても、ストレスホルモンの濃度が「歩数が少ない子ども」に比べてずっと低かったことがわかりました。つまり、よく歩く子ほど勉強を苦にしない傾向にあり、親にとってうれしいことに、宿題をきちんと最後までやり通せる確率は高くなるのです。
「縄跳び」をすると「算数が得意な子」に育つ
   学力向上のカギは「心拍数増やすこと」にあると科学ではされています。どんな競技をするかは問いませんが、心拍数が増える有酸素運動(脂肪や糖質を酸素によってエネルギーに変えながら行う、規則的な繰り返しのある比較的軽い運動。ジョギング、ウォーキング、水泳、エアロビクスダンスなど)であることが望ましく、小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られるとも考えられています。
   アメリカの研究チームによる、肥満ぎみの小学生を集めて、放課後に縄跳びなどの運動をさせた実験があります。すると、特別な勉強はいっさいしていないにもかかわらず、みな一様に算数の試験の得点が上がったのです。たった20分でこのような結果があったわけですが、活動量が増えれば増えるほど、試験の得点も高くなっていましたランニングやボール遊びでも同様の結果が得られており、とりわけ試験の得点が大幅上がった子どもたち40分以上、心拍数が1分間で最大150回まで上がる「息が切れる運動」をしていたことがわかっています。
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   ではなぜ、縄跳びボール遊びをした子どもたちの「算数の能力」が飛躍的に向上したのでしょう?じつは運動をすると海馬だけでなく、脳の「白質」と呼ばれる部位の機能も強化されることがわかっています。「白質」はおもに情報伝達を担うケーブルの集合体で、脳の左側の白質が「数学的な能力」にかかわっていることが最近の研究で判明しました。白質の機能を高めるために、とりたてて激しい運動をする必要はありません。座ってばかりいないで、毎日をできるだけ活動的に過ごせば白質は強化されることがわかっており、子どもを外で遊ばせることが、めぐりめぐって机の上で行う勉強にも良い影響をもたらしてくれるということです。
ただし、「筋トレ」で学力は上がらない
   2010年までスウェーデンでは18歳の男子全員に軍の入隊検査として様々な体力テストと知力検査が行われました。26年以上にわたる調査の結果、体力テストで結果がよかった新兵は、そうでない新兵よりも知能指数が高くなっていました。ただし、データが示すところによると、知能指数の高さと関連性があったのは持久力のみで、筋力とは無関係。筋力テストの結果だけがよかった新兵は、知能検査ではよい結果が出ませんでした。   
   先のスウェーデンの調査によると、18歳のときに体力に恵まれていた若者は、その後何十年にもわたってその恩恵にあずかれることが判明しています。高い学歴を経て、40歳前後の時点で報酬に恵まれたよい仕事についている確率が明らかに高かったのです。
   子どもが毎日15分遊べば、大量の読書や勉強をしなくても読解力計算力が上がります。わが子の頭が良くなることと将来の安泰を願うのなら、タブレットやスマートフォンを置かせて、子どもたちの目を外の世界に向けさせるほうがいいのです。

【感想】
「机に座って問題を解かせるだけでは、子どもの学力は決して上がらない」という脳科学に基づくハンセン氏の画期的な主張。

   まず、記事の内容を整理してみます。
◯運動と学力との関係
運動は記憶集中数学的な能力を向上させる。
小学校に通う学童期に、息が切れる有酸素運動(スイミング等)をすると最も学力が向上する。
知能指数を高くするのは持久力のみで、筋力は関係ない

◯運動量と学力との関係
9歳児が20分運動すると、1回の活動で読解力が格段に上がる
10代の子どもたちが12分ジョギングしただけで、集中力が高い状態が1時間近く続き、読解力が向上した
たった4分の運動一度するだけでも集中力が改善され、10歳の子どもが気を散らすことなく物事に取り組める
たった20分の縄跳び運動ランニングやボール遊びでも可)算数の試験の得点が上がった(活動量が増えれば増えるほど、試験の得点も高くなっていく)。
とりわけ試験の得点が大幅上がった子どもたちは40分以上息が切れる運動をしていた。
・子どもが毎日15分遊べば、大量の読書や勉強をしなくても読解力計算力が上がる。

◯歩数とストレスとの関係
・「毎日たくさん歩いた子ども」は、時間制限つきの計算をさせても、ストレスホルモンの濃度が「歩数が少ない子ども」に比べてずっと低かった

運動と年齢との関係
・18歳のときに体力に恵まれていた若者は、その後何十年にもわたって学力が高いままでいられる(高校卒業までは運動部が有利)。

   以上をまとめると、次のようになるでしょうか?
・とりたてて激しい運動をする必要はなく、毎日最低15分以上、外で体を動かして遊ぶ(縄跳びや鬼ごっこ等の持久的な運動)ことが、勉強にも良い影響記憶力、集中力、読解力、数学的な能力)をもたらす。
・毎日たくさん歩くストレスが軽減される。

   私の子供の頃は広場で、鬼ごっこ、かくれんぼ、缶けり等を毎日のようにしていたものですが、今では、家の中でゲームばかりする子供や、学校への登校時にお家の人に車で送ってもらっている子供もいるようです。
   昔も今も変わらない運動といえば、記事でも取り上げられている“縄跳び”でしょうか?これなら、近くに公園や広場が無くても、家の敷地内でもできます。
   一番いいのは、学校の休み時間に広い校庭や体育館で、友達と楽しく鬼ごっこや氷鬼等をして走り回って遊ぶことでしょうね。