【今回の記事】

【記事の概要】
   発達障害の子育てママの座談会で、よく話題にのぼるものの一つに、無理解無協力があります。「無」とまではいかなくても、子どもの障害をなかなか認めようとしなかったり療育や児童精神科などに行くことに乗り気ではなかったり、というお父さんがどこにも一定数はいるようです。
   そこで、発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」代表理事の国沢真弓さんに、発達障害の子育てに協力的ではないお父さんや、育児に口出ししてくる祖父母への対策法をうかがいました。
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発達障害はグレー診断な子ほど夫の理解が得られにくい
「週末に家族の中だけで接していて、会話もほぼ成り立っている程度だと、たとえ外で問題行動があったとしてもお父さんにはなかなか分かりません。『これくらい、男の子だったら当たり前じゃん?』とか『俺も昔そうだったよ』『個性だよ』という一言で済まされたり、ひどい時には『お前は、なんでそんなに障害児にしたがるんだよ!』なんてお母さんが怒られてしまうこともあるそうです。
――では、知的に遅れがない発達障害のケースでは、ほとんどのお父さんは、わが子は問題ないと思っているのでしょうか?
「いえ。私は、お父さんも本当は薄々分かっていると思いますよ。『なんでこんなに育てにくいんだろう?』とか『なんでこんなに癇癪がひどいんだろう?』という違和感は持っていると思います」
――そうすると、わかっているのに認めたくないということ?
「お母さんはいろいろなところに相談して発散したり、専門家に助けを求めたりして、さまざまなことを学びます。しかし、お父さんは、お勤めの関係などで、子どもと一緒に過ごす時間が物理的にとれないケースが多いため、専門家やドクターと接する時間もなかなかとれないまま、子どもに障害があるということを認める機会逃してしまいがちなんです」
「さらに追い打ちをかけるように、一緒に過ごす時間が多い子どもも、お母さんと一緒に自分の障害についてどんどん学んでいくから、気がついたらお父さんだけがポツ~ン…って。でも、お父さんには、『お父さんにも教えて』と素直に言えないプライドがあるんですよね。」
――では、夫を積極的に育児に参加させるには、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?
「大事な局面には必ず連れて行って、夫を頼る姿勢をみせてみてはどうでしょうか?例えば、小児科や療育の面談など、ここぞ!という時は絶対に同席してもらうようにして、『あなたがいないとちょっと心細い』等と頼ることで、男の人のやる気を引き出したり」
――お母さんがお父さんのやる気をうまく引き出すということですね。
「大事な局面に夫婦2人で参加した方がいいのには、別の理由もあります。例えば、一人でドクターへ面談に行った場合、聞くこと、答えること、話を受け止めること、書き留めること、即座に判断すること、これ、全部お母さん一人がやらなければならなくなります。その点、2人いれば、お父さんが質問している間に大事なポイントを書き留めたり整理したりできるし、状況を2人で客観的に見ることもできます。もちろん、直接先生と会って話すことで当事者意識が育つので、お父さんのためにもなると思います。」

祖父母世代や学校には、「専門家の意見では…」で対応
――周囲には、義理両親(もしくは自分の両親)の子育てへの口出しに悩んでいるお母さんもいましたが?
「祖父母の方から『そんな子育てだから、子どもがワガママになるのよ』とか『もっと、こうしてみたら伸びるんじゃないの』とか、ひどい例では『うちの家系には、こんなことをする子はいない』といったことを言われてしまう事例も残念ながらあります。そんな時は、大変つらいと思いますが、すべてキッチリ理解してもらおうと思わず、上手に受け流して、別のところでストレス解消をしましょうね。自分たちより長く生きて、自分のスタイルを確立している人たちの認識を変えることはとても大変ですから。ただ、言われっぱなしも悔しいので『専門家に相談して進めていますので見守ってください』等と、自分たちも自己流ではなく、ちゃんと考えて子育てしている、ということはアピールしておくといいかもしれません。で、他のところで毒を吐く(笑)。同じ思いをしている仲間は、意外に沢山いますよ」
――ちょっと極端な話ですが、お姑さんのちょっとした子どもへの体罰に悩んでいるお母さんもいました。良くないことをすると、手をつねって教えるという。
「お嫁さんが『嫌だから止めてください』という言い方をすると角がたつから、専門家の名を借りてみてはいかがでしょう。たとえば、『専門家から、そういうことを続けるとほかの子に暴力をふるうようになるって聞いたんです』などと伝えてみるとか。もちろん、ただの『嘘』になってはいけないので、専門家にその件を相談し、それを『お墨付きのアドバイス』にする。専門家の意見と言えば説得力が増すので、さすがのお姑さんも自制するのではないでしょうか?『伝え方の工夫』、これは、発達障害児の子育てで、とても必要な力だと思います」
「私は、これを学校の先生対策にも利用していますよ。例えば、生徒を大きな声で叱る先生がいて、それが怖くて、指示されても全然動けなくなった子がいるとします。そんな時、『児童精神科の先生に相談してみたら、大きな声がすごく苦手みたいなので、席を後ろにしていただけませんか?もしくはイヤーマフをつけさせてもいいですか?このままだと学校に行けなくなって不登校になる可能性もあると言われたんです』というふうに。親が『大きな声で叱るのはやめてください』とだけ言うと、ただのクレームみたいに思われてしまうけど、専門家の指示であれば対応せざるを得ないでしょう。周囲を上手に説得したい時は、専門家の意見を上手に借りるのも一つの手だと思いますよ。

【感想】
   私は、今回の記事の要点は以下の3点だと解釈しました。
お父さんとの距離を遠ざけてしまう生活環境があること
夫との距離を縮める為には、“ヘルプ作戦”が有効であること
周囲を上手に説得したい時には専門家の意見を活用すること

   以下に、それぞれについて詳しく考えてみたいと思います。

お父さんとの距離を遠ざけてしまう生活環境があること
   記事では、次のように指摘しています。
「お父さんは、お勤めの関係などで、子どもと一緒に過ごす時間がとれないケースが多いため、専門家やドクターと接する時間もなかなかとれないまま、子どもに障害があるということを認める機会を逃してしまいがち」
「お母さんと一緒に過ごす時間が多い子どもも、お母さんと一緒にどんどん学んでいくから、気がついたらお父さんだけがポツ~ン…」
「『お父さんにも教えて』と素直に言えないプライドがある」

  つまり、仕事の為に自分だけ障害の理解から遅れてしまう環境の中に居るために、自尊感情が傷つき、非協力的になるというわけです。特に大人であり男でもある旦那さんにとっては、自身のプライドが邪魔をして、つい非協力的な態度をとってしまうのだと思います。その為に必要になるのが②の“ヘルプ作戦”だと思います。

夫との距離を縮める為には、“ヘルプ作戦”が有効であること
   記事では、「(小児科や療育の面談等の際に)あなたがいないとちょっと心細い』等と頼る」ということが提案されています。しかし、男性は必然性が感じられないと行動に移さない生き物なので、そこには、“頼る理由”が必要だと思います。その理由となるのが、「一人でドクターへ面談に行った場合、聞くこと、答えること、話を受け止めること、書き留めること、即座に判断すること、これ、全部お母さん一人がやらなければならなくなる」「2人いれば、お父さんが質問している間に大事なポイントを書き留めたり整理したりできるし、状況を客観的に(正確に)見ることもできる」という事だと思います。つまり、
お医者様の難しい話を聞くのは、自分一人では聞き逃したり質問し忘れたりしそうで不安なの。その点あなたについて来て貰えば心強いのよ
というふうに頼めば、旦那さんの腰も上がるのではないでしょうか?

周囲を上手に説得したい時には専門家の意見を活用すること
   今回の記事で私が最も注目したのはこの方法です。
   人生経験の長いおじいちゃんやおばあちゃんはもちろんですが、仮に旦那さんがお母さんと一緒に専門家の受診に行けない場合にも、小児科や療育の専門家の意見が専門家お墨付きの強力なアドバイスとなり得ると思います。別料金はかかりますが、“診断書”として、子供の発達障害名やその特徴を、更に、出来れば必要なサポート法等も活字にしてもらうことが出来れば、より説得力が増すと思います。
   更に国沢氏は、この方法は学校にも応用できると述べています。各学校で実施される特別支援教育についての研修会年1回程度しか計画されていないのが現実です。そんな学級担任の先生に対して、やはり“専門家お墨付きのアドバイス”を知ってもらう事は、ある意味、校内の特別支援担当者から受けるアドバイスよりも何倍も強力な説得力を持つことでしょう。そのアドバイスに基づいて正しいサポートをした時に子供の行動が改善されると、担任の指導意欲もアップします。