【今回の記事】

【記事の概要】
   子どもの読解力研究に携わる国立情報学研究所の新井紀子教授は、子どもたちが「生活の中で新たな語彙数字に触れる機会が少なくなっている」と警鐘を鳴らします。
ダサくて余計なものを排除した結果…
   ニュースは新聞ではなくネットニュース。書籍や雑誌は電子書籍で購入。カレンダーはおしゃれさを重視した文字が少ないもの。腕時計は使わずスマホ(あるいはApple Watch)、家にある時計は小さなデジタルのものだけ。こんな光景、もはや珍しくありませんよね?おしゃれな家庭ほど注意です!
親にできることは? 砂漠を脱するアドバイス
   新井教授は、子どもたち、そして幼稚園や小学校の教員と接してきた経験からこんなアドバイスを挙げます。
1.カレンダーは月日、曜日入りのものに
   カレンダーは数の並びを自然に理解するのに有効な手段。小1で「じゅういち」を「101」と書く子、相当います。
2.文字盤の時計を壁にかけよう
   デジタル時計ではなく、1から12までの数字が書かれたアナログ時計に。秒針や分針の動きを見て数字や時間の感覚を得られます。「6時まであと何分」を視覚的にわかるのは文字盤だからこそ、です。
3.トイレには日本地図や世界地図
   一人で狭い個室にこもるトイレは集中できる場所。「今日は何の日」が書いてある日めくりカレンダーや地図がおすすめです。新しい語彙や地名に習慣的に触れられますし、親子の共通の話題にもなりやすいです。
4.ICカードは便利だけど、硬貨やお札も使って!
   1円玉が5枚で5円、5円玉が2枚で10円、100円玉が10枚で1000円……。ICカードの登場で、昔は当たり前のように得ていた数字感覚がなかなか持ちにくくなっています。最近はお小遣いもICカードにチャージ制の家庭もあるとか。ピッ! で済むのは便利ではありますが、コインやお札に触れる機会も作って欲しいです。
5.朝ごはんのおともにラジオを
   ラジオは耳から入ってくる音声情報だけで想像しなくてはならないので、情報処理能力が鍛えられると思います。できればニュースが含まれるものがベター。生活の中で「聞いたことある」言葉がどれだけあるかで小学校に入ってからずいぶん違います。
6.できれば紙の新聞を購読してください
   難しければ、せめて紙の本を買ってください。自分が本を読まないのに、本を読む子に育てるのは難しいです。
7.スマホはお休みしてテレビを一緒に見よう
   教育テレビだけじゃなく、朝のニュースやテレビドラマなど幅広く。「こんな場所があるんだ」「こんな仕事があるんだ」……子どもたちはテレビに映るものから生活範囲の外のことを学んでいきます。「北海道は雪だね」「お正月だから初詣に行くんだね」など、テレビを見ながら話をするとさらによいと思います。
8.時代劇を見よう
「今私たちが生きている世界と地続きで、別の時代があったんだ」という想像力を持つことができます。江戸時代がどんな風だったのか、教科書の絵だけで具体的に思い描くのは大変です。語彙の獲得の意味でも歴史ものは重要。「印籠」「切腹」「身分」「武士」などの言葉は意識的に触れないと知り得ないですよね。
9.大人同士の会話を聞かせよう
   子どもに合わせたわかりやすい言葉ではなく、大人同士の会話を聞く時間が十分にあることも大切です。細かい意味はわからなくていいんです。相手によって声のトーンが変わること、敬語や丁寧な言葉遣いの存在などに自然に気づいていきます。夫婦の会話、保育園の先生との会話、ママ友との会話。「子どもはいいの」なんて言わず、側にいさせてあげてください。
10.エッチな小説を本棚の高いところに
(上記記事サイト参照)

◯「自然に身につくでしょ」は誤解です
「やかん」「急須」「つばめ」「内側」――新井教授が小中学校の現場を訪ねる中で、子供達から「知らない」「どんな意味かわからない」と言われた言葉たちです。「極端なケースに聞こえますが『単語の意味がわかっていない』ことすら見過ごされている子どもたちが、それなりの割合でいるのが現状です。語彙がないと、問題文を読解する前の段階、授業や教科書の内容を理解することがまずできません
   デジタル化ディスプレイ化が進んだ今、生活の中で新しい言葉に触れる環境は、大人が意識しないと作れないのです。

【感想】
   今回の記事の中では、日常的に子供の知識や知恵を育む数多くの工夫が提案されています。
   ここでは、それぞれの提案について私からの“補足”をお話ししたいと思います。

1.カレンダーは月日、曜日入りのものに
   私たちの生活は、日にちや曜日無しには成り立ちません。一段下がれば7日後になっているので、「来週の◯曜日まであと何日」という事が視覚的に分かる最高のスケジュール表です!

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   また、子供の生活目標が守れた時に丸をつけれる「がんばり表」としても活用できます。

2.文字盤の時計を壁にかけよう
   私の経験上、「◯時◯分」(時刻)は言えても、「◯時◯分まであと◯分」(時間)が言えない子供達が多くいます。これは文字盤で視覚的に見る事で、初めて理解できることです。また、その中では、「あと5分、10分、15分、20分、25分…」というふうに生活の中に度々登場する5跳び」の概念を獲得する事が出来ます。これはかけ算ではじめに登場する「5の段」の学習の基礎になるものです。
   更に、一周を「1」と考えると分数の概念を身に付けるうえでも役立ちます(10分は6分の1、15分は4分の1、20分は3分の1、30分は2分の1)。

3.トイレには日本地図や世界地図
   トイレは誰もが毎日必ず入る場所ここに情報も提供する資料を何も貼らないと言うのはもったいない話です。幼児期であれば生活の中に登場する様々な生き物や用具のイラストを貼ったり、1年生であれば「◯と◯で10(10の補数)」「◯+◯=13(繰り上がりのあるたし算)」の式、2年生であればかけ算九九の表などを貼れば、定着に大きく役立ちます。

4.ICカードは便利だけど、硬貨やお札も使って!
   十進法になっているお金は、生活の中で避けて通れない“十の補数(「あといくつで10」「いくつといくつで10」)”を考えるのに最適です。いくらデジタル化が進んでいると言っても、十進法が基本になっている実際の生活の中では、必要不可欠な知識です。

5.朝ごはんのおともにラジオを
   私はこれだけは賛成しません。家族テレビタイムは家族の「愛着(愛の絆)」を作るチャンスです。家族同士で会話をすること、目を合わせること、笑い合うこと等を大切にしてほしいと思います(「愛着7」参照)。

6.できれば紙の新聞を購読してください
   紙の新聞でなくても、子供が興味を持ちそうな(絵)本、図鑑などをリビングに置いておくと、子供の興味・関心を育む事に役立つでしょう。読書による読解力は生活(説明書やレシピを読む等)や学習(教科書の文章やテストの問題文を読む等)の基本中の基本です。また、図鑑による知識の習得は子供の興味・関心の世界を広げ、深めます。
7.スマホはお休みしてテレビを一緒に見よう
   テレビ番組の中には、子供の成長に役立つ良質で好奇心が湧く内容の番組も数多くあります。「この番組は為になるから家族みんなで一緒に見よう」、それだけでも、家族との繋がりを求めている子供にとっては魅力的なイベントになるでしょう。
8.時代劇を見よう
勧善懲悪(正しいものが勝つ)」を教えてくれる時代劇は、子供の道徳教育にも役立ちます。昔であれば「スポ根」のアニメも「努力は自分を裏切らない」事を教えてくれる貴重な道徳情報でした(始めは何の才能もなかった岡ひろみが自身の努力によってテニスの才能を開花させ、お蝶夫人と並ぶプレイヤーになるまでを描いた「エースをねらえ!」等は名作でした)。

9.大人同士の会話を聞かせよう
   最終的には大人の世界で生活しなければいけない子供たち。家計の話親の仕事の苦労話等を耳にする事は、大人になる為の心の準備に役立つはずです。