【今回の記事】

【記事の概要】
   大相撲の横綱・日馬富士(33)=伊勢ケ浜部屋=が、前頭8枚目・貴ノ岩(27)=貴乃花部屋=に暴行を加え、大けがをさせたことが14日分かった。10月25日夜に鳥取県内でビール瓶などで殴打したという。横綱審議委員会の北村正任委員長(76)は日本相撲協会に厳しい態度で接するよう求め、進退問題に発展する可能性も出てきた。

   鳥取巡業を翌日に控えた10月25日夜に“事件”は起こった。宴席には日馬富士貴ノ岩のほか白鵬鶴竜のモンゴル出身3横綱や鳥取城北高相撲部出身の関脇・照ノ富士日本人力士関係者10人前後が参加。1次会から酒が進み、2次会へ移ると雰囲気が一変した。
   貴ノ岩は日馬富士から「兄弟子に対するあいさつが足りない」等と注意されていた。その時、着物の帯に差していた貴ノ岩のスマートフォンが鳴った。(貴ノ岩が)操作しようとした瞬間に(日馬富士による)暴行が始まった。日馬富士がテーブルのビール瓶で、近くに座っていた貴ノ岩の頭部を殴打。「人が話をしている時に…」と激怒し、血を流して倒れた相手(貴ノ岩)にのし掛かるようにしながら、素手で殴打を繰り返した。カラオケのマイクや曲を入れる端末機、灰皿まで振り上げたという情報もある。
   同席者は「周りが気付かないほどの速さでゴーン!という大きな音が聞こえた。そのまま20~30発は手で殴っていた。貴ノ岩は両手で防ぎながら、殴られ続けていた」と証言。日馬富士の同部屋の後輩、照ノ富士も数発食らったという。荒れた日馬富士は止めに入った白鵬を突き飛ばし後輩横綱の鶴竜に「(モンゴルの先輩として)お前がしっかり指導しないからだ」とかみついた。宴は重苦しいムードで終わった。
(日馬富士の)酒癖の悪さ何年も前から指摘されていた感情の起伏が激しく、いったんキレると元に戻れない性格。ある40代の親方は「あの横綱は酔うと手が付けられなくなると聞いていた。でもまさかこんなことになるとは…」と驚いていた。
   貴ノ岩は「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」の診断を受けて初日から休場している。
   品格を問われる現役の横綱が、事実を伏せたまま初日から2日間、土俵に上がった。相撲人気に水を差した。

【感想】
先輩から説教されている時に、スマホを操作するとは何事だ!
それが日馬富士の怒りの一つ目の背景”だったようです。

   貴ノ岩からすれば、鳴ったスマホの音を止めようとして操作しただけかも知れませんが、日馬富士の中では「先輩の説教を無視した」という怒りのスイッチが入り、その後は止めに入ったあの大横綱白鵬をさえ突き飛ばして手がつけられなくなったのです。
   一見すると、暴力の裏には“後輩の先輩に対する失礼”という筋の通った理由がありそうに見えますが、例えば、別の人間が同じ状況に陥った時に、やはりビール瓶で相手の頭を叩き、何10発も平手打ちをするというような“暴力”を振るうかというと決してそんな事はないと思います。「先輩から説教されている時に、スマホを操作するとは何事だ!」と“言葉”で怒鳴りつける人も多くいるはずです。
   では、同じ状況で、“暴力”に出る人と“言葉”で注意する人との違いはなんでしょうか?そこに今回の事件の“二つ目の背景”が潜んでいます。
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この記事の中で私は、主に次のような事を述べています。
『マシュマロテスト』の著者、ウォルター・ミシェル博士は、欲望を理性的に我慢することができる人間は、ある2つの優れた資質を持っていると指摘している。それは、『ストレスの少なさ』と『自己肯定感の高さ』である。
「まず『ストレスの少なさ』について。乳幼児期に適切な愛着(愛の絆)」を形成した子供は、ストレスを感じた時にすぐに避難しストレスを解消できる「安全基地」を持っている。逆に愛着が未完成で「安全基地」を持たない子供は常にストレスに苛まれることになる。」
「次に『自己肯定感の高さ』について。「愛着」が形成されている子供は、何らかの探索活動(『初めてのものに触ってみる』『初めてのおもちゃで遊んでみる』等)を行うときに、「安全基地」としての養育者が側に居てくれるので、安心して探索活動を行うことができるし、仮に何らかの問題が発生してもすぐに養育者援助してくれる。このように、養育者が側に居てくれることで成功体験を重ねた子供は、『自分はできる』という自己肯定感を抱くことができると考える。」

   なお、上記の「マシュマロテスト」とは、保育園の550人以上の園児を対象に、ある実験室に1人ずつ呼び、子供たちの大好物であるマシュマロが置かれたテーブルの椅子に座らせて、大人が部屋から出て行って子供1人になってもマシュマロを食べるのを我慢することができるかどうかを調べたテストです。ミシェル博士は、その550人の園児たちについて10年ごとに追跡調査を行い、「対人関係」「自制心」「学校の成績」「健康面」「脳の働き」等について調べました。すると、マシュマロを食べずに我慢できた子供たちは我慢できなかった子供たちに比べて、先の調査項目について、青少年期成人期中年期のいずれもおいても良い結果が見られたそうです。まさに「三つ子の魂百まで」です。

   改めて乳幼児期における「愛着愛の絆)」の形成と、「安全基地」の存在の大切さ、そして愛着」が子供の一生に与える影響力の強さに驚かされます。
   しかし、これまでも何度も繰り返しお話ししてきましたが、愛着の形成は「愛着7」のような意図的な愛情行為によって、今からでもやり直しができます。精神科医の岡田氏が「『愛着』形成は1歳半まで」と指摘するのは、1歳半までの乳幼児期が一番「愛着」形成がスムーズに行われる時期であるということなのです。