ここでは、ヘネシー氏の文献(ヘネシー2004)を参考に、各発達段階の養育のポイントをおさらいしたいと思います。

{1D721229-1B5A-4083-AF27-D3213A638018}

○産後から二か月のポイント
   まず、産後から二か月の愛着形成のポイントです。新生児はお乳を飲む以外はほとんど寝ています。「寝る子は育つ」といいますが、睡眠は成長に欠かせません。でも空腹で目が覚めて泣いたら、必ず抱いて授乳しましょう。お母さんの心臓の音を聞かせるような抱き方で母乳をあげるのが理想的です。母乳を飲むとき、赤ちゃんはお母さんの乳首の根元を押すように飲みますが、これがお母さんに快感を与え、プロラクティンというお乳を作るホルモンを分泌させます。このホルモンは「子育てホルモン」ともいわれ、お母さんに「子どもが愛しい」という気持ちを持たせます。授乳は、お母さんだけに許される幸せな時間なのですね。しかし、授乳をしながらスマートフォン等を操作していては、この幸せな気持ちも半減してしまうでしょう。何よりも、新生児は寝ている間でも「ふっ」と笑うことがあります。これがお母さんの笑顔を引き出し、出産後に起こりやすいマタニティーブルー(うつ病)を予防するといわれています。スマートフォン等を見ていては、それも期待できません。
   また、授乳の際、赤ちゃんの目を見たり話しかけたりしましょう。赤ちゃんは、お母さんの顔がまだボーっとしか見えませんが、お母さんの表情を真似しようとします。お母さんが舌を突き出して見せると、一生懸命自分も舌を出そうとします。このような刺激で、赤ちゃんの視覚が育ち、お母さんの肌のにおい感触の質、おっぱいの味などを「快感」として楽しむことを覚えます。これが母子の愛着の絆を結ぶ基礎となります。
 
○二~六か月のポイント
   次に、二~六か月のポイントです。赤ちゃんは、二か月頃からがはっきり見え始め、母親の笑顔に自分でも笑顔で応えるようになります。この頃に、脳の中に、人の笑顔に敏感に反応する部分が育ち、共感能力の発達が始まります。四か月を過ぎると、赤ちゃんの方から母親の反応を引き出そうと、自分から笑いかけたり、「バブバブ」と話しかけたりします。これに母親が笑顔と赤ちゃん言葉で答えてあげると大喜びをします。この時期を「母と子のダンス」と呼び、お母さんと子どもとの対話を通して、親子の愛情関係を深めていく非常に大切な時です。実は、臨界期(1歳半までの時期)」の中でも特に六か月までが愛着の絆を結ぶために最も大切な時期なのです。特にこの時期は、赤ちゃんとできるだけ関わり合いを持つように心がけましょう。

○六~八か月のポイント
   次に六~八か月頃のポイントです。この頃になると、赤ちゃんは、人間のどの言語でも学べます。まず、聞き分ける脳の場所に回路が発達するので、本を読んだりたくさん話しかけてあげたりして母国語の回路を発達させましょう。また音楽を聞かせるのも脳神経の回路の発達を助けます。(中略)
 
○八~十か月のポイント
   次に八~十か月頃のポイントです。この頃には赤ちゃんは「人見知り」を始めます。これは、母親と愛着の絆が結ばれたために、自分を守り育ててくれる人と見慣れない人との区別がついてきた証拠です。また、「人見知り」は、「まだ信頼できない人には近づかないほうが安全だ」という子どもの自己防衛能力の現れでもあります。
 
○十か月~一歳のポイント
   次に、十か月~一歳頃のポイントです。「はいはい」は脳の成長に欠かせない運動であって、この時期を抜いて育った子どもには、後に学習障害が現れる危険性が指摘されています。今は、小児科医も「歩行器はほどほどにして、『はいはい』させるように」と指導するということです。

○一~一歳半のポイント
   最後に一~一歳半の頃のポイントです。「はいはい」の状態から、立ち上がって歩くということができると、赤ちゃんにとっては世界が違って見えてきます。愛着関係が安定している赤ちゃんは、環境に興味を示し、探求しようとします。怖くなると「安全基地」である母親のところへ帰ってきて安心をもらい、また探求しようとします。これが学習の第一歩です。「危ないからダメ」と引き戻したりせず「見ててあげるから大丈夫よ。安心していってらっしゃい。」と探求心を励ましてあげてください。アメリカではこの頃から「泣いてもママはあなたではないから分からない。ちゃんと話してごらんなさい」と言葉で要求を伝えることを強調します。そうすると子どもは、「お母さんは自分の延長ではないのだと気づき、「自己の分離ができるようになります。いつまでも子どもの欲求を先取りしてあげていると、「母は自分の一部である」と思い込んで、自分の気持ちが伝わらないと“かんしゃく”を起こすようになります。