【今回の記事】
【記事の概要】
福井県池田町教委は15日、町立池田中学校で2年の男子生徒(当時14)が今年3月に自殺したと発表した。担任と副担任から厳しい指導や叱責(しっせき)を繰り返され、精神的なストレスが高まったことが大きな要因だと結論づけた。内藤徳博教育長は「大変深く反省している。学校の対応に問題があった」と謝罪した。
   町教委によると、生徒は3月14日午前8時ごろに登校後、姿が見えなくなった。校舎脇に倒れているのが見つかり、病院で死亡が確認された。遺書とみられるノートがあったという。生徒は校舎3階の窓から転落したとみられ、町教委は4月、有識者らによる調査委員会を設置。
   調査委員会の報告書によると、生徒は昨年10月以降、宿題提出の遅れ生徒会活動の準備の遅れなどを理由に、担任や副担任から繰り返し叱責を受けた。今年に入っても、役員を務めていた生徒会を辞めるよう担任から叱責され、副担任の執拗(しつよう)な指導も続いた。
 報告書は「大きな精神的負担となるものであった」と指摘。指導に対し、生徒が土下座しようとしたり過呼吸を訴えたりしたことが「追い詰められた気持ちを示すものだ」とした。いじめが疑われる点もあったが、いじめによる自殺ではないと判断したという。
   生徒はこうした指導などについての不満を家族に相談家族から事情を訴えられた担任は、対応を約束したが、適切な対応を取らず、副担任と叱責を繰り返したという。
 記者会見した調査委員会の松木健一・福井大大学院教授は「叱責を繰り返したことは指導の範囲を超えていた」と述べた。
②2017年3月、福井・池田町の中学校で2年生の男子生徒が転落死した問題で、町の調査委員会は15日夜、「担任、副担任の厳しい指導・叱責(しっせき)が原因による自殺だった」とする報告書を公表した。
   報告書によると、男子生徒は、宿題の提出が遅れたことなどを理由に、担任や副担任から厳しい指導・叱責を受けるようになり、精神的に追い詰められ、自殺に至ったと結論付けた。
また、男子生徒に発達障害の疑いがあったものの、学校側が対応を変えなかったと指摘している。

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【感想】
   私は、今回の事例には幾つかの問題点があると思います。
   まずは、「男子生徒に発達障害の疑いがあったものの、学校側が対応を変えなかった」事です。おそらく校内の特別支援委員会等で、その生徒に発達障害の疑いがある事が、特別支援コーディネーター等から提案がされていたのではないかと思います。この生徒の担任や副担任である二人は、当然その事は周知していたはずです。自殺した生徒には、“宿題提出の遅れ”や“生徒会活動の準備の遅れ”等の症状があったということですが、発達障害の子どもは、物事を計画的に進める事が苦手です。仮に、それらの症状が発達障害の特性によるものだったとすれば、それは障害者に対する虐待行為です。
   また、この生徒は、「自ら土下座しようとしたり過呼吸を訴えたりしたことがあった」とのことです。これらのことから、生徒がかなり精神的に追い詰められていたことが明白に分かります。教師が、子供の障害特性を無視した指導をすると、発達障害の子供はパニックを起こすことが多々ありますが、この土下座や過呼吸はまさにその症状の表れだったのではないでしょうか。

   これらのように、発達障害の疑いが指摘され、かつ土下座や過呼吸などのようなパニック症状が見られたにもかかわらず、なぜこの担任と副担任は対応を変えなかったのでしょうか?
   まず第一に考えられるのは、「特別支援教育」が軽視されている事です。前回もお話ししましたが、学校現場は以前は、「特殊教育(「障害者は特殊学級にしか居ない」と考える教育)」の時代でしたが、平成19年度からは「特別支援教育(「障害者は通常学級にも居る」と考える教育)」に移行しています。しかし、残念ながら、「障害者は特殊学級にしか居ない(=通常学級には居ない)」と考えていた「特殊教育」の時の指導の癖が抜けない教師が少なくなく居ます。つまり、特殊学級に居る障害児童には特別に配慮をした指導をしても、通常学級に居る健常児童には特別な配慮はせず、昔からの厳しい指導がなされていた「特殊教育」の頃の癖です。
   もちろん、学校現場に新しく導入された“発達障害”と言う考え方を理解しようと努力をする熱心な教師も居るのですが、中にはその努力ができない(自分の行動をコントロール出来ない自制心の低い)教師もいます。これはひとえに、教師としての“資質”、ひいては“人間性”そのものに関わる問題です。今回自殺をした男子生徒にとっては、この後者のタイプの教師達に担任を持たれた事が最大の不幸でした。
   しかし子供や保護者には、担任を選ぶ権利はありません。時には、今回のように、あまり信頼のできない教師に担任される時もあります。その時にその担任との関わり方を誤ると、最悪の場合、今回のように命が失われる痛ましい事件が起きることにもなります。私はその点にこそ、今回の担任と副担任が、家族から相談を持ちかけられた後でさえも指導の仕方を変えなかったことの原因の二つめがあったのではないかと考えています。(長くなってしまったので、そのことについては次回にお話ししたいと思います。)