【今回の記事】

【記事の概要】

①埼玉県所沢市の小学校で、男性教師が4年生の男子児童に「窓から飛び降りなさい」などと迫り、過去には体罰を加えたこともあったという問題。教師側に責があると報じられているが、同じクラスの児童の保護者は、一方的な報道内容に疑問を抱き、教師の発言詳細と前後関係をSNSに投稿した。

   報道によると、教師は児童同士のトラブルで「窓から飛び降りろ」「明日から学校に来るな」などと指導し、下校時には「このクラスは34人だったが明日からは33人でやっていこう」と発言。過去にはこの男子児童の背中を蹴るなどの暴行をしていたという。学校側は、発言体罰を認めて保護者に謝罪した。

   この報道に同じクラスの女子児童の保護者は、不安を煽るような内容に憤りを感じたとして、女子児童から聞いた話をFacebookに投稿。女子児童によるとこの男子児童は頻繁に友達に嫌がらせをしていたという。「飛び降りろ」発言は、(女子の着替え部屋の窓をふさいでいた)新聞を破った男子児童が「他の児童に命令された」と話したことからの指導で、教師は「『やれ』と言われたら何でもやるのか?『飛び降りろ』と言われたらやるのか?やらないだろ、やったらいけない事をやれと言われてもやらないんだよ」と注意した。

   また、「34人だけど、33人でやっていこう」という発言については、男子児童が後ろの席の児童の鉛筆削りをとったことへの指導の一部を切り取ったもの。教師は、「お友達の物を取らない、それをやめないとクラスの一員になれません。直るまで33人でやっていきます。きちんと直してから、戻ってきてください」と話したという。また、この女子児童教師について、「言葉で怒る、暴力はやった事がない」と話しているという。保護者は、「教師の話に納得できる部分もあり、不安を煽るような報道に憤りを感じている」と綴っている。

所沢市立山口小学校橋本徳邦校長)で40代の男性教諭が担任する4年生の男子児童に「窓から飛び降りなさい」と発言した問題で、男性教諭を処分しないよう求める署名活動が行われていたことが21日、関係者への取材で分かった。

 産経新聞が入手した署名簿には「担任教諭が退職に追い込まれることがあってはならないと思います」と記載。一部報道が「誇張されている」などと主張している。
埼玉県所沢市の小学校で、男性教諭が小学4年の男子児童に「窓から飛び降りろ」などと発言した問題で、県の教育委員会は男性教諭を減給1か月の懲戒処分にしました。
   県の教育委員会は、男性教諭(44)の発言は不適切な指導であるとしたうえで、今年4月、男性教諭が掃除をする時間に遊んでいたこの男子児童の髪をつかみ立たせるなどの体罰も加えていたとして、減給1か月の懲戒処分にしました。
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【感想】
   保護者は「報道は誇張されている」「問題を起こしていた児童が悪い」「男性教諭を処分しないでと当該児童を問題視すると同時に、担任を擁護していましたが、結果的に担任は“減給”の懲戒処分を受けました。果たして本当の問題の所在は、担任と児童のどちらにあるのでしょうか?

報道によると、この男子児童は、
頻繁に友達に嫌がらせをする
女子の着替え部屋の窓をふさいでいた新聞を破る
友達の所有物を無断で取る
等、普段は体罰などしない担任からさえ体罰を受けるようなかなりの問題行動を起こしていたようです。これらの事実が「問題を起こしていた児童が悪い」と認識する児童や保護者が生まれる要因となっていたと思われます。

   さて、文科省では、「6.5%」の出現率で通常学級の中にも発達障害の子供がいると発表しています。これは、30人学級でも約2人いる計算になり、この児童の問題行動の深刻さから考えると、かなりの確率で発達障害児童と推測されます。以前は特殊教育(「障害者は特殊学級にしか居ない」と考える教育)」でしたが、平成19年度からは「特別支援教育(「障害者は通常学級にも居る」と考える教育)」に移行しています。となれば、問題の顕著な児童に関しては発達障害を疑う必要があるのです。しかし、報道における当該児童に対する担任の言動を見る限り、今回の事例の場合、学校側がそのプロセスを怠ったような印象を受けます。
   学校側がその児童に対する捉え方を誤れば、教師は他の児童の前で、その問題児童を責める言動をとりますから、保護者や児童は当然先生も怒っているから◯◯君は悪い子」という見方をします。反対に、教師が「あなたは◯◯が嫌だったんだね」等とその児童に共感する言動をとれば、他の児童は「◯◯君には訳があったんだ」と捉え、自らも「◯◯君、がんばれ!」と応援するようになります(私はこれまで、そういう状況を何度も目にしてきました。本当に子供は純粋で、教師の言動に敏感に反応を示します。)。それだけ子供にとって教師の影響とは大きく、場合によっては、発達障害の子どもは周囲から誤解を受けたまま学校を卒業し、社会の中でも同様の目で見られることさえあるのです。

   もともと発達障害の子どもは、「どうせ自分なんか!」「自分なんか地獄に落ちればいい」という自己否定感が強いです。
それに対して
あなたはクラスの一員ではない
1年生からやり直してきなさい
教室から出て行きなさい
これらの言葉は、所属・愛情の欲求」を侵害する言葉であり、発達障害の子どもにとっては刺激が強すぎるものです。残念ながら、結果としては「火に油を注ぐ」指導になってしまったと思われます。

   また、担任は友達の鉛筆削りを取ったこの児童に対してお友達の物を取らない、それをやめないとクラスの一員になれません。直るまで33人でやっていきます。きちんと直してから、戻ってきてください」と指示しています。一見すると筋が通っているように聞こえますし、往往にして教師が大義名分としてよく言いがちなセリフでもあります。しかし、厳密に捉えれば「脅し」と解釈される言葉です。仮に「脅し」ではなく、本気で発した言葉であったとしても、担任には「出席停止他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられた制度」を直接子供に命じる権利はありません。校長の意見を尊重したうえで教育委員会によって決定されるものです。

   以上のように考えると、今回の担任が、たとえ“体罰”をしていなくとも、“暴言”として、「不適切な行為」と捉えられても仕方がない事例だと考えられます。

   子供は誰もが先生に好かれたいと思っていますしかし発達障害の子どもは、その障害特性の為に、いけない事と分かっていても言動に現れてしまい、先生からさえも嫌われがちになる“損な子ども”なのです。

   職場には、特別支援教育コーディネーターや特別支援学級担任の先生もいらっしゃいます。もしも問題が顕著な子どもがいれば発達障害を疑い、障害者サポートに必要な専門的な知識や特別な支援のあり方について助言を求め、発達障害の子どもでも幸せな学校生活が送れるようにする為に、適切な対応をとって頂ければと思います。