これは、私が六年生を担任していた時の失敗談ですが、二時間目と三時間目の間の休み時間が終わり、三時間目の始まりの時間になっても、数人の女子が戻ってきません。五分近く待っていると、ようやくその子たちが戻ってきました。すぐに私は、「いつまで遊んでるんだ!」と叱りました。すると、その子たちはムスッとした態度で「すみませんでした」とだけ言い、自分の席に着きました。その後、その子どもたちの私への態度がどこか冷たくなりました。その後、別の女の子が教えてくれたのですが、実は、あの時遅れてきたのは、休み時間の終わりに児童玄関に泥が散乱していて汚かったので、きれいにしていたためだったのです。大失敗です。その後、その子どもたちには何度も頭を下げて謝り ました。あの時私が発すべき言葉は、「いつまで遊んでるんだ!」ではなく、「どうしておくれたの?」だったのです。そうすれば、子どもたちは自分たちが児童玄関をきれいにしてきたことをためらわずに話してくれていたでしょう。そして、その後に、「それはご苦労様でしたね。でもね、これからは、みんなが心配するから遅れることを断ってからしようね。」と言えばよかったのです。

 また、これは成功事例ですが、ある日朝自習の時間に私が廊下を歩いていたら、数人の女の子が慌てた様子で「先生、A君がけんかしています。」と私のところに駆け寄ってきました。その教室に行ってみると、確かにA君が後ろの席の友達と激しく口喧嘩をしていました。私は、「何があったの?先生にお話ししてごらん。」と言ってAくんから先に話をさせました。A君は、「B君がおれの鉛筆をとった!」というので、私は「そうか、A君はB君から鉛筆をとられたと思って怒っていたんだね。」と彼の言い分を復唱しました。すると、その後A君はクルッと自分の机に向き直り、何事もなかったかのように朝自習の課題に取り組み始めたのです。単なる「復唱」でしたが、A君にとっては「先生は僕の気持ちを分かってくれた」というメッセージとして伝わり、彼のストレスを解消したのでした。

   始めに「どうしたの?」と聞くか聞かないかで、大人に対するその後の子供の気持ちは、全く正反対のものになるのですね。

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