この「愛着の話」の目次と順序が異なりますが、諸事情から、先にこの「『愛着不全』にしない叱り方」について取り上げたいと思います。ご了承ください。
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   このようにしてみてくると、親の気分によって子どもに対する叱り方が変わることは、子どもにとっては見通しが全く立たず非常に不安です。さらに、その叱り方が、「怒って押さえつけよう」「大人の怖さで子ども抑え込もう。」というようなによる叱り方だと、親は「安全基地」から「危険基地」へと変わり、結果的に「不安型」や「混乱型」の愛着不全の子どもになってしまう危険性があります。
  “怒る”ことと“叱る”こととは違います。“怒る”ということは感情的になって行われるものですが、“叱る”ということは理性のもとに意図的、計画的に行われるものです。感情的になった親の言動はランダムで子どもにとっては予想がつきにくく不安です。また、子どもが理解できない理由で、または、まだ理解できていない説明不足の段階で叱られると、子どもは、自分がなぜ叱られているか分からないため、子どもの中に親に対する不満が生まれます。この場合も、その親を「安全基地」として認識することは難しいです。さらに、子どもは大人と比べて未完成な生き物であり、失敗をするのがふつうです。親がいつも感情的になって怒っていると、子供は怒られないようにするために、をついたり、嘘を隠したりするようになります。ですから、ある程度、子供の失敗を受け止めてやることが必要です。そのためには、なぜその行動したのか子供の気持ちを聞いてあげましょう
   これらのことから、私は、子どもを「愛着不全にしない叱り方として必要なことは、次の五つだと考えています。
○子どもに予め、親がどんな時に叱るか、という“叱る基準”を予告しておくこと。(ただし、その子の命に関わるような事態が起きた時は、どんな失敗でも叱らず、子どもの味方になるということも伝えておく)
○その基準は子どもが取り組み可能なものであること
○子どもが基準を破ったら、親の気分次第で注意をしたりしなかったりする事がないように必ず約束通りに叱ること
○感情的にならず、理性的に叱ること
○子どもの失敗の理由を聞く

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   まず、「自分がこういうことをしたら親から叱られる」と想定できていれば、子どもにとって予想可能”な注意となります。心の準備ができていれば、叱られてもそれほどびっくりしません
   ただし、子供の命に関わるような事態が起きた時はどんな失敗でも叱らない子どもの味方になるということも“予告”しておく必要があります。なぜならば、そのような大きな事態に陥ってしまった時ほど子どもはそのことを親に隠したり我慢したりしてしまうからです。自殺する子どもたちは、そのほとんどが、自分が抱えた問題を親に相談することなく命を絶ちます。しかし、上記の事を予告しておけば、子どもが自殺を考えたときに、「そんな時は何があっても叱らない、あなたの味方になる」という親の言葉が頭をよぎり親を頼ってくれるに違いありません。そのような時は、叱ることよりも子どもの命を守ることに全力を尽くさなければならないのです。