【今回の記事】

【記事の概要】
   幼稚園・保育園・小学校などで子どもがお友達と遊ぶようになると、子ども間の“イザコザ”はつきものです。嫌なことをされたり、 嫌なことをしてしまったり、そうして悲しかったり、切なかったりといった体験は、子どもが他者との関係を学ぶための大切な成長過程。
   とはいえ、嫌な言葉を言われ落ち込んでいる子を前に、親として何ができるでしょうか?この記事では、米国で17年間教育に携わる筆者が、ある米国の公立小学校の先生に教えられた対応を紹介します!

「バ~カ」といわれた娘さんに米国小学校の先生がかけた言葉
   小学校の先生の娘さんが、ある日泣きながら家に帰ってきたといいます。
娘:「○○君がね、私のこと「バ~カ」って言ったの……。」
先生:「あなたはそれが嫌だったのね止めて欲しいと伝えた?
娘:「うん。何度か。」
先生:「じゃあ、あなたはあなたのことバカだと思う?
娘:「……、思わない。」
先生:「そう、だったらそれはもうあなたの問題じゃなくて、○○君の問題よ。あなたが傷つく理由は何もないのよ。○○君、何か嫌なことがあったり、疲れていたのかもしれないし、あなたのことが大好きだけどうまく表せないということもあるのかもしれないね。」
   娘さんは、こくりと頷いて、涙をぬぐっていたそうです。
   では、この“先生の対応”を元に、親ができることを考えてみましょう。

「止めて!」と自分の気持ちを相手に伝えることを教える
   まずは、はっきりと自分の気持ちを相手に伝え、“自分で自分を守る姿勢”を培ってあげましょう
   自分の気持ちをなかなかお友達に対して口に出せない子は、人形などを用いたごっこ遊びで“練習”をして慣れていくのも方法です。また普段から、「あなたはどうしたいの?」「あなたはどう思う?」と聞き、その子自身の「したいこと・したくないこと」を、尊重してあげるのも大切です。例えば、玩具の取り合いなどでも、すぐに「貸してあげなさい」と我慢させたり、相手の子の意向ばかりに沿うよりも、「あなたはどうしたいの?」と聞き、「あと3回使い終わるまで待つ」というように“相手の子と交渉させる”のもいいのではないでしょうか。

「あなたが納得しないなら受け取る必要はない」と伝える
投げかけられる言葉を全て受け入れる必要はないのよ、あなたには選択する力がある」と教えていってあげたいですね。そして、「受け入れない」と自分が決めたのならば、あとはもう、相手の問題。自分がその言葉によって傷つく必要はないのだと伝えます。多様な文化や価値観の入り交ざる米国では、日常生活が全く異なる意見や考え方と隣り合わせにあります。そうした中、周りの言葉にいちいち振り回されていては、日々の暮らしさえままならなくなってしまいます。周りの意見に惑わされず、自分で考え方を選択し、“自分軸”を築いていくこと。
   世界中が瞬時に繋がるインターネットが日常生活へと行き渡り、日本もこれからますます多様な価値観と隣り合わせに暮らすことになるだろう中、こうした米国で培われた姿勢を日本でも子ども時代から身につけていくことは、今後大いに役に立つのではないでしょうか。
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【感想】
「『止めて!』と自分の気持ちを相手に伝えることを教える」について
   記事中で筆者は、「普段から、『あなたはどうしたいの?』『あなたはどう思う?』と聞き、その子自身の『したいこと・したくないこと』を、尊重してあげる」事が大切であると指摘しています。つまり、相手に「止めて!」と言う以前に、根本的に自分の気持ち相手に伝える経験が不足しているのです。止めて!」と言う力は、その延長線上にあるのです。
   また、自分の気持ちを意思表示する力を身につけさせるならば、「止めて欲しいと伝えた?」と親が聞いた時に、子供が「うん」と答えたら、「えらい」と一言褒めてあげたいものです。

「『あなたが納得しないなら受け取る必要はない』と伝える」について
   記事中で筆者は、周りの意見に惑わされず、自分で考え方を選択し、「自分軸」を築いていく事、つまり、相手の言っている事は正しい事なのか?正しくなければ、受け止める必要はない事を指摘しています。
   記事中にあるように、私たちは今インターネットと切っても切れない世界に生活しています。ネットの中には自分に対する根拠のない侮辱や誹謗中傷の言葉が寄せられることがあります。「あなたはきもい」と言われた時に、「自分はそんな事はない」と思うのであれば、それを真剣に受け止めない強い「自分軸」を築いていく必要があると言うことなのでしょう。しかし、この自分軸」を持つためには、子供に自分に対する自信、つまりは、“自己肯定感”を育ててやる事が必要だと思います。自分に自信がない子供が、他人からの中傷言葉に心をかき乱されるのです。そのために大切になるのが子供を沢山褒める事でしょう。特に、子供の自信につながる「横断的評価」による褒め方が大切です。

その他について
   子供に問題が発生した時に、私が大切にしている指導の流れは順に従って以下の3つです。
子供の話をうなずきながら聞く
子供の話に共感する(記事中の「あなたはそれが嫌だったのね」がこれに当たる)
正しいソーシャルスキルを教える(“これからはどうすればいいか”という事を教える。記事中の止めて欲しいと伝えた?」やだったらそれはもうあなたの問題じゃなくて、○○君の問題よ。あなたが傷つく理由は何もないのよ」もこれに当たる)

   ①と②を最初に行う事で、子供は「お母さん先生は私の気持ちを分かろうとしてくれている」と、大人に対して心を開きます。そのため、その後のソーシャルスキルの指導が子供に受け入れられるのです。始めに注意から入ってしまうと、その後に「で、何が嫌だったの?」と気持ちを聞いても、口を貝のように閉ざしてしまい、何も話してくれなくなる事が多いです。この順序には要注意です。