このことの大切さについて、平山氏は「褒める」、ヘネシーは「良いことをしたときに褒める」、八尾氏は「子どもが良いことをしたら、その行動を描写してほめる」、菅原氏は「肯定的な言葉がけ」と述べています。
   さて、お父さん、お母さん方は、毎日の生活の中で子どもを褒めるほうが多いでしょうか。それとも叱るほうが多いでしょうか。普通「褒める」というと、「褒めるに値することは褒める褒めるに値しないことは褒めない。」という考え方が一般的なのかもしれません。しかし、ここで大切なことは、「小さなことから褒める」ということです。特に、まだ子どもさんが小さい場合にはこの考え方が大切です。私はこれまで約三十年間の教師生活を送ってきましたが「子どもは褒めて伸ばす」、これこそが教育の原点であると感じています。注意されて自分を高めることもできる子どもがいるかもしれませんが、それは、心の中によほどきちんとした「安全基地」を持っている子どもだけでしょう。しかし、そういう子どもでも注意されているときは緊張感や恐怖感と戦っているのです。
   さて、「人を褒める」ということは言葉を変えれば「個人を評価する」ことですが、実はこの「個人を評価する」、いわゆる「個人内評価」には二種類あります。一つは、横断的評価。もう一つは縦断的評価です。
   一つ目の「横断的評価」は、その人のいろいろな側面、例えば、性格、趣味、学習成果、ひとつの活動に対して取り組む姿勢等々を見渡したうえで、それらの中で特に優れている点を評価することです。簡単に言えば「その人の特徴的な良さを褒めること」と言えるかもしれません。私でしたら、「さすがは○○さん、やさしいね。」「さすがは○○君、生き物に詳しいね。」と、その子どもの様々な側面の中から特に優れている点を見つけて「さすが」と褒めます。子どものよさはそれぞれ違いますから、これは、その子の親御さんにしかできないことです。例えば、親御さんが「うちの子は普段はうるさいけど、お手伝いはしてくれる」といった場合の後段の部分「お手伝いしてくれる」がそれにあたると思います。
   二つ目の「縦断的評価」は、その人のいろいろな側面について時間の経過で評価することです。簡単に言えば、「その子どもの以前と比べてよくなった点を評価すること」と言えるかもしれません。前よりも○点よくなったね。」「先週よりも忘れ物が○回減ったね。」と褒めます。「あいかわらず、無くならないわね」は禁句です。完全には無くならなくても、問題行動の回数が減ることに成長を見出すのです。もしも数値化できれば、ほんの少しの進歩でも褒めることができます。もちろん、親御さんの主観による評価でも構いません。褒めるときの観点として参考にしてみてください。いつもは親がいくら教えても注意しても全然できなかった子どもが少しだけできるようになったことを褒めるいつもはやるべき課題を全く自分からやらなかった子どもが初めて自分から取り組んだことを褒める。いずれも以前のそのこと今のその子を比べて考えているからできる評価です。「珍しいこともあるもんだな」は禁句です。

横断的評価」は子どもに自信をつけます。
縦断的評価」は子どもにやる気を高めます。

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