【今回の記事】

【記事の概要】
4人の子供達を東大に合格させた佐藤ママ談夏休みの宿題は3日間で終わらせていました。(中略)とにかく「前倒しで」「まとめて」やるのがポイントです。夏休みって色々予定が立つものですよね? プールに花火に帰省に…。その時に頭の中に「宿題をしなきゃ…」というのが残っているとうっとうしいもの。とにかく締め切りが「迫ってくる」のは楽しくない。だから3日で終わらせてしまうんです。先生方は「宿題は毎日少しずつやりましょう」と言いますがそれは理想なんです。たとえば1日体調が悪くなってしまったら、次の日は2日分やらなくてはいけない。とても現実的ではありません。
   宿題をやる順番は計算ドリルなど、とりかかりやすいものから手をつけます。逆に漢字の課題なんかは意外とつまずきやすい。最初にやってはいけません。四字熟語を考える問題等、時間をとられるものがあるので注意が必要です。この順番は私が決めていました。7月20日、終業式から帰ってきたら子ども4人を集めて宿題を全部出させるんです。そして「最初はコレをやって、次はコレ、その次は…」と順番をノートに書いていました
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宿題の中で、日記だけは残しておきましたね。ただ、これも10日分書くとすれば4回分はお母さんの方からネタを先に出して当たりをつけておく。「プールと花火と田舎の話とスイカ割り…4つはこれでいいんじゃない?あとの6回分は自分で考えてね」といった風に。あらかじめテーマが決まっていれば、後で思い出しながらでも無理なく書ける。
   そうやって終わった宿題はどんどん紙袋に放り込んでおきます。外側にはそれぞれの子どもたちの名前を書いて。通知表も判子をバババッと4人分押して入れておく。あとは9月1日に紙袋をそのまま持っていくだけでした。こうやって早めに宿題を済ませておくので、休み明けは楽しく学校に向かうことができます。

【感想】
「宿題は終業式から3日で終わらせる」それが、子供達の発案であるなら何も問題ありません。しかし、それを親の方から一方的に提案するというのは、子供の教育上好ましい事ではないような気がします。
夏休みギリギリになって慌てないようにするにはどうすればいいかな?」と親が子供に投げかけ、子供に考えさせる事、自己決定させる事が大切だと思います。その結果子供が「毎日少しずつやる」と答え、佐藤ママの言うように「体調を崩したり都合が変わったりすると危険」と親が考えれば、その危険性を教えてやればいいのです。そうすれば、子供なりに少し余裕を持った計画を考え直すでしょう。
   取り組み方法が決まれば後は、子供に任せ、取り組みを見守るのが親の役目だと思います。「見守る」という事は「声をかけない」という事とは違うので、もしも子供が考えた通りの取り組みができていないときは、親が一言助言をし、子供が修正できるようにしてやれるのです。

   また、佐藤ママは、最初はコレをやって、次はコレ、その次は…」と取り組む順番をノートに書いて子供達に指示していたようですが、様々な課題をどんな順番ですれば取り組み易いかを子供が自分で考えるのも、子供にとっては“自己決定”の大切な学習場面です。

   更に、日記の課題の「プールと花火と田舎の話とスイカ割り…4つはこれでいいんじゃない?」と親から教えるのは、さすがにやりすぎのような気がします。これも、「10回分書くことになっているけど、今回の夏休みではどんな事を書く?」と子供に投げかけて考えさせるのが良いと思います。

   佐藤ママの“ゴール”は、あくまで親の手によって無駄を省いて効率よく子供達を東大に合格させる事のようです。夏休みの学習計画を親が決めるのもその一環としてなのでしょう。佐藤ママがそう考えて子供を指導するのは佐藤家の自由です。
   しかし私は、子育てのゴールは「将来大人になった時に自立した社会人になる」事だと思っています。因みに、教育基本法の第1条に「教育の目的」が次のように記されています。
「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
つまり、教育の目的は、あくまで、「社会の形成者として勤労に携わることのできる人格の完成」です。子供自身が自己決定自己管理できなければ、将来、自立した社会の形成者になる事は出来ません。そのためには、いつも親の用意したレールを進むのではなく、自分がどんなレールを進めば良いのかを自分で考え判断することが大切だと思います。
   また、平成 23 年の中央教育審議会による「キャリア教育(一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育)」についての答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」によれば、社会的自立のために大切な能力や態度として次の4つが示されています。
①人間関係形成能力
②情報活用能力
③将来設計能力
④意思決定能力
   子供が立てるべき計画を親が立ててしまうことによって、子供が「③将来設計能力」や「④意思決定能力」を身に付ける機会を奪ってしまうことになってしまいます。

   メディアを通じて、受験生の親御さん達から絶大な支持を集めている、4人の子供達を東大に合格させた佐藤ママの影響は大きいものがあります。しかし、我が子にどんな大人になってほしいかは、親御さんが個々に考えてサポートていくべき事で、佐藤ママの形だけを真似するのは危険かと思います。そこで、今回敢えてこの記事を取り上げさせて頂きました。