このことの大切さについて、岡田氏は「抱っこやハグ、スキンシップや愛撫」、ヘネシー氏は「年齢に合わせて子どもを抱く抱擁する抱きしめる」、八尾氏は「嫌がりさえしなければ子どもを抱きしめる肩、二の腕、背中などを優しく軽く触れる背中をマッサージする感じでなでる。」、菅原氏は「豊富なスキンシップ」と述べています。また平山は「ふれる」と述べていますが、この表現は「(力技ではなく)やさしくさわる」という意味と捉えることができます。
   まず、岡田氏は、「抱っこ」の大切さについて次のように述べています。
抱っこをし、体を接触させることは、子どもの安心の原点であり、愛着もそこから育っていく。抱っこをすることで、子どもから母親に対する愛着が生まれるだけでなく、母親から子どもに対する愛着も強化されていく。何らかの理由で、あまり抱っこをしなかった母親は、子どもに対する愛着が不安定になりやすく、子どもを見捨ててしまう危険が高くなることが知られている。(中略)抱っこという実に原始的な行為が、子どもが健全な成長を遂げるうえで非常に重要なのである。それは、子どもに心理的な影響だけでなく、生理的な影響さえ及ぼす。子どもの成長を促す成長ホルモンや神経成長因子、免疫力を高める物質、更には、心の安定に寄与する神経ホルモンや神経伝達物質の分泌を活発にするのである。」(岡田2011
   つまり、抱っこ”こそが、子どもにとっての「安心の原点」であると同時に、母親の子どもに対する愛着を安定させるうえで必要不可欠なものなのです。
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子供に対して虐待に走ってしまう母親は、この重要性を認識していなかったばかりに“抱っこ”を軽視してしまい、その結果、子供が母親の養育に満足せずにいつも泣いている姿に嫌気をさして虐待に走ってしまうのではないでしょうか?
   更に、抱っこのときには、できるだけ赤ちゃんと視線を合わせるよう心がけるのが良いと思います。なぜなら、それだけで「愛着7」の「見る」も同時に行うことができるからです。また、抱っこするのは、赤ちゃんが泣いたときだけでなく、お母さんの手が空いた時もできるだけ抱っこしてあげましょう。その子のお気に入りのビデオを見せるよりも何倍も親子の“愛の絆”づくりに役立ちます。それだけ大切な行動なのですから、たとえ小学校に上がってからであっても、子どもに落ち着かない様子が見られるときは、子どもを毎日抱っこしてあげましょう。例えば「一日10分は必ず抱っこする」という約束事を決めるのはどうでしょう。その時間の長さは年齢や実態によって当然変わりますが、子ども自身もそしてお母さんも、お互いが肌と肌を触れ合わせる時間が確保されているという見通しが立ち、安心につながるのではないでしょうか。たとえ、親子喧嘩をした後でも、その後の「抱っこタイム」によって親子の関係はたちまち修復できます。
   以前NHKの番組で、「子ども達がスマホに依存し過ぎる現状をどうすればいいか」という特集をしていました。その中でコメンテーターとして出演されていた兵庫県立大学准教授の竹内和雄先生がこうおっしゃっていました。「やっぱり子どもらは寂しいし、リアルな場面でなかなか人間関係がうまくいかないから、スマホにしか逃げられない。結局ね、心の問題だと僕は思っています。だから『スマホは危険だ』とか、『ルールを決めることが必要』ということより以前に、やっぱり親が子どもをギューッと抱き締めてあげる、そういうアナログな部分が大事だと思ってますね。」このコメントを聞いて私は「ハッ」としました。子どもたちがスマホやネットゲームに依存しているのは、親との“愛の絆”が失われ、その寂しさをスマホ等で埋めていたためだったのです。そして、子どもの寂しい心を満たしてやるためには子どもを抱きしめることが大切だったのです。「『やめなさい』より先に『ハグ』」ということだったのです。
   また、「触れる」のは「抱っこ」や「ハグ」だけではありません。幼児期以降においては、手をつなぐ頭を撫でる肩をポンと優しく叩く等、発達段階に応じたスキンシップが可能です。
   反対に、何かで注意するときなどには、暴力はもちろん、「ちょっとこっちに来なさい」等と子どもの手をつかみ力でぐいっとひっぱるのもできるだけ避けましょう。子どもは恐怖心を感じて口を閉じてしまったり、「恐れ、回避型」の愛着不全に陥ったりする可能性も少なくありません。言葉だけで十分伝えられることです。子どもを強制的に引っ張るのは、けがや命の危険があるときです。