【今回の記事】

【記事の概要】
先日、コンパを予定してお店を予約したのですが女の子が急な用事で来れなくなったので連絡無しにお店に行きませんでした。
 その数日後、お店から電話があり料理代、飲み放題の代金を請求されました。
 私は全額支払うべきでしょうか?」

【感想】
   ネットで上のような“お悩み”を見つけました。
   この文章から察するに、「お店を予約した」のはこのご本人だろうと思われます。つまり「幹事」です。幹事であれば、お店にキャンセルの連絡を入れる“責任”がありますが、この方は連絡を入れませんでした。
   また、この女の子からの連絡がキャンセルが効かないくらい急なタイミングで入ったというような記述はありません。つまり、キャンセルを入れれば代金は支払う必要は無かったと思われます。
   更に、人の都合が変わることは誰でも起こりうることです。しかしこの方は、お店にキャンセルの連絡を入れなかった自分の責任を、急な用事で来れなくなった女の子にも転嫁しようとしているのです。女の子にも支払いを求めるには、自分の責任を認めた上で、平身低頭な態度で謝罪する必要があるでしょう。

   実は、最近このような無断キャンセルが急増しているのだそうです。私には、このことが精神科医の岡田氏が危惧する「脱愛着」の進行を物語っているような気がします。「愛着」とは「人と人との間に結ばれる愛の絆」のことです。つまり、ここで言う「脱愛着」とは“人と人との絆”の喪失という意味です。自分が連絡を入れないことで、お店にどんな心配や迷惑をかけるかという“お店の方との人間関係性”まで考えが及ばないのは、正常な愛着が形成されていない「愛着不全」の現れとも解釈できます。
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   また、この相談者の方のように、他人に責任転嫁しようとする態度は、愛着障害の症状でもあります。(「愛着の話No.38〜「我が子は愛着障害ではない」という誤解②〜」参照。なお、この記事では、「愛着障害の子供に見られる症状」として紹介していますが、岡田氏が「愛着は“第二の遺伝子”」と指摘しているように、乳幼児期に受けた養育によって不安定な愛着を形成されれば、一生に渡ってその人の人格形成に影響を与えることになります。よって、子供の頃に見られた症状は成人しても残るのです。)

   昨今、メディアやモバイル機器の普及によって、社会の中の最も基本単位である“家族”内でも「脱愛着」の現象が進んでいます。(「なぜ家族同士の愛着が崩壊していくのか?〜スマホに依存した家族生活の怖さ〜」参照)今後、家族間での愛着形成(家族同士での「愛着7」の実行)に留意しなければ、私達はあっという間に「脱愛着」の波に呑み込まれてしまうことでしょう。また、普段から家族の中で「脱愛着」生活を送っていれば、社会に出た時にも無意識のうちに「脱愛着」言動をとってしまうことは何ら不自然なことではありません。

   最後になりますが、先の相談者の方が担った「幹事」という仕事は、それだけ苦労やリスクを抱えている仕事です。それだけに、会の後には、その幹事さんに「お疲れ様でした」「ありがとうございました」等の言葉をかけることはあって然るべきだと思いますし、その配慮が仲間同士の愛着形成につながることになるのだと思います。