【今回の記事】

【記事の概要】
長男に大けがをさせた理由は「忘れ物」だったと話しています。
 静岡県磐田市の会社員・前嶋希望容疑者(27)は19日午後8時ごろ、自宅で9歳の長男の顔を蹴り、骨を折る全治1カ月の重傷を負わせた疑いが持たれています。前嶋容疑者と長男は2人暮らしでした。長男が通う小学校がけがを不審に思い、児童相談所に通報して発覚しました。前嶋容疑者は容疑を認めていて、「長男が学校に忘れ物をして腹が立った」と話しているということです。

最近、また死にたいって気持ちが強くなって……けっこう、しんどいです」
   中央線沿線駅。高坂美咲さん(仮名、25歳)は、表情を変えぬまま、そんなことを言いだした。10代半ばでうつ病を発症し、長年「死にたい」気持ちが治まらない希死念慮と闘う。見た目は年齢相応の普通の女性だったが、表情に喜怒哀楽がないのと、眠れていないのか若干疲れているのが気になった。
(中略)
母親のDVがそもそもの原因かと思います」
「いろいろあったけど、幼いときのことで覚えているのが、公文の宿題をやっていなかったとき母親の思うように進んでいなかったみたいでイスを振り回されて、イスが壁に当たってものすごい音を上げて壊れたすごく怖くて、頭が真っ白になりました。母親はビンタとか蹴り飛ばすみたいな暴力以外に物を投げたり、包丁を突きつけたり、“殺す”とか“殺してみろ”みたいなことを絶叫することがよくありました」

【感想】
   これらの事例が精神科医の岡田氏が最も危惧する「母親による支配的養育」です。
   たとえ今回の記事の様に暴力による叱責ではなくても、親の思う通りに子供が行動できない時にその怒りの感情を子供に激しくぶつけていると、その子供の一生に渡って悪影響を及ぼすことになるでしょう。

   では、子供が何らかの失敗をした時に、親はどの様に対応すればいいのでしょうか?
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   まずは「子供は失敗する生き物」という認識を持つことが大切だと思います。子供は未完成な生き物です。必ず失敗をします。その失敗をある程度まで許容できないと、子供は失敗した時にそのことを隠そうとしたり嘘をつく等したりして、親からの攻撃をかわそうとします。一種の生物学的な“防衛本能”です。
   これはある学校であった実話です。その学校では、自宅が遠距離の子供達にスクールバスを利用させていました。ある日の夕方、帰りのバスが発車しました。ところがその後、そのバスを利用して帰ってくるはずのある子供が、外が真っ暗になってもいつまで経っても帰ってこないと保護者から連絡があり、学校は大変な騒ぎになりました。すると外を探していたある教師が真っ暗な道をトボトボと歩いていたその子を発見しました。事情を聞いてみると、その子は、バスの発車時刻に間に合わずバスに乗り遅れてしまったそうです。そしてその子は徒歩で40分程もかかる自宅まで歩き出しました。通常ならば、職員室に来て、バスにのり遅れたことを先生に話し、家の人に迎えに来てもらうところです。なぜその子は職員室に来なかったのでしょうか?その子にそのことを聞くと「先生に怒られると思ったから」と言うのです。つまりこの事例は、教師が普段から子供の失敗を受け止めていなかったために起きた学校の失敗談です。万が一、真っ暗な帰り道の中何らかの事故や事件に巻き込まれていたらと思うとゾッとする思いです。子供が失敗した時は、その逃げ道を作ってあげないと、時としてこの様な命の危険にさらされる事態を生むのです。

   次に、子供が失敗をした時に子供に何と言うかです。
   失敗した事を子供の方から伝えて来た時は、「よく正直に話してくれたね。次は同じ失敗をしない様に気をつけようね」等と“今後への励まし”を伝えるのが良いと思います。更に、“正直に話せたことを認めてあげる”ことによって、いざいじめ等の重大問題が起きた時に、子供が「親に正直に話そう」と思えるようになることが期待できます。子供の逃げ道を作っていないと、昨今報道されているように、いじめにあっても親に相談出来ないまま自死に至るという最悪の結果を招くことがあるのです。
   また、第三者を通して失敗の事実が明らかになった時には、「あなたから直接話してもらえたら嬉しかったな次は同じ失敗をしない様に気をつけようね」等でしょうか?「どうして自分から言わなかったの?!」よりは大分穏やかさが増していると思います。この様に伝えておくと、次に子供が失敗したときには自分から言える確率が高くなると思います。

   しかし常に失敗を許容していると、子供に“緩み”が生まれ、いつまでも同じ失敗を繰り返すことになります。そうならないために、ある“基準”が必要になります。それは“叱る基準”です。
   私でしたら、「仏の顔も三度まで」と言う諺に従い、3回の失敗までは許すけれどもそれでも直らない時は敢えて厳しく注意をするようにしています。そして最も大切なのは、その基準を事前に子供に予告しておくことです。この様に基準を予告しておくことのメリットは2つあります。
   1つ目は、「3回までは叱られない」と言う安心感から、自分の失敗を隠したり嘘をついたりすることが無くなり、正直に自分から言うようになることです。自分の非を自分から親に言えることは、“自分を守る”ことに繋がる大切な行動です。
   2つ目は、先にお話しした通り、子供には危険(ここでは“親から叱られる事”)を回避しようとする“防衛本能”があるので、基準を予告しておくと、必ず子どもは3回のうちに自分の行動を改めるようになることです
   更に、この3回のうちにかかる時間は長い人生の中で見ればほんの微々たる時間です。その「3回」にかかる時間さえ認めず1度目から厳しく叱責していると、上記記事のように、子供に大怪我をさせてしまったり、大人になっても「死にたい」気持ちが治まらない希死念慮に悩まされることになったり、場合によっては子どもが親に相談できないまま自ら命を落とすという最悪の結末を選択したりする場合もあるのです。

   繰り返しになりますが、子供は必ず失敗する生き物です。必ず呼吸をする生き物である人間が、呼吸することを許されなくなれば生きていけなくなるのと同じように、必ず失敗をする生き物である子供が失敗することを許されなくなればいつか必ずその子の心が崩壊するでしょう。