【今回の記事】

【記事の概要】
 新潟県長岡市の自宅で義理の父親を包丁で切りつけたとして19歳の少年が殺人未遂の疑いで逮捕された。父親はその後、死亡した。
 殺人未遂の疑いで逮捕されたのは新潟県長岡市に住む中国籍で高校生の少年(19)。警察によると少年は14日午後11時すぎ、自宅で、母親の再婚相手で義理の父親(46)の首を包丁で切りつけるなどして殺害しようとした疑いが持たれている。通報を受けて警察が駆けつけたが、父親はすでに死亡していた。
 調べに対し「出て行けと言われ、口げんかとなり、父親を殺した」と容疑を認めている。
 警察は容疑を殺人に切り替え調べている。


【感想】
出て行け!
この言葉は、人にとって最も大切な「所属・愛情の欲求」(by心理学者マズロー)を阻害する言葉です。この欲求は、「誰かからの“愛情”によってその人と繋がっていたい(誰かの心に“所属”していたい)」と願う気持ちです。
   人は常に“自分の居場所”を求めています。“自分の居場所”とは、誰かと心の中で繋がっている時の安心感です。誰からも受け入れられない心を許せる相手が誰もいないという時に人は“自分の居場所”を無くしたと感じて、自死の道を選択する子供が多くいます。
   家族は、社会の中で人が他人と心の繋がりを持てる最小単位の集団です。いわゆるその人の“所属基地”です。その集団から「出て行け!」と言われることは、社会の中に一人ぼっちで叩き出され、“自分の居場所”を奪われるようなものです。

   しかし、私達大人はこの言葉をつい発してしまいがちであるような気がします。家庭に限らず、残念ながら学校でも「1年生からやり直して来なさい!」「こんな問題も分からないなんて◯年生失格です!」等のような声が時折聞こえて来ます。これらも、子供からすれば自分の所属している学級や学年から叩き出されるに等しい行為です。正に学校での“自分の居場所”を無くす思いでしょう。

   この少年のした行為は決して許される事ではありません。しかし、この「出て行け!」という言葉を突きつけられた時に、自分を家族という“所属基地”から叩き出そうとする大人に対して心の底からの怒りが湧いて来たのかもしれません。小さい子供は大人に対して無力なので何も言わずただ泣いて騒いでいるだけですが、心の中では、同様の怒りを抱いているに違いありません。
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   子供を叱ることは子どもの健全な発達の為に必要な事です。しかし、その時に、人として保証されるべき欲求を踏みにじる言葉や行為は極力避けるべきだと思います。因みに、体罰虐待は、「所属・愛情の欲求」より更に優先度の高い「安全性の欲求」を無視する行為であり、食事を与えない事は優先度が最も高い「生理的な欲求」を無視する許されない行為です。