先に「起こり得る夫婦間の問題」として、岡田氏が紹介している事例から夫婦間の問題を取り上げました。
   ここではもう一つ、特に「回避型」のタイプが多い男性の皆さんに知っていてもらいたい「産後クライシス」というケースについて、やはり岡田氏の著書から紹介したいと思います。

「産後クライシスとは、妻の出産後に夫婦間に訪れる危機的状態のこと。この事態の背景として、ホルモンの変動などの生理学的な要因もあると推定されている。出産、授乳に際しては、授乳期間中に次の子どもを妊娠しないよう排卵を抑える働きを持つプロラクチンというホルモンが大量に放出される。これは、この期間に妊娠してしまうと母乳が止まってしまい、昔ミルクのなかった時代にあっては、子どもは死の危険にさらされていたためで、今もその仕組みが女性の体に備わっている。このプロラクチンというホルモンは、排卵が起きないだけでなく、性欲自体も抑制し、セックスにそれほど関心や意欲が湧かないということが起きやすい
   さらに、分娩時に産道となった膣や子宮口は、必然的にダメージを受けており、完全に元の状態に回復するには、一年近い期間を要する。個人差はあるものの、ダメージが残っている間は、セックスをしても快感よりも苦痛不快感を覚えてしまうことも少なくない。そのため、夫が尚早に、出産前と同じような激しいセックスを求めようとすると、妻の方は強姦されるような責め苦に耐えなければならなくなり、それに応じることが恐怖となってしまう。そのような事情を夫が認識せず、更に無理強いしようとすると、妻は、その拷問のような行為を嫌悪するだけでなく、その行為をしようとするまでを憎むようになる。反対に、そのことに気付いていない夫の方はといえば、『子どもが生まれるまでは毎日していたのに、どうして嫌がるのか』と不満を持ち、その不満が、に対する不機嫌非協力的な態度となって現れることがある。夫が自己中心的で、自己愛性の強い性格の場合、不満が怒りになりやすく、夫婦のクライシス(危機)を招くことになる。
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   更に、産後に起きやすい「産後うつ」の問題もある。妊娠を維持するために働いていたプロゲステロンというホルモンの減少等によって、気分の落ち込みイライラを覚えやすくなるのだ。そのうえ、出産から回復しきらない体で、生まれてきた赤ん坊の世話をしなければならない。三時間おきの授乳で、睡眠は細切れになり、慢性的な睡眠不足も加わる。母親となったばかりの女性は、慣れない育児の不安やストレスも大きく、「完ぺきにしよう」と思う人ほどうつになりやすい。夫の協力が不可欠だが、それが得られにくい場合も多い。そうした悪条件が『産後うつ』を生む。」

   さて、いかがだったでしょう。出産後に妻が性交渉を拒否するのは、決して愛情が冷めたわけではなく、生物学的な理由やむなくできないだけなのです。夫側にしても、会社から疲れて帰ってきた体調が悪かったりしたときに、妻から求められると拒まざるを得ないのと同じなのです。私たち男性は、パートナーの体の内情や苦しみを知り、適切な夫婦関係を築いていかなければならないのです。改めて、出産という大仕事をする女性の偉大さを痛感するばかりです。