【今回の記事】
(「産経抄」より)

【記事の概要】
50代の男性教諭が、教室に戻ってこない男子生徒たちに注意したところ、生徒から「ハゲ」「死ね」といった暴言が返ってきた。教諭は発言の主をただしたが、名乗り出ない
▼「卑怯(ひきょう)じゃないか」と、教諭は男子生徒全員を平手打ちした。神奈川県小田原市の公立中学校で、4年前に発覚した体罰である。市の教育委員会に寄せられた意見のうち、8割超が教諭を擁護していた
▼「このハゲーっ」。車を運転中の政策秘書の男性に暴言を浴びせたのは、自民党に先週離党届を提出した豊田真由子衆院議員(42)である。同時に秘書の頭や顔を殴り、傷を負わせていた。さすがに擁護する声は、自民党内からも上がってこない
▼豊田氏の暴挙をすっぱ抜いた「週刊新潮」によれば、身の危険を感じた秘書が、一部始終をICレコーダーで録音していた。とてもコラムで紹介できないような、口汚い言葉が並ぶ。なぜかミュージカル風の節がついたものもある。
(中略)
▼辞典といえば、手元の『大辞林』によれば「選良」は、「選ばれたすぐれた人物。特に、国会議員をさす」「(例)選良にあるまじき行為」とある。金銭トラブル、女性問題、暴言…。豊田氏だけではない。「魔の2回生」と呼ばれる自民党の衆院当選2回生が引き起こした不祥事の数々は、まさにこの用例にあてはまる。「選良」はもはや死語と化した。辞典の改訂が必要である。
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【感想】
   決して体罰暴力)は許されるものではない。しかも先の男性教諭は暴言の主が特定されないまま、可能性のある生徒全員を平手打ちにしている。「疑わしきは罰せず」の考えに反する行為と言わざるを得ない。
   桜宮高校での体罰による自殺事件が起きたのはこの1年前。正に「体罰反対」の世論が渦巻いていた時である。それだけに、この男性教師が行なった行為は本来ならば非難の的となるはずだった。しかし、市の教育委員会に寄せられた意見のうち、8割超が教諭を擁護するものだったという。

   その一方で、秘書に対してやはり「このハゲーっ」と罵声を浴びせ、更に先の男性教諭と同様に、秘書の頭や顔を殴り傷を負わせるという“暴力”を加えていた豊田真由子衆院議員。しかし、こちらは同じ自民党内からさえも擁護の声は上がってこない
   先の男性教諭も豊田議員も相手に対して暴力を振るっている。しかも男性教諭は暴言の主を特定しないまま関係する生徒全員を平手打ちにしている。しかし、男性教諭には8割を超える擁護の声が寄せられ、豊田議員には同じ党内からも擁護の声は出てこない。
   なぜ、この両者にこれ程の評価の差が生まれたのか?
   実は、両者の間にはある決定的な違いがある。それは「ハゲ」と言われた側言った側という違いである。この「ハゲ」という言葉にはどんな意味があるのだろうか?

   私は以前以下のような記事を投稿している。
この記事では、生まれつきリンパ管に良性の腫瘍があり、左の顔と舌が大きく膨れあがっている男性へのインタビューが行われています。この男性にとって一番辛いことは周囲の人達からの冷たい視線だそうです。街に出ると、好奇の目で見られ、すれ違いざまに「なに?あの顔!」と言われたり、「うわっ!」と驚かれたりしたこともあったそうです。
   私はこの投稿の中でこう述べた。
性格の悪さは自分の意識次第で直せますが、顔や体に関わる“身体的特徴”については本人の努力で治すことが非常に難しいです。そしてその為に一番苦しんでいるのはその本人なのです。 

   今回の記事で紹介しているハゲ」という言葉は正にこの“身体的特徴”に当たり、人を“侮辱”するものである。その言葉を言われた男性教諭と言い放った豊田議員とには、天と地との差がある。しかも男性教諭にはその言葉に侮辱的な意味が含まれていることをきちんと認識し、「ハゲ」と言いながらも「自分が言った」と名乗り出ない生徒達に対して、その言葉の持つ罪深さその言葉を使う“責任”とを心を鬼にして生徒に伝えた。その一方で、豊田議員にとってはその言葉で秘書をなじる事に罪の意識など全く無かったようである。
   同じ“暴力”でもそれを行使する人間は全く別物だったのである。