【今回の記事】
【記事の概要】
小学校の先生が児童に「ぶち殺す」などと言っていたことが分かりました。
 松山市の教育委員会によりますと、問題発言をしたのは市内の小学校に勤める女性教諭です。今年4月、授業中にふざけていた5年生の児童に「私が担任だったらぶち殺す」などと言ったということです。教育委員会への匿名の電話で発覚し、女性教諭は児童に謝罪しました。他の児童に対しても「馬鹿」や「あほ」などと言っていたことが分かり、教育委員会は感情で子どもを指導しないよう市内の小中学校に注意喚起しています。

松山市立清水小学校の女性教諭が今年4月、5年児童に「私が担任だったらぶち殺す」などと暴言を吐いていたことが21日、市教委への取材で分かった。女性教諭は不適切な発言だったと認め、児童に謝罪。5月の学級PTAでは校長担任教諭が保護者に経緯などを説明し、謝罪した。
   暴言を受けて同校が5年児童全員から聞き取ったところ、この女性教諭は他の時にも児童に「アホ」「バカ」などと発言していたと答えた児童が複数いた。市教委は女性教諭を処分する予定はないという。
   市教委によると、女性教諭は担任を持たない専科の教諭として児童らを指導。市教委に匿名での電話があり、女性教諭に聞いたところ暴言を認め、「児童がふざけていたため」と弁明したという。
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【感想】
   この女性教師は高学年ではよくある教科担任制による学級担任を持たない教員で、おそらく音楽か家庭等を専門に指導する担当だったと思われる。ただ、この教師の過激な言動からすると、教科の専門性の高さを評価されて任せられているのではなく、日頃の言動から担任は任せられない為に学級担任から外されているのではないかと考えられる。(もちろん教科の専門性の高さを評価されて任せられている教師は沢山いる。

   今回の記事の中で最も驚いたのは次の記述である。
市教委は女性教諭を処分する予定はない
   残念ながらこの教育委員会は教師の「ぶち殺す」「アホ」「バカという暴言や過激な叱責がどれだけ児童の心に傷を負わせるものか理解していない。この教師の行為は罵る」「脅かす」「威嚇する」ものであり、明らかに「不適切な指導(行為)」のうちの「暴言」に該当する。この「不適切な行為」を何故処分しないのか?
   少々法令の話になって恐縮であるが、文科省から示されている「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン」「指導が不適切である」教諭等の定義」でも「不適切な指導」を禁止している。さらにこの中では、「地方公務員法第29条に規定される懲戒処分事由(非違行為等)に該当する者については,指導改善研修により対処するのではなく,懲戒処分を行うべきである。」とされている。更にその地方公務員法第29条には懲戒処分事由として職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」とされている。ちなみに、地方公務員法に定める3つの職務上の義務の中に「法令等上司の職務上の命令に従う義務」(地方公務員法32条)があり「職員は、その職務を遂行するに当たって、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規定に従い、かつ、上司の命令に忠実に従わなければならない。」とされている。これら「法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規定」の中には、当然文科省から各都道府県教育委員会に示された“ガイドライン”も含まれるはずである。よって、「暴言」という「不適切な行為」を行なった教諭は「職務上の義務」を謳った「地方公務員法第29条」に違反し、同時に先の文科省のガイドラインで示されている「指導改善研修により対処するのではなく,懲戒処分を行うべき対象となるものと考える。

   今回の「処分なし」の判断はこの女性教諭が当該児童に謝罪したことを汲んでの判断だろうか?言い古されている言葉ではあるが「ゴメンで済めば警察はいらない」。あくまでそれまでのこの教師の行為の悪質さや事実に基づいて判断すべきである。
   
   また、記事では「学級PTAでは校長担任教諭が保護者に経緯などを説明し、謝罪した」とある。当の専任教諭は同席して保護者に謝罪していないのだ。女性教諭は当該児童に謝罪したとのことであるが、この教諭は他の児童に対しても「アホ」「バカ」という言葉で罵っていたのである。当然他の児童の保護者に対しても謝罪するべきだろう。更に、感覚過敏の子供ならば、自分以外の友達が「ぶち殺す」というヤクザまがいの言葉を浴びせられている様子を見るだけで精神的なショックを受けて登校を渋るケースもあるのである。

   実はこの類の教師は全国に多数いると思われる。因みに私の経験上、1つの学校に必ず最低でも1人はいた。これが全国となると膨大な数になる。今回、この教師に処分が下されなかったのも、もしかしたらそのような教師が余りにも多いために、教育委員会の感覚も麻痺しているのかもしれない。あるいは「処分ドミノ」を恐れたのだろうか?
   今回程の悪質な事例でさえ、保護者に謝罪もしない教育委員会からの処分も無いでは、全国の同じような教師達への抑止力は働かず、彼ら彼女らの言動もこれまでと変わることはないだろう。となれば、今後も通常学級に在籍する感覚過敏の自閉症スペクトラムの傾向の強い子供の“心の安全”は守られることもないのだろう。
   今回の事例では児童らの生活に重大な影響は出なかったようであるがそれはあくまで結果論である。繰り返すが、もしも今回罵倒された子どもが感覚過敏の傾向の強い子どもであったならば、“最悪の結果”を招いていても不思議ではないのである。そういう事態を招いていたら処分が下され、大事に至らなければ下されない。果たしてそれでいいのだろうか?
   そのような子供達のニーズに応えるため、それまでの「特殊教育」から「特別支援教育」に変わってから今年でもう10年が経つというのに…。

   私がここまで執拗に訴えるのは、どんな子供でも安心して学校生活を送ることが出来ることを心から願っているからである。生まれながらにして感覚過敏の特性を持つ子供達が、今現在も学校に対して不適応行動を示し苦しんでいる現実を私達は忘れてはならない。