次に、「離乳のタイミング」についてです。
   離乳は急がず、できれば母乳栄養を、少なくとも、「臨界期」と呼ばれる愛着(愛の絆)形成が行われやすい一歳半までは続けたいものです。
   母乳を与えることのメリットは、栄養的免疫的な意味だけではありません。授乳は、母親と赤ん坊が体を触れあわせるだけでなく、赤ん坊が乳首を吸う刺激によって、母親の脳では「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンホルモンの分泌が促されます。このオキシトシンには、母親のストレスを抑え、イライラや不安を軽減する効果があります。ちなみに、母乳だけで育てている母親では、うつ傾向が低く、母親の産後うつを予防する効果も示唆されています。
   母乳栄養、母子双方に多くの生理的、心理的メリットをもたらしますが、その中でも特に重要なのは、母子の愛着(愛の絆)を安定させ、子どもの発達を円滑にすることです。それを象徴するのが「母乳療法」と呼ばれる治療法です。これは養子となった子どもに母乳を与えることで愛着を安定化し、心身の発達を促す方法で、近年注目されています。
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   1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件では、加害者(自称「酒鬼薔薇聖斗」)の「少年A」の母親は、少年が幼稚園に行って恥をかくことのないように、また、団体生活で必要な生活習慣や能力をきちんと身につけさせようと、排尿、排便、食事、着替え、玩具の後片付け等を早め早めに厳しくしつけました。そのため、離乳生後十か月で強行したそうです。この時期に、もっと母乳による授乳によって、親子の愛着(愛の絆)を形成し、少年のストレスを緩和する「安全基地」を作っていれば、あのような凄惨な事件も起こっていなかったに違いありません。子どもの自立焦りすぎた結果の事件と言えるでしょう。