【今回の記事】

【記事の概要】
 生きたバッタにセミの死骸、揚げ句の果ては飼い犬の糞(ふん)まで-。小学校からの幼なじみに無理やり食べさせたのは、いじめの範疇(はんちゅう)をはるかに超えるものだった。5月15日、強要容疑で警視庁少年事件課に逮捕されたのは、東京都練馬区に住む通信制私立高校1年の少年。少年は中学生時代、4~5人の同学年の男子生徒に顔を殴るなどの暴力を振るい、次々と無理難題をふっかけていた。
不登校になった生徒も
自分はカッとなると手が出てしまう。(生徒たちは)自分にびびっていることが分かっていたので、何でも気づいたことをやらせていた」
警察の調べに対し、少年は悪びれずそう答えたという。
   身長は180センチ台と大柄で、練馬区内の区立中学2年生だったころから、単独で同学年の男子生徒をいじめの標的にするように。被害を受けた生徒たちは、一様に「仕返しが怖かった」と口をそろえる。中には不登校になってしまった生徒もおり、練馬区教育委員会の担当者も「いじめと言うより暴行だ」と驚きを隠さない。
「これ食ってみろ」
   いじめは暴力だけにとどまらなかった。昨年9月9日には、学校行事の帰りに西東京市の西武新宿線東伏見駅のホームで、幼なじみのA君に対し「虫食べられるんだよな。おい、そのバッタ食べてみろよ」と強要。A君は生きたバッタを口に入れたが、バッタが暴れたため吐きだしてしまった。
   A君へのいじめはさらにエスカレートしていく。9月上旬には区内の公園で池の中に飛び込ませたほか、セミの死骸を見つけるとそれも食べるよう指示。居合わせた他の生徒に対しても、「Aが食ってるんだから」と死骸を食べさせようとしていた。
   また別の日には、自宅に来たA君を足蹴にし、顔を殴るなどの暴行を加えた上で、「ちょっとこれ食ってみろ」と一言。その指さす先に落ちていたのは、少年の飼い犬の糞だった。A君は他の同級生の面前で、一生忘れられない屈辱を味わわされることになった。
ミミズやヤモリも
   一連のいじめ行為は、別の生徒の母親が警視庁石神井署に相談して発覚。他にもミミズヤモリ、植物の葉っぱなどを食べるよう強要しており、不登校になった生徒もいたという。
   少年は今年3月に暴行容疑で逮捕されており、今回が3度目の逮捕。暴力を背景にしたいじめの代償は、本人にとっても取り返しのつかないものになってしまった。
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【感想】
   この加害少年の特徴について、気になる記述がある。それは次の点だ。
自分はカッとなると手が出てしまう。(生徒たちは)自分にびびっていることが分かっていたので、何でも気づいたことをやらせていた」
この内、「何でも気づいたことをやらせていた」という記述は、「何でも思いついたこと」と解釈できる。
   つまり、この少年には強い衝動性や多動性があるということである。通常の子どもであれば、カッとなってもその気持ちを我慢する事ができる。しかし、この少年は、カッとなった気持ちを抑えることができず(衝動性)、すぐさま暴力という行動に移してしまう(多動性)。また、「これをさせると相手はビビるだろう」というような思惑もなく、頭に思い浮かんだ事を衝動的に次々とさせている。「衝動買い」という行為があるが、これも何の計画性も思惑もなく、自分の本能的な気持ちに任せて買い物をする行為である。
   また、通常のいじめはその多くの場合、複数人で意図的に特定の友人に嫌がらせをするが、この少年は、単独で同学年の生徒をいじめの標的にしていた。ここに、この少年の個人的な要因が関係しているように感じられる。
   これらの「強い衝動性や多動性」や「個人的な要因」から推察されるのは、この少年が、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」である可能性が高いという事である。
   更に運悪く、この少年は身長が180センチ台と大柄だった。この少年が衝動的に暴力という行動に移してしまうのだ。被害生徒はその迫力と威力の前にただただ従うしかなかっただろう。
   何より今回の事件を引き起こした最大の要因は、学校がこの少年についてADHDを疑わなかった事である。仮に専門医に診断を依頼していたなら、それなりのアドバイスや薬の服用等を勧められて、少年の行動はここまでエスカレートする事はなかったはずである。

   私は以前、次のような投稿をしている。
この投稿の中で取り上げた記事の中では、その記者が以下のように述べている。
精神鑑定をした3人の医師に共通していたのは、元名大生が広汎性発達障害の為に他者への共感性が欠けているという点だった。『相手がどう思うか』に無頓着な上、深い反省ができない興味は著しく偏り、対象は偶然にも『人の死』や『人体の変化』に向かっていった。他の少年事件とは本質的に異なり、供述や犯行はただ本能に「真っすぐ」に従っただけのようにも見えた。

   この記者の言葉を借りるならば、強い「衝動性」や「多動性」の為に、カッとなった気持ちを抑えることができず、すぐさま暴力という行動に移してしまった今回の少年も、“ただADHDの本能に真っ直ぐに従っただけ”だったのかもしれない。
   しかも、上記の「タリウム事件」の場合、それぞれの関係機関がそれぞれの調査や聴取を行っておらず、もしもそれらがきちんとされていれば、被告が重大な犯罪を起こす前に、被告に対して考え方や行動を修正させる働きかけが出来ていた可能性はかなり高かった。
   それと同様に、今回の事件でも、学校がこの少年についてADHDを疑い専門医に診断を依頼していたなら、少年の行動を修正させる働きかけが出来ていた可能性はかなり高かったと思われる。

   発達障害対策である「特別支援教育」がスタートして今年で10年も経つ。しかし未だに学校現場においてでさえその理解は進んでいないのが現実なのである。この少年はある意味、理解が進まない今の未成熟な社会の犠牲者だったのかも知れない