一般的には「愛着“障害”」という表現の仕方をしているためか、「そのような特異な症状が現れる子どもは、養育する親がおらず、児童養護施設等で育てられた特殊な子どもに限った問題である」という誤解はいまだに残っているようです。確かに、児童養護施設に愛着障害の子どもが多い事実は否めません。また、先に紹介した二件の凶悪犯罪の事例をニュースで見た時までは、「対岸の火事」という意識でしか考えていなかった家庭も多かったのではないでしょうか。
   しかし、特にここ数年の間に、保育所、幼稚園、小学校、中学校等の通常の現場で、つまりは通常の家庭で育った子どもの中に愛着障害の子どもが激増していると、米澤氏は指摘しています(米澤2015)。日本がまだ貧しかったころに比べて、現在は、一人一人の子どもに与えられている親の思いや資金などは桁違いに増えているはずです。それにも関わらず、子供全体の3割もの子供が愛着障害(重篤な「反応性愛着障害」と区別して岡田氏が提起している「愛着スペクトラム障害」としての愛着障害)の症状を示しているという現実、更に愛着の問題を抱えているのは子どもだけでなく、大人までが同じような問題を引きずっているという現実(岡田2011)を私達はどのように解釈すればいいのでしょうか。虐待、あるいは毎日子どもを叱責しているような不適切な養育や子どもとの関わり方が行われている場合はもちろんのこと、のです。
   岡田氏はその主な要因として、「愛着を形成するための大切な時期における親の不在」「施設に預けられている子どもの養育者の交代」「親の愛着スタイルの子どもへの伝達」「親の子どもへの無関心、子どもに対する否定的な言動、親の思いの強要などの養育態度」「母親のうつ」等を挙げています(岡田2011)。後で述べますが、「え、たったそんなことで愛着障害になるかもしれないの?そんなことだったらうちでは日常茶飯事なんだけど」と思われる方はたくさんいらっしゃるはずです。もはや、「愛着障害はどの家庭にも起こりうる」、そう考えておかねばならない危機的事態が訪れているのです。
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   以下に、愛着障害の子どもに見られがちな症状を、「1感情面」から「6道徳面・倫理観」まで挙げました(ヘネシー2004)。それらの症状について、お子さんの様子を思い浮かべながら、ご覧ください。
(次回に続く)