さて、なぜ私が今回愛着障害についての原稿をまとめようと思ったかというと、単に私がこれまで勤務してきた学校現場での問題を改善しようと思ったからではありません。「はじめに」でも述べたように、精神科医の岡田氏の著書の中で次の指摘を見たからです。
「もともと、愛着の問題は、子供の問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子供の問題として取り上げられることが多かったのですが、最近では、一般の子供にも当てはまるだけでなく、大人にも広く見られる問題だと考えられるようになってきています。しかも、今日、毎日のようにテレビや新聞で報道されているような大きな社会問題に関わっていることが明らかになっ てきたのです。例えば、うつ病や不安障害アルコール、薬物、ギャンブル等への依存性境界線パーソナリティー障害(以前は「人格障害」と呼ばれていた)や過食症といった現代社会に乱れがちな精神的なトラブルにおいて、その原因となっているばかりか、離婚や家庭の崩壊虐待やネグレクト結婚や出産に対する抵抗感ニートや引きこもりなど社会へ出ることへの拒否、非行や犯罪といった様々な問題の重要な原因としてもクローズアップされているのです。」
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   毎日のようにテレビのニュースで取り上げられている目を覆いたくなるようなあの悲惨な事件の原因が「愛着」の問題にあると言うのです。中には、「自分が生きていても意味がない」と言って、自らの命を断つ子供もいます。これは、完全に誰とも「愛の絆」が結ばれていない「脱愛着」の状態に他なりません。
   いわゆる「1億総活躍社会」を阻む大きな問題です。