【今回の記事】

【記事の概要】
言葉を失っている」。仙台市青葉区の市立中2年の男子生徒(13)が自殺した問題で、大越裕光市教育長は29日の記者会見で絞り出すように語った。市内の中学生のいじめによる自殺は、ここ3年で3人目という異常事態。市教委は自殺予防に注力してきたが、教訓はまたも生かされなかった。
   止まらない悲劇の連鎖に大越教育長は「自死予防教育をスタートする矢先だっただけに残念でならない。今後、何をなすべきか、この場では答えを持ち合わせていない」と肩を落とし、「責任は感じているが、責任の取り方について具体的なことをお話しする段階ではない」と話した。

【感想】
万策尽きた」ともとれる教育長の弱気な発言である。それでは、今後も同じような事件が起きてしまうだろう。

   解決策の模索は、やはり「いじめがなぜ起きるのか?」というところから出発するべきだと私は思う。
   私は以前に、国立教育研究所総括研究官 滝充氏の「いじめは加害者が溜めた“ストレス”の発散によって起きる」という見解を以下の記事で紹介している。この中では、学校環境と家庭環境の両面から子供達の受けるストレスについて考察している。

   滝氏の指摘から考えれば、解決への第一歩は「子供が学校や家庭でどんなストレスを溜めているか?」の洗い出しだろう。“子供の行動を変えるにはまずの改善から”というわけである。「いじめるな!いじめるな!」と行動を禁止・注意するだけでは生徒のいじめ行為は永遠に無くならない。先日紹介した神奈川県立田奈高校の「廊下での対話」による実践のように、まずは生徒目線に立った対話から始め、硬く凍りついた生徒の心を溶かしてやる必要がある。
   そのためには、全校一斉の「生活イライラ調査」の実施が必要である(「生活なやみ調査」では今の子供達にはピンとこない。「なやみ」という抽象的な表現より「イライラ」の方が特に思春期の子供にはストレートに響くような気がする)。「どんなことを書いても絶対に怒られない」と予告し、普段イライラしている事を書いてもらう。
   次に、生徒に書かせた調査用紙を担任が全員分を読み生徒と個別面談の機会を設けて、特に必要な生徒への「共感」を行う。カウンセリングと同様に「傾聴的態度」を意識して、生徒のイライラを徹底的に生徒目線で聞くのである。
   以前も紹介したが、以前は生活が乱れた生徒達が大勢途中退学していた神奈川県立田奈高等学校で教師達が廊下にたむろしている素行の悪い生徒達に対して彼らに積極的に声をかけ、同じ目線で対話をするようにしたそうである(通称「廊下での対話」)。するとそれまでの教師と生徒との関係は改善し、生徒達の退学も激減したそうである。
   人間は悩みを誰かに聞いてもらうだけで、心が軽くなるものであるから、それだけで生徒のイライラも、また教師を見る“目”も改善していくだろう。先述の田奈高校の事例のように。
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   更なる次のステップは、生徒のイライラの“実態”に応じて考えることになる。