【今回の記事】

【記事の概要】
 特別支援学校・学級に通う子どもが全国で急増し、九州7県でもここ10年で1・7~2・3倍に増え、2016年には軒並み過去最多に上ったことが分かった。知的障害や発達障害の子どもの増加が目立ち、主にこうした障害の認知が広がり社会的な偏見が薄らいだことで、地域の学校ではなく支援校・学級を選ぶ家庭が増えたとみられる。各県教育委員会は支援校の増設など対応を急いでいる。
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   福岡は約7割が知的障害の子どもで、ここ10年で約4500人増えた。県教委は「支援校は遠方にあり、これまでは通学の負担もあって地域の学校に通わせる家庭が多かった」と指摘。「偏見が薄らぎ、個別指導に近い専門的な教育が受けられる支援校に切り替え始めた」と分析する。
   佐賀では、自閉症・情緒障害の子どもが10年前の約8・5倍の約1100人に急増。「自閉症など、知的障害を伴わない発達障害の認知が広がった」(県教委)とみられる。

【感想】
   一つだけ疑問が残る。それは、「特別支援学校・学級に通う子どもが全国で急増し、九州7県でもここ10年で1・7~2・3倍に増え、2016年には軒並み過去最多に上った」という数字の結果だけから、この記事にあるような「障害の認知が広がり社会的な偏見が薄らいだことで、地域の学校ではなく支援校・学級を選ぶ家庭が増えた」という解釈をして良いのか?ということである。その結果に至るまでのプロセスの把握は十分なのだろうか?
   ちなみに私が勤めていた学校の地域では、初めは通常学級に在籍していた発達障害の子どもが、学級に適応できなくなり、小学校在学途中に特別支援学級に移籍し、中学校からは特別支援学校に入学するというケースが増えているという情報をよく耳にする。中には「通常学級ではいちいち発達障害の子どもに配慮している暇はない」と考えている通常学級の担任もいる。たとえそこまで極端ではなくとも、やはり発達障害の子どもに対して否定的な感情を抱いている教師の方が多いのが現実である。
   つまり、決して発達障害に対する理解が進んだということではなく、通常学級で“問題児扱い”され適応できなくなった子どもたちが止む無く特別支援学級・学校に移籍しているというケースが多いのである。保護者の方も、本当は“みんなと同じ”がいいと思っているのだが、 仕方なく特別支援学級や特別支援学校への在籍に合意を示しているのが実情である。そのため、本県の特別支援学校は、既に在籍児童がいっぱいで教室が足りなくなっている状態である。内情は違うが、その結果としての状況だけは九州と同じである。
   時々、尾木ママのブログでも、発達障害の子どもが担任からもいじめられ学級に適応できずにいるという話を聞く。 そういう話を聞くと、決して記事あるような「自閉症など、知的障害を伴わない発達障害の認知が広がった」という認識どころか、正に、知的な遅れのない自閉症スペクトラム障害の子どもが、教師からも理解されず苦しんでいるのが全国的な実態ではないだろうか。
「通常学級にも障害者がいる」ということが当時文部省の調査で分かり、その子どもたちのニーズに応じた特別な支援をしていこうという趣旨で、それまでの「(「特殊学級」という場に応じた)特殊教育」から、現在の「(通常学級にいる子どものニーズに応じた)特別支援教育」に移行したはずだった。つまり、通常学級でも対応できるように、通常学級の担任が「個別の指導計画」を作り支援するという趣旨が始まりだったのである。しかし、現実には発達障害の子どもは通常学級から離れ、特別支援学級や特別支援学校へと籍を移している。
  ところが、記事にあるように、県の教育委員会が「障害への認知(理解)が広がったために特別支援学級・学校の子どもが増えた」と捉えているのは、発達障害の子どもが通常学級で苦しんでいるという実態の把握が甘いためではないだろうか。 私の思い過ごしであることを願うばかりである。