【今回の記事】

【記事の概要】
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①大分県宇佐市の認定こども園「四日市こども園」で男児ら3人が襲われた事件で、銃刀法違反容疑で逮捕された無職の射場(いば)健太容疑者(32)が、自暴自棄になったという趣旨の供述をしていることが1日、捜査関係者への取材でわかった。
   一方、射場容疑者は引きこもり状態だったとして、家族が県北部保健所に相談していたことも、県関係者への取材でわかった。県警は、事件との関連についても慎重に調べる方針だ。
   県警によると、射場容疑者は園に侵入し、切りつけて負傷させたことを認めているという。園によると、侵入してきた際はフルフェースのヘルメット姿で、奇声を発していたという。
②近隣住民らによると、射場容疑者は園近くの自宅で両親と同居していたが、最近は1人暮らしだったという。自宅で「俺の人生壊しやがって」と叫んだり、外にいる子どもたちに「うるさい。ほかで遊べ」と怒鳴ったりしていた自宅周辺で夜中に大声を上げて走り回り、上半身裸で竹刀を振っていた姿も目撃されている。地域のカラオケ大会に「うるさい」と怒鳴り込んだこともあるという。
   両親によると、小中高時代はいじめに遭い、高校1年時に中退就職はせず、今も自宅にこもる状態が続いていた。昨年7月に相模原市の障害者施設で殺傷事件が発生した直後は、家庭内で「犯人の気持ちがよく分かる」と話したという。
   

【感想】
    射場容疑者の俺の人生壊しやがって」とは、誰に対する言葉なのか?自分をいじめた同級生に対する怒りか?世間一般への逆恨みか?
   今回は、彼がこの事件を起こすに至った背景について、色々な角度から考えてみたい

   私はまず、射場容疑者が以前は自宅で両親と同居していたが、最近は1人暮らしだったという報道を聞いて、両親との確執があったのではないかと推測した。何故ならば、引きこもりになる若者は、自分の親に対して怒りを持つことが多いからだ。それは精神科医の岡田氏の以下の指摘からも分かる。
「今世紀に入って若者たちによる、親や教師、時には無関係な他人を傷つけ命を奪うという事件が相次いでいる。彼らに共通するのは、深い自己否定と疎外感を抱え、自分を認めてくれなかった親に対する悲しみや怒りを最後に復讐することで晴らそうとしたことである。」
岡田氏がその一例として紹介している若者も、親の過干渉が要因で引きこもりに陥った若者であった。つまりその背景にあるのは、親の過干渉による親子間の愛着(愛の絆)の破壊である。自分を引きこもりに追い込んだ親への恨みを社会に対して爆発させることで復讐したのかも知れない。

  また、 一般的に、愛着の不全は特に人間関係能力に影響を及ぼすとされている。小中高時代の彼が持っていた愛着パターンが、「回避型「抵抗・両価型(「不安型」)」「混乱型」のどれかは分からないが、何れも集団生活からはみ出しやすいタイプであることには間違いない。そこからいじめが始まったとも考えられるのだ。特に、「抵抗・両価型(「不安型」)」は、今や多くの普通の家庭に見られるパターンであり、どの家庭の子供がなっても不思議はないのである。教育熱心な親ほど子供をその愛着パターンに追い込みやすいのだから。

   また、幼い頃に親からの虐待等によって心に傷を負っている大人は、「恐れ・回避型愛着スタイル」を持つことになり、被害妄想的感情から、場合によっては精神錯乱状態になることもある。しかし、射場容疑者の両親がそういうタイプであったことはこの報道を見る限りは伺えない。

   ちなみに、射場容疑者が家庭内で「犯人の気持ちがよく分かる」と話したという相模原市の障害者施設で殺傷事件を起こした容疑者は「自己愛性パーソナリティ障害」と診断された。この障害は、乳幼児期の親からの「共感」不足という、やはり愛着(愛の絆)の不全状態がその背景にある

   何れにしても、射場容疑者を狂気へと駆り立てた事の背景には、紛れもなく親との愛着不全がある。現代社会にあっては、“愛着形成の仕方”や“愛着形成のやり直しの仕方”は決して目を背けてはいけない課題なのである。