(この「愛着の話」は精神科医の岡田尊司氏を中心に、各専門家の文献を、内容や趣旨はそのままに、私が読みやすい文章に書き換えたものです)


【注目点】

   大人の愛着スタイルの様々なタイプを紹介します。今回は「不安型愛着スタイル」について紹介します。このタイプの人は、いつも他人の目を気にし、何とか嫌われないように心配ばかりしています。自分の子供を自分の不安を埋める道具として考える母親もいます。(原因は、「不安型」を引き起こす幼少期に受けた親の養育です)

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   不安型の人は、終始周囲に気をつかっていることが多いです。相手の顔色を見ながら機嫌をうかがったり、丁寧すぎる挨拶をしたりします。そのとき、少しでも相手の反応が悪かったりすると、嫌われているのではないかと不安になって、肝心の仕事どころではなくなってしまいます。この過剰な気遣いこそが愛着不安の表れなのです。

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不安型の人は、「愛されたい」「受け入れられたい」「認めてもらいたい」という気持ちが非常に強いため、拒絶されたり、見捨てられたりすることに対して極めて敏感です。その結果として、相手に逆らえないということがしばしばみられます。明らかに不当なことを要求してきたり、自分のことを都合よく利用しようとしたりしている相手に対してさえも、それをはっきり拒むということが難しいのです。

   また、不安型の人は、仕事上の単なる連携に過ぎない関係を愛情関係と錯覚してしまうことが起きやすいです。また、不安型の人の厄介な面が、明確に表れるのは、親密な関係になった時です。急激にもたれかかってきて、相手の全てを独占したいという傾向が顕著になるのです。親密になればなるほど、急速に自分と他者との境界が曖昧になり、相手を自分の一部のように思い込んでしまいます。また、「見捨てられるかもしれない」という不安が強いため、自分が愛されていることを過剰に確かめようとする行動も起きがちです。やむを得ない事情で相手が自分をかまってくれない事さえも腹立たしく思い、裏切られたと感じて怒りをぶつけたりします。

また、不安型の人は、不満や苦痛といったネガティブなことを、つい口にしてしまう傾向がみられます。言いだすとどんどんエスカレートして、そこまで思っていないことまで言ってしまうこともあります。相手に見捨てられることを恐れる一方で、激しい言葉や、相手のプライドをズタズタにするような言葉をわざわざ投げかけてしまうのです。その背後には、相手が自分のことをおろそかにしているという被害妄想的な面があります。

また、否定的な感情にとらわれやすく、些細なことをいつまでも引きずりやすく、じくじくと長引かせやすい特徴もあります。見捨てられることへの恐怖や認められたいという欲求が強力であるだけに、それをないがしろにされたことに対する怒りは、そう簡単には収まらないのです。更に、不安型の人は、愛着対象に対する期待がとても大きいです。子どもの頃、愛着対象から、条件付きの不安定な愛情しか与えられなかったことで、愛情に対する飢餓感が強いのです。そのため、本当はパートナーに愛され、支えられている場合でも、それを不十分なものとして感じてしまうのです。不安型は、子どもでは「両価型」と呼ばれるように、”求める気持ち”と”拒絶する気持ち”の両方が共存しています。幼い頃から養育者に、過保護に甘やかされる一方で、親の意に沿わないと強く拒否されるといった極端さの中で育っていることが多いため、甘えたい、愛情を求めたいと願う一方で、またいつ手痛い仕打ちが待っているかもしれないという気持ちも抱いています。愛情が無条件のものではなく、状況が変われば見捨てられるという思いを消せないのです。