【今回の記事】

【記事の概要】
   西東京市の市立小学校に勤務していた新任の女性教諭(当時25歳)の自殺をめぐり、原因は公務にあるとした一審・東京地裁判決(2016年2月)を不服として、地方公務員災害補償基金が控訴していた裁判の判決が2月22日、東京高裁であった。後藤博裁判長は、一審同様、自殺は公務に起因するとして、基金の請求を棄却した
   判決が確定すれば、手続きをへて、遺族に対する公務災害の補償がスタートする。女性が亡くなったのは2006年。遺族は2008年に基金に労災を申請したが、何度請求しても認めらず、裁判で争っている。女性の父親は「10年は長く苦しかった。控訴を知ったときの、落胆と失望は筆舌に尽くし難かった。これ以上の苦しみを与えることがないようにお願いしたい」と、基金側に上告しないよう求めた。
   判決などによると、女性は2006年4月に採用され、2年生のクラス担任になった。クラスでは、児童による万引き事件上靴隠しなどのトラブルが相次ぎ、保護者からのクレームも重なったという。
   さらに初任研修の課題などによるプレッシャーや、自宅作業なども増え、女性は採用2カ月でうつ病を発症休職からの復帰後も学級トラブルが続き、同年10月に自殺を図った。意識不明の重体となり、12月に亡くなった。
   高裁では、勤務や一連のトラブルの負荷などが争われたが、「学校等において十分な支援が行われず、かえってその負荷を強めるような発言もあった」などとして、業務と自殺の関係を改めて認めた。
   山下敏雅弁護士は、「激務が認められても、死んでしまったら意味がない。現場の先生は生の声をあげ続けてほしい」と話していた。

【感想】
   これが教師生活1年目の実態である。新任1年目は、とにかく出張研修が多く、しかもそれが運動会などの大きな行事の直前に設定されることが多々ある。本来ならば、大きな行事とその練習を通して教師と子どもとの心が繋がらなければならないのに、その直前になって担任教師は出張に出かけるのである。学級の児童と向き合う時間がなければ、記事にあるような児童の万引き事件上靴隠しなどのトラブルに親身になって対応する余裕が無くなるのは当然である。
   さらに、初任者研修の一番の大仕事として、「課題研修」がある。これは、自分自身の教科指導上の課題を設定し、その課題をどうすれば達成できるかを考え、それを指導主事の指導の下に検証授業を行い考察を加え、冬休みにその検証結果をプレゼンするという作業1年間通して行う。そんな膨大な作業が僅か一年目の教師に課せられるのである。
   しかも「学校等において十分な支援が行われず、かえってその負荷を強めるような発言もあった」という。ただでさえ過酷な業務に加え、本来仲間であるはずの職員による、配慮に欠け、逆にプレッシャーをかけるような言動が本人を自殺へと追い込んでしまったと言わざるを得ない。

   特に小学校教師にとって一番大切な事は、教師が子どもとが強い絆で繋がることである。つまり、教師と子供との間に「愛の絆(愛着)」を作ることだと私は思う。そのためには一番何を優先的に行わなければいけないのか?そこが最も大切になる。
   それは、講義での研修ではなく、子供と沢山の時間を過ごす中で、「愛着7」の支援を行うことである。私達の諸先輩方が「子供と沢山遊びなさい」とアドバイスしてくださったのは、子供と遊ぶという行為の中に「愛着7」の支援がいくつも含まれているからである。(たとえ子供とどれだけ遊んだとしても、教師の表情が曇っていては、子供との愛着は結ばれないだろう。
   1年目の教師にはまずそのための時間をたくさん与え、先の「課題研修」は、学校現場での仕事の流れも分かり余裕も生まれてくる2年目に取り組ませればいいのである。

   文部科学省には、今回の事件を重く重く受け止めて具体的な改善に乗り出してほしい。