【注目点】
不安定な愛着状態の子供は、3、4歳の頃から、子供らしくない特有の行動によって周囲の人間をコントロールし、親までを意のままに操るようになる。なぜそのような行動をとるのか?そしてその行動を取らせているのは誰なのか…!

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   不安定な愛着状態におかれた子供では、3、4歳の頃から特有の方法によって周囲の人間をコントロールすることで、保護や関心が不足したり不安定だったりする状況を補うようになります。「統制型の愛着パターン」と呼ばれるもので、大人を攻撃することによって周囲を動かそうとするパターンと、よい子に振る舞ったり保護者のように親を慰めたり手伝ったりすることで、親をコントロールしようとするパターンがあります。「まさか、そんな小さいうちから?」と思われるかもしれませんが、子供によっては、ほんの4歳ごろから、親の顔色を見て、機嫌を取ったり慰めようとしたりする行動を示すのです。親が良くない行動とった時や、子供が自分の思い通りにならない時に、相手を叩こうとする攻撃的手段に出る事は、さらに早く3歳ごろから認められる場合もあります。このコントロール行動は、大人が作る無秩序な状況に対して子供ながらに秩序を取り戻そうとしているものだと言えるかもしれません。つまり、親が安定した秩序だった環境を子供に提供していれば起こらない症状なのです。
   このコントロール行動は、大きく次の3つの戦略に分けられます。①「支配的コントロール」「従属的コントロール」「操作的コントロール」です。
   ①「支配的コントロール」は、暴力や心理的優越によって、相手を思い通りに動かそうとするものです。
   ②「従属的コントロール」は、相手の意思の通りに従うことで、相手からかわいがってもらおうとする戦略です。一見するとコントロールとは正反対に思えますが、相手に合わせ、相手の気に入るように振る舞ったり、相手の支えになったりすることで、相手の気分や愛情を自分の意のままにしようとする点でコントロールと言えるでしょう。
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  ③「操作的コントロール」は、「支配的コントロール」と「従属的コントロール」がより巧妙に組み合わさったもので、相手に強い心理的衝撃を与え、同情や共感や反発を引き起こすことによって、相手を思い通りに動かそうとするものです。
   いずれのコントロール戦略も、決して子供のわがままから生まれている行動ではなく、不安定な愛着状態による心理的な不充足感を補うために発達したいわゆる適応行動なのです。ですから、このような症状が見られたときは、愛着が未形成なのだと捉え、養育の仕方を見直す必要があります。ちなみにこの3つは、比較的幼い頃から、継続して見られることが多い一方で、大きく変化する場合もあります。また、相手によって戦略を変えてくるということも多いですが、やはりそうすることによって精神的なバランスをとっていると考えられます。
   要するに、子供は単に自分が生きていくために本能的に年不相応な防衛戦略をとっているだけであり、そういう行動とらせているのは他でもない、無秩序な養育をした親なのです
   ちなみに、これがいわゆる愛着障害(不全)の症状と言われるものであり、具体的には後の「『我が子は愛着障害などではない』という誤解」の項で紹介する症状でご参照ください。