【今回の記事】

【記事の概要】
(上記記事参照)

【感想】
   WBCでの侍ジャパンの熱戦が続いている。
   この世界大会で対戦する外国人打者は落ちる球に弱い。そんな相手球団に対してピッチャー千賀滉大の「おばけ」とさえ評されるフォークボールの果たす役目はこの上なく重要である。
   しかし、低めを狙って投げなければいけないフォークボールは、キャッチャーの前でワンバウンドし、キャッチャーがパスボール(ボールを後ろにそらすこと)をするという危険を常にはらんでいる。
   そんな危険を伴うフォークボールをなぜ千賀はWBCという大舞台で投げ続けることが出来るのか?それはキャッチャー小林誠司が身を呈してワンバウンドしたフォークボールを後に逸らさないからである。驚くことに、小林はWBCの計6試合で1度もパスボールをしていないのだ。強化試合では千賀のフォークを何度も後に逸していた小林だったが、その後相当の練習を積んでいたのであろう。
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千賀のフォークを支えた小林のキャッチング

   ドジャースの極東担当スカウトも務めるオーストラリアのジョン・ディーブル監督がこうコメントを残している。
「我々は日本で最高の投手3人のうち2人と対峙した。スガノとオオタニはおそらく最高の2人の投手だが、センガもそこに並ぶ存在だ。」
大谷、菅野と名前を並べられた千賀はこのフォークボールがあって初めてその実力を発揮できる。しかしそのフォークボールを支えているのは他でもない侍ジャパンのキャッチャー小林なのである。

   私はこの小林を見ていた時、ある一人のキャッチャーを思い出した。それは今から約10年前、現在大リーグでプレーしている田中将大が高校3年生の時、夏の甲子園の決勝で再試合を繰り広げた早稲田実業のキャッチャー白川英聖である。その時にバッテリーを組んでいたのは他でもないあの斎藤佑樹だった。当時斎藤の投げるスライダーは、縦に鋭く曲がる本人にとっての決め球であった。しかしあまりに鋭く曲がるため、やはりキャッチャー前でワンバウンドしてしまうことも度々だった。しかし、当時斎藤は「白川がずっと止めてくれていたんで、信頼感がありましたよね」と、「俺が捕れるようにならないと、斎藤が生きない」と考え、冬場ピッチングマシンを使って落ちるボールをひたすら止める捕球特訓をしていた白川の事を讃えてていた。この信頼感に支えられていた斉藤は、そのスライダーを武器に甲子園優勝を飾ることができた。
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捕手白川に支えられ優勝投手となった斎藤

   千賀にしても当時の斎藤にしても、誰もが認める素晴らしい投手である。しかしその2人を支えていたのは他でもない、捕球困難な変化球を取るために懸命に練習を積み、ワンバウンドする球を取り続けた小林、白川の両キャッチャーの存在だったのだ。

   スポーツはチームワークが大切だと言われる。以前投稿した以下の記事で、リオデジャネイロオリンピックのバドミントンダブルスで金メダルを獲得した高松ペアの強さの秘密について紹介した。

彼女たちの強さの秘密も「互いに尊重し信頼し合う気持ち」であった。

   この事はスポーツに限ったことでは無いパートナーを組む人間同士が互いを信頼し助け合う事は、仕事を円滑に進める上で必要不可欠な事である。私はそのことをこの素晴らしいスポーツマン達を見ていて改めて感じさせられた。