【注目点】

人間はストレスや不安が高まった時、愛着を形成した人間(親や親友等)を求めその側にいようとします。ところが、十分に愛着が形成されていない子供の場合は通常とは異なる行動を取り、大人を困らせます。それはどんな行動でしょうか?

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   十分な安心が得られる安全基地が確保されていると、次第に安全基地から遠く離れていても、あまり不満を感じることもなく、探索行動、つまり仕事や社会的な活動に打ち込めるようになります。安全基地は、いざという時の避難場所でもあるのです。必要なときに助けてもらえるという安心感があれば、愛着を形成した人間の側にいつもいなくても良いのです。しかし、何か特別な事態が起きてストレスや不安が高まったときには愛着を形成した人間を求め、その側にいようとします。この行動を「愛着行動」と言います。それが健全な状態であり、自分を守るために重要な行動です。
   その愛着行動には様々な形があります。まず、幼い子供のように愛着している人物と一緒にいようとしたり、体に触れようとしたり、といった直接的な行動です。次に、愛着する人物について考えたり、以前にその人物が言った言葉や、してくれたことを思い出したりする精神的な活動も含まれます。
   安定した愛着においては、周囲からのストレスや脅威に対して、ほどよく愛着行動(愛着を形成した大人を求める行動)をとることで心が癒され、ストレスが緩和されたり安定が持続されたりします。それは、愛着を形成した人間、例えば母親という相手のことが好きだからこそ起こる行動です。
   ところが、人によっては、ストレスや脅威を感じても、愛着行動がほとんど見られないことがあります。これは、先に述べた「脱愛着」のように、愛着システムが出来上がる頃に、愛着行動を抑えた方が自分が生き残る上で有利だった結果、愛着行動を活性化させない行動スタイルを無意識の内に身に付けたためだと考えられます。例えば泣き叫んでも何の反応も返ってこなかったり、逆に拒絶されたりすることが繰り返された場合などです。

   また、ストレスや脅威に対して、過剰なまでの愛着行動が引き起こされる人もいます。このタイプの人の場合、少しでも愛着対象が離れていきそうな気配を感じただけで、強い不安を覚えます。そのため大騒ぎをして、愛着対象の人間を自分の側に居させるように努力します
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    過剰な愛着行動(大騒ぎ)でお母さんを側に居させる

これは、愛着システムが生まれる時期に、愛着行動を過剰に行う方が自分の安心や安全を守るのに効果的だった結果、過剰な愛着行動をとる行動スタイルを無意識の内に身に付けたためだと考えられます。例えば、養育者の関心が薄く、自分が大げさに騒いだ時だけ、かまってもらえたということが繰り返された場合などです。
   もっと複雑な反応が見られることもあります。ストレスや脅威が高まったときに、愛着対象の人間を求める愛着行動とは一見反対な行動が引き起こされる場合です。本当は側にいて欲しい人間を拒否したり攻撃したり、無関心を装ったりするというものです。これも愛着行動を過剰に活性化させる戦略の1つだともいえますが、こうした裏返しの反応は、愛着の問題が深刻なケースほど強くまた頻繁に見られます。これは、求めても答えてもらえず、逆に傷つけられることへの不安怒りが表裏の関係で共存したためだと考えられます。
   つまり、いずれの場合も、自分を養育する大人の反応に合わせて、自分が生きていくために有利な戦略を本能的に身に付けた環境に対する適応行動なのです。