【今回の記事】

【記事の概要】
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   千葉県山武市で昨年3月、生後5カ月の長女を殺害したとして、殺人罪に問われた東京都板橋区の無職、小川紀子被告(39)の裁判員裁判の判決で、千葉地裁は3日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)を言い渡した。金子武志裁判長は事件当時被告が「産後うつ病」の影響で心神耗弱状態だったと認め、「服役より治療を優先すべきだ」と結論づけた。
   被告は事件前の昨年2月、産後うつ病と診断されていた。病気が事件に影響した点は検察側と弁護側に争いがなく、争点は責任能力の有無と程度だった。

【感想】
   精神科医の岡田氏によれば、産後うつに陥る母親は4人に1人にも及ぶ非常に身近な問題とのことである。以下は、岡田氏の著書(「夫婦という病」2016)からの抜粋である。
妊娠を維持するために働いていたプロゲステロン(というホルモン)の減少などにより気分の落ち込みやイライラを覚えやすくなるのだ。その上、出産から回復しきらない体(※別項より「分娩時に産道となった膣や子宮口は、必然的にダメージを受けており、完全に元の状態を回復するには、1年近い期間を要する」)で、生まれてきた赤ん坊の世話をしなければならない。3時間おきの授乳で睡眠は細切りになり、慢性的な睡眠不足も加わる。母親となったばかりの女性は、慣れない育児の不安やストレスも大きい。完璧にしようと思う人ほど鬱になりやすい。(中略)母親や夫の協力が不可欠だが、それが得られにくい状況も多い。そうした悪条件が産後うつを生む。」
   いささか難しい表現が続いたが、私は以前、ブログで「産後うつ」の大変さついて述べている。この中では、ある母親の産後うつによって追い込まれる地獄のような日々を漫画でわかりやすく紹介した記事を扱っている。是非、参照して頂きたい。
   また、やはり以前、ブログで産後うつを防ぐための対策について述べている。この中では、厚生労働省が来年度、「産後うつ」などの予防のために、出産したばかりの母親を対象とした健診への公費助成を始める方針である事を紹介しているが、私は、先の岡田氏の指摘にもあったように、母親の身近な人間による親身な世話こそが、母親のストレスを軽減させる一番の方法だと指摘している。
   近頃ではようやく「イクメンパパ」の存在がクローズアップされてきているが、割合的にはまだまだ多くはないのが実態である。しかし今回の記事から分かるように、「産後うつ」というものは1人の赤ん坊の命さえ奪いかねない重要な問題である。

   今回の記事は、特に旦那さんや奥さんのお母さんを始めとしたご家族の方々に是非読んで頂きたいものである。なぜなら、精神科医の岡田氏が指摘するように、一歳半までの養育は子供の人格の形成に一生影響与え続ける大切なものである。お母さん方にはその乳幼児期の養育に対しては心に余裕を持って当たって頂きたいからである。
   神奈川県相模原市の知的障害者施設殺傷事件を起こした犯人や、子供を自分の所有物のように扱う毒親は、自身の乳幼児期に親から十分な「共感」が得られなかったために、自分を特別な存在と思い込む「自己愛性パーソナリティ障害」に陥っている。
   我が子をそのような大人に育てないために、ぜひ周囲の方々の協力をいただきたいところである。

   なお、ネットではで産後うつ病自己診断を行えるサイトもある。「自分が産後うつではないか?」という不安を覚えた時に、自己診断によって、できるだけ早く自分自身の実態を把握し早期に予防する一助となれば幸いである。