【今回の記事】

【記事の概要】
{10AC780B-6DB5-4409-A96E-5195054E41B5}

   芸能活動をしていた大学生の冨田真由さんがファンの男に刺され重体となった事件の裁判で、22日は被告人質問が行われ、男は犯行の詳細を語りました。
   去年5月、東京・小金井市で、芸能活動をしていた大学生の冨田真由さん(21)が首や胸などをナイフで刺された事件。殺人未遂などの罪に問われた岩埼友宏被告(28)はジェスチャーを交えながら、事件当日のことを語りました。
「冨田さんを刺そうと思ったきっかけは?」(弁護士)
きっかけは電話なんじゃないですか。(冨田さんが)電話をし始めて、拒絶されたと思ったので絶望と悲しみ怒り、いろいろな感情が湧いてきました」(岩埼被告)
 そして、岩埼被告はズボンの左ポケットに入っていたナイフを取り出すと、利き手の左手で冨田さんの首に手を回し、刺したといいます。34か所以上刺された冨田さん。岩埼被告は、冨田さんのマスクを取り、ある言葉をかけたといいます。
生きたいの?生きたくないの?彼女が横を向いて倒れていたので『こっち見ろ』と思い、あおむけにしました」(岩埼被告)
 そして凶器として使われたナイフについて。
「『お守り』として持っていた」と主張している岩埼被告に対し、検察官が問い質しました。
「なぜナイフが『お守り』になるんですか?よく分からないので説明してもらえますか」(検察官)
ほー、分からないですか精神的優位性ですかね自分を鼓舞するためって言ったら分かります?あ、殺すつもりはないです」(岩埼被告)
「起訴状読み上げられたとき、殺意を認めていますよね?」(検察官)
「黙秘します」(岩埼被告)
 一方、冨田さんに対しては、
「大けがさせたことは、どう思っている?」(弁護士)
うーん、まー、申し訳ないとは思います。後悔しています」(岩埼被告)
 23日は冨田さんの意見陳述と論告、弁論が行われる予定です。

【感想】
   この岩埼被告、過度に自分を特別な存在と思い込む「自己愛性パーソナリティー障害」ではないかと思われるふしがある。

   まず、単なる一人のファンにしか過ぎない自分が、冨田さんと特別な存在になれると思い込んでいた。(その思いが裏切られた時の凶暴性が、真剣に思い込んでいた事を物語っている。)
   また、暴行を働いている時に、まるで自分が冨田さんの生き死にを握っている優位な存在かのように生きたいの?生きたくないの?」と問いかけている。
   更に、検察官や弁護士に対する言葉遣い(上記太字部分)の中に、やはり自分の方が特別で優位な立場にあるとでも言いたげな言葉遣いが随所に見られる。

   この「自己愛性パーソナリティー障害」については、先に投稿した「障害者施設殺傷事件植松容疑者は「自己愛性パーソナリティ障害」!〜「明日は我が身」も!〜」でも紹介したが、乳幼児期に母親等から「すごいね!」と褒められたり、「そうなの!」と話を聞いてもらったりする「共感」が不足していると陥る障害である。

   実は、自己愛性の強い人間が増えてきていることは、過去に以下のブログ「注意!モンスター化する「自分大好き」な人たち〜やはり鍵を握るのは「愛着スタイル」〜」でも紹介している。その中で紹介した精神科医の片田珠美氏は、その自己愛(「自分大好き」)性の人間を以下の5つに分類している。

【1】自己顕示型~セレブ気取りの虚構

【2】自己陶酔型〜あら探しという復讐

【3】特権意識型~特別扱いが当然

【4】過大評価型~自慢は過去の栄光

【5】無価値化型~弱者への八つ当たり


   この中に「特別扱いが当然」と思い込む「特権意識型」というタイプがある。自分を特別な存在と思い込む自己愛性パーソナリティー障害」とは、実は、この「特権意識型」の症状が突出した障害なのではないだろうか?

自己愛性パーソナリティー障害」は、赤ん坊に対する「共感」が不足している養育に無関心な親のもとでであれば、誰がなっても不思議ではないものである。また、上記の片田氏が分類した5つの自己愛性の人間は、自分たちの身の回りにいる健常者である。

   つまりこの両者は、程度の差こそあれ、どちらも乳幼児期の親による養育が不十分だったために見られる症状であると考えられる。それだけに、今は、障害者施設殺傷事件の植松容疑者の位に過度に症状が現れる人間はごく一部であるが、今後養育に対して無関心な親が増加していけば、植松容疑者と同じような症状が現れる人間も増えていくことは十分考えられる。

   いや、既に、今回の冨田さんを襲った岩埼被告のように植松容疑者と同じくらい残虐な人間が出現しているのだ。

   人間の一生の人格形成に影響を及ぼす乳幼児期の愛着形成の重要さについて、私達は早急に共通理解する必要があるのである。