【今回の記事】
なぜ札幌の新人看護師は“自殺“したのか?

【記事の概要】
   札幌市の新人看護師の女性が自殺したのは、長時間労働などで、うつ病を発症したことが原因だとして、母親が国に、労災認定を求めた裁判の初弁論が2月3日開かれ、国側は争う構えを示しました。
   証言などをもとに、一日の流れをみると、午前4時30分に起床。午前0時ごろ帰宅。その後足りない知識を補うため勉強し、また出勤するという毎日でした。
   杉本さんの母親の話〜「睡眠時間は2、3時間になっちゃっていた」
   母親は5月に入ると、異変を感じたといいます。
だんだん血眼になるのが見えてきて、患者さんも受け持ちができて、午前2時、3時に部屋の電気がついているな、うたた寝しているのかな、とのぞくと、勉強していて。なんでそんなに勉強しているの? と聞いたら、『こうしないと、付いていけない』と。その言い方が、すごいつらそうで…」
   なぜ長時間労働は、続いたのか。仕事が終わってから、作成が毎日義務付けられていた、先輩看護師との記録には…
なんでその処置が必要か、根拠について確認してください」「知らない時は調べる
作業手順や考え方、知識不足を指摘され、その要求にこたえようと、必死になっていた綾さん
(友人とのLINEより)
「5月13日。この前の初めての夜勤で、事故起こしたんだよね。全盲の患者さんの麻薬の量、間違ったんだ。それがもう、とどめって感じ。」
「7月23日。ここ最近絶不調です。本気でどうやったら病院に来なくていいか、存在消せるか。死ぬか? とか考えました」
(綾さんのSNSより)
「11月30日。看護師向いてないのかもー。あー自分消えればいいのに、なんてねー」
   この2日後、綾さんは一人暮らしのアパートで、遺体で発見された。

   日本医労連の調査では、「慢性疲労があるという看護師は全体の7割に達する。特に、重い責任と判断力が求められる月に4回ほどの夜勤が、新人看護師にとって大きな負担になっている。」という実態が明らかになっている。
北海道医労連 鈴木緑さんの話〜「高齢化している分、看護の手が必要な時代になっているのが、昔とは本当に違う。看護師がまったく足りていない。『先輩に聞いちゃいけないかな』と、新人が気を使ってしまうものを言いやすい職場づくりも、非常に大事だと思う」

【感想】
   自殺した綾さんが、午前0時ごろ帰宅しその後先輩からなんでその処置が必要か、根拠について確認してください」「知らない時は調べる」と指摘された疑問点について調べ作業をしていたことは、自ら課題を課した先輩看護師はもちろんのこと、全ての新人看護師に対して同様の指導方針をとっていた病院も把握していたはずです。更に、出勤時刻から推測すると、睡眠時間が僅かしか取れていないということも病院側は把握できていたことだったと思います。その結果として新人看護師が自殺したのです。つまり、今回の綾さんの自殺は、病院側が新人看護師の職場環境を放置してきたたために起きた事件だと言えるでしょう。

   また、綾さんのLINEによれば、「この前の初めての夜勤で、事故起こしたんだよね。全盲の患者さんの麻薬の量、間違ったんだ。それがもう、とどめって感じ。」と、夜勤での失敗がかなり決定的なきっかけとなって本人を追い詰めていたことがわかります。しかし、日本医労連の調査では、「重い責任と判断力が求められる月に4回ほどの夜勤が、新人看護師にとって大きな負担となっている」という実態は分かっていたわけですから、たとえ新人看護師が夜勤で何らかの失敗をしたとしても、それなりのケアやフォローがされて然るべきだったと思います。

   前回と今回の投稿内容をまとめると、(前回の投稿については、以下のURLタップにてご参照ください。)
看護師になり8カ月で自殺 〜本人を追い詰めたのは先輩からの指導?〜

もしも、
・新人看護師の未熟な点について勤務時間中に教授が行われ、0時に帰宅した後、その日に学んだことを「記録する」(「調べる」ではなく)だけの作業のみで、すぐに就寝できていれば、
・先輩看護師から知識・技術不足を厳しく責められるようなことがなければ、
・重い責任と判断力が求められる夜勤へのケアがあれば、
おそらく綾さんが自ら命を立つような事には至っていなかったと思います。明らかに、新人看護師に対する指導体制に不備があったのです。今となっては全て「たら、れば」の話になってしまいますが。

   そもそも、北海道医労連の鈴木氏の指摘にもある、新人が「先輩に聞いちゃいけないかな」と気を使ってしまう環境については、「看護師不足」という物理的条件は何ともし難いとしても、職場の工夫で少しでも改善できる面があるのであれば何としても対処して欲しいと思います。知らないことやできないことがたくさんあるから新人です。その新人が先輩にものを聞きづらい職場は新人にとっては正に地獄でしょう。鈴木氏の言う「ものを言いやすい職場づくり」、正にそこから再スタートがきられるのだと思います。