【今回の記事】
看護師になり8カ月で自殺 母親が労災認定を求めた裁判で初弁論

【記事の概要】
   自分の夢だった看護師になってからわずか8カ月、杉本綾さんは23歳の若さで自ら命を絶った
   自殺の原因は、長時間労働などでうつ病を発症したことだとして、母親が国に労災を認めるよう訴えを起こし、3日、初めての弁論が開かれた。
   そんな綾さんが就職したのは、北海道・札幌市にある総合病院。綾さんの時間外勤務の全記録を見ると、看護師になって、わずか1カ月後の5月は、91時間に及んでいる。その後も、毎月65時間を超える時間外勤務を重ねた。
   母親は、働き始めてから1カ月で、綾さんの異変を感じていた。母親は「なんで、そんなに学生のように勉強しているのということを聞いたら、『こうしないとついていけない』っていう。その言い方がとてもつらそうで」と話した。
   1日の勤務後に作成が義務づけられていた、先輩看護師との記録には、「なんでその処置が必要か、根拠について確認してください」とあった。
作業手順や考え方、知識不足の指摘徐々に、綾さんは追い詰められていった
   3日に開かれた初めての弁論で、母親は帰宅後の娘の自宅での仕事は、一切時間外として考慮されていないと主張。
   勤務先の病院は、今回の裁判や当時の勤務状況について、コメントできないとしている。

【感想】
   今回の綾さんの自殺の原因は、「長時間労働等でうつ病を発症したこと」とされている。労働時間については、看護師という職務の特質やその職場ならではの問題が関係していると思われるので、そのことについてはここではあえて言及しない。
   今回の投稿では、この「長時間労働」の「等」に注目したい。具体的には、1日の勤務後に作成が義務づけられていた先輩看護師との記録の作成に関わる事である。さらに具体的に言うと、先輩看護師の指導のあり方についてである。

   記事には、先輩看護師からの「なんでその処置が必要か、根拠について確認してください」というコメントが紹介されている。「その処置」という意味が「綾さんが行った誤りのあった処置」という捉え方なのか、「患者に行われた適正な処置」という捉え方なのかは明確でないが、いずれにしても、綾さんに足りない知識があったのであれば、あえて自宅に帰ってからの宿題にするのではなく、その場で教えてやれば済むことではないだろうか?「自分で考え自分で調べて技術を習得してほしい」という考え方なのかもしれないが、母親が言うように、家に帰ってから更に学生のように勉強しなければいけない課題を課すということは、彩さんにとっては、あまりにも大きい負担だったのではないだろうか?経験豊かな先輩看護師であれば、その事を汲み取ってやることは十分可能だったと思われる。
   それだけではない。綾さんが精神的に「徐々に追い詰められていった」のは、綾さんの「作業手順や考え方、知識不足」を指摘し、あえてその点を“責める”ような指導の在り方だったのではなかったか?
   もしかしたら、その先輩看護師も自分が若い頃同じような指導を受けてきたのかもしれない。しかし、今回の最悪の結果を見れば明らかなように、そのような指導のあり方は看護師の勤務の実態にあまりにもそぐわないものだったのである。

   経験の浅いものが失敗をするのは当然のことである。しかし、その失敗に対して厳しく叱責し責める上司がいるのもまた事実のようである。しかし、「ストレス社会」と言われる昨今、今一度部下に対する指導のあり方を見直す必要はないだろうか?このことについてはまた機会を見つけて考えてみたい。