【今回の記事】
“ポケGO運転”事故「鉄の塊操った殺人」

【記事の概要】
   愛知県一宮市で“ポケモンGO”をしながらトラックを運転し9歳の男の子をはねて死亡させたとされる男の初公判が19日に開かれ、被害者の両親も傍聴した。
 起訴状などによると、川合信右被告(36)は去年10月、愛知県一宮市でトラックを運転中に、スマートフォンに表示させていた“ポケモンGO”に気をとられ、横断歩道を渡っていた則竹敬太くん(当時9)をはねて死亡させた罪に問われている。
 19日の初公判で川合被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。続く冒頭陳述で検察側は、「被告は日頃から、ポケモンGOのモンスターを獲得するには車を利用することが効率的と考え、運転中にゲームを起動させていた」と、日頃からの“ながら運転”を指摘した。
 公判終了後、敬太くんの父親・則竹崇智さんは、「鉄の塊の凶器を操った殺人事件だと思っています。いまいち反省だとか謝罪の気持ちは、全く伝わってきませんでした」と話した。

【感想】
「ポケGO」による初めての死亡事故であった。川合被告もそのことは認識していたはずである。それにも関わらず、「反省だとか謝罪の気持ち」を相手に伝えることが出来なかったというこの被告の言動に対して“不安定な人格性”を感じざるを得ない。つまり、精神科医の岡田氏が言うところの不安定型の愛着スタイル(人格)の人間であると思われる。
   このタイプの人間は、「安全基地」となる愛着対象としての他者(親友や親等)を持てないでいる。安定型タイプであれば、何らかのストレスを感じた場合、「安全基地」となる愛着対象の他者のもとへ足を運んだり思い出したりすることによって、自分の気持ちを安定状態に戻すことができる。
   しかし、愛着対象を持てないでいる人間は、その代わりに身の回りで手近に得られるもの(アルコールや薬物など)の力を借りて気持ちを安定状態にしようとする事が多い。しかし、本来安全基地としての機能を持たない代用品では簡単には気持ちを安定させることが出来ないために、結果的に何度もその代用品に頼ってしまうことになる。つまりこれが「依存」である。
   聞けば被告はプロのトラック運転手であるとのこと。プロでありながら日常的に「ポケGO」をしながら運転していた川合被告の行動から、この被告にも強い「依存性」が感じられる。「ポケGO」をしている事が彼にとって心の安定をもたらす唯一の行為だったのかもしれない。

   彼のように真の愛着対象を持たない心の寂しい人間は他にもたくさんいる。彼ら彼女らは、過食や買い物、アルコールや薬物、不安定な対人関係や恋愛、ギャンブルや見境のないセックス、ネットゲームやチャット。様々な形で依存行動に走るのである。

   なお、愛着が依存的行動に影響することは、前回投稿した以下の記事で詳しく紹介したので、URLタップにてご参照頂きたい。
愛着の話 No.21 〜愛着は薬物、アルコール等の依存症にも影響する〜

   改めて、愛着形成の大切さを実感せざるを得ない。