(この「愛着の話」は精神科医の岡田尊司氏を中心に、各専門家の文献を、内容や趣旨はそのままに、私が読みやすい文章に書き換えたものです)

   本来、精神的に不安定になった時に、安心感をもたらしてくれるはずの安全基地を持たない人は、その代わりに、手近に得られるものに依存してしまいやすい傾向があります。手っ取り早い方法で自分を慰めてストレスを軽減させようとするのです。過食買い物アルコール薬物といったものは、その代表的な例だと言えるでしょう。また、不安定な対人関係や恋愛に次々のめり込むことも多いようです。それによって、激しい刺激や瞬間的な満足を得ることで、束の間でも不安感を忘れようとするのです。
   アルコール依存症や薬物依存症の人では、高い割合で、不安定な愛着スタイルを示します。つまり子供の頃に、放任だったり、否定的な扱いを受け続けたり、過干渉だったり、過保護だったり、虐待されたりするような不安定な環境で育った子供は、母親を安心感をもたらす安全基地として見なせないので、それに代わるものにすがるしかないのです。
   また、先に挙げたような依存症だけでなく、ギャンブル見境のないセックスネットゲームチャットといった行為に依存する場合もあります。万引きが癖になってしまいそこから得られる快感に依存してしまうこともあります。もちろん、ギャンブルやネットに依存しやすい人も、不安定な愛着スタイルを抱え、親子関係がギクシャクしていたり、冷淡だったりする傾向が見られます。昨今、親がネットに夢中になっているうちに、幼い子供が死亡してしまうと言う事件も起きていますが幼い頃ネグレクトを受けて育った親自身が、ネットと言うすがるものを求め、それが新たなネグレクトを夢と言う悲しい悪循環だと言えるでしょう。