【今回の記事】
止まらぬ少子化の流れ… 出生数100万割れ 戦略的な人材育成が必要

【記事の概要】
   日本の少子化が深刻さを増してきた。厚生労働省の推計では2016年の年間出生数が98万1千人にとどまり、ついに100万人の大台を割り込む見通しとなった。
   多くの日本人が少子化を強く意識するようになったのは、前年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する子供の推計値)が丙午(ひのえうま)の年を下回ったことが分かった1990年。いわゆる「1・57ショック1989年人口動態統計において、合計特殊出生率過去最低の1.57に低下した事態)」であった。今回の「ミリオン・ショック」も危機を再認識させる機会となるだろう。
   だが、真に懸念すべきは100万人割れではなく、その後も出生数減少の流れが止まらないことである。国立社会保障・人口問題研究所によれば40年後には50万人にも届かず、100年も待たずして25万人を割り込むという。
   少子化は人口減少を招く。少子化スピードを緩めなければ、人口減少に耐え得る社会への作り替えの余裕がなくなる
   出生数の減少は幅広く影響を及ぼす。その1つが人材の育成・確保を困難にすることだ。子供の絶対数が激減するのだから、今までと同じように各分野に人材を輩出できなくなる
   これまでの人手不足は景況に大きく左右されてきたが、今後は絶対的な後継者不足に陥ることが想定される。人材争奪戦の結果、特定分野に偏れば社会が機能しなくなることもあり得る
   政府・与党には外国人労働者でカバーしようとの動きもあるが、欧米の混乱ぶりを見れば限度があることがよく分かる。受け入れ困難な職種も存在する。人工知能(AI)やロボット開発も期待を集めるが、多くはいまだ実用化の段階にない
   人口減少社会において、子供たちの夢を尊重しつつも必要な人材を育てるには、日本全体として戦略性を持った取り組みが必要となる。(論説委員・河合雅司)
   
【感想】
   今回の投稿は、今後の日本社会にとってかなり深刻なシュミレーションを示すものと言わざるを得ません。
   出生数が現在の更に2分の1の50万人にも届かない40年後とは、今生まれた赤ん坊が働き盛りになり、今の親世代もまだ生きている、決して人ごとではない時代です
   その頃には、外国人労働者もAIも、おそらくそれを補うには至らず、場合によっては、社会が機能しなくなることもあり得るとのこと。いよいよ日本社会の崩壊の姿が見えてくるかも知れない状況に既に陥っているのです。

   さて、この人口減少という“時限爆弾”が作動し始めたのは一体いつからだったのでしょうか?

   その事を考えるためには、精神科医の岡田氏のある指摘に耳を傾ける必要があります。
   岡田氏は、戦前の「我慢」から解放された戦後の価値観の多様化をきっかけに、その後の高度経済成長期(1954年から1973年)における工業化、核家族化によって、人間同士の愛着(愛の絆)が失われる「脱愛着化」が始まったと指摘しています。詳しくは以下の記事のURLタップにてご参照ください。
愛着不全問題の始まりは、あの『金八先生』でも『腐ったミカン』として描かれた非行、校内暴力

   更に、愛着が特に大きな影響を及ぼすのが、成人後の性行動、恋愛や結婚に対してであることは、以下の記事で紹介しました。URLタップにてご参照ください。
愛着の話 No.20 〜愛着は特に成人後の異性関係や子育てに影響する。〜

つまり高度経済成長期に始まった「脱愛着化」によって、今や人の恋愛や結婚に対する行動にかなりのブレーキがかかっています。結果的に子どもの出産に至らない傾向に拍車がかかっている状態なのです。
   つまり、先の“人口減少という時限爆弾”が作動し始めたのは、「脱愛着化」が始まった高度経済成長の頃だったのです。そのことはすなわち、その時限爆弾を止めるには、脱愛着社会から抜け出す以外に方法はないという事を物語っています。
   そのための方法は次の2つしかありません。
愛着形成の限界点(臨界期)である一歳半までの養育のあり方を見直すことによって、人間の人生のスタートから愛着形成を成功させること。
残念ながら1歳半までの愛着形成に失敗した子供、または、一度形成したはずの愛着が失われてしまった子どもに対して、今から愛着形成をやり直すこと。
その方法の詳細については、以下の記事のURLタップにてご参照ください。
愛着形成(愛着形成のやり直し)の仕方 『愛着7

   やはり、愛着が要因となって引き起こされている、いじめ、不登校、ひきこもり、非行、家庭内暴力、恋愛・結婚回避、離婚、薬物依存、家族内殺人等、毎日ニュースで報道される凄惨な問題によって日本社会が崩壊するのが早いか、「脱愛着化」によって引き起こされている人口減少によって日本社会が機能しなくなるのが早いか、何れにしてもこの危機を救うための最大のカギを握っているのは、人と人との「愛の絆」、すなわち「愛着」、それ以外にあり得ないのです。