ご無沙汰田になってしまっていた「愛着の話」。
   今回のテーマは「愛着は『自律心』の発達にも影響する」です。「自律心」とは、簡単に言うと「我慢する力」のことです。人生は一生自分の弱い心との戦い”です。すなわちこの「自律心」を身に付けることが出来るかどうかは、一人前の大人になれるかどうかの大きな分かれ目になります。
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   安全基地としての愛着の働きが特に不可欠となるのが、社会性の発達においてです。愛着がなぜそれほど重要なのかは、実はこの社会性に大きく関わってきます。愛着は、本来本能的である人間の感情を、理性的にコントロールし社会性を備えた感情に変える働きを持っています
   例えば、「怒り」という最も本能的な感情を考えてみましょう。愛着が安定した人は、「怒り」を、“自分の身を守ったり対人関係を深めたりするため”という目的のはっきりとした理性的な行動に表すことができます。ところが、愛着が不安定な人の場合、「怒り」という本能的な感情がそのまま暴走し、自分を守るどころか、逆にもっと事態を悪化させたり人間関係を破綻させたりしてしまいます。
   このように、子どもは愛着対象との関係を土台にして、そこから感情をコントロールして理性的に行動する「自律心」を身に付けていくのです。いわゆる本能的な感情を“我慢する”力を身に付けていくのです。

   また、「マシュマロテスト」の著者、ウォルター・ミシェルは、その著書の中で次のような内容を紹介しています。
   スタンフォード大学ビング保育園の550人以上の園児を対象に、ある実験室に1人ずつ呼び、テーブルの椅子に座らせる。テーブルの上には、マシュマロが1個置いてある皿と、2個置いてある皿とが並べてある。そして1人の研究者によってこれから行う課題のルールが次のように説明される。「これから私(その研究者)は実験室からいなくなり20分したら戻ってくる。それまでマシュマロを食べないで待つことができたら、2個のマシュマロを食べることができる。どうしても待てなくなったらベルを押して私を呼ぶ。しかし、その場合はマシュマロは1個しか食べられない。」ミシェル博士たちはその園児たちについて10年ごとに追跡調査をした。調査した項目は対人関係、自制心、学校の成績、健康面、脳の働きなどである。すると、マシュマロを食べずに我慢できた子供たちは、我慢できなかった子供たちに比べて、青少年期、成人期、中年期における先の調査項目が、いずれも良い結果が見られた。(ミシェル2015)
(次回に続く)