突然ですが、しばらく「愛着の話」の投稿がご無沙汰していたことに気がつきました(相変わらずの私です)。更に、「なぜ私が愛着に関する本を書こうと思ったのか」という、1番大切な“動機”を述べている「はじめに」を投稿していなかったことにも気づきました。そこで、順序が逆になってしまいますが、急きょ号外扱いで今日から3日連続でその投稿をさせてください。

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   はじめに

   私は、約30年近くの教員時代に、通常学級の担任の他に特別支援学級の担任と生徒指導主事も務めました。
   特別支援教育の担当としては、特に通常学級に在籍する発達障害(自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害、学習障害)の子供に対する支援のあり方が課題でした。文部科学省の調査によると、通常学級に発達障害の子供が存在する確率は6.5%と言われています。30人学級で換算すると約2人いる計算です。
   一方、生徒指導主事としては、校内の子供の生活指導はもちろん、保護者に対する児童についての悩みアンケートも実施しました。すると、担任の目から見ても保護者の目から見ても、明らかに問題症状がみられる児童が浮かび上がりました。その数は、おしなべてどの学級にも3分の1近く、同じく30人学級で考えると10人程度いるという計算になります。
   さて、ここである疑問が浮かび上がりました。それは発達障害の子供と、それ以外の問題を抱える子どもとの人数の違いです。30人学級計算で、発達障害児が約2人であるのに対して、いわゆる「健常児」で問題症状が見られる子供が10人もいるのです。つまり、健常児であっても、明らかに発達上の問題を抱えている子供がいるということです。それも、何度注意しても治らない子供が多く、それらの子ども達も発達障害ではないかと疑いたくなるほどです。
   そんな時、私はある1冊の本に出会いました。精神科医の岡田尊司先生の「愛着障害〜子ども時代を引きずる人々」(光文社新書2011)と言う本です。ちなみに、「愛着障害」とは、乳幼児期の赤ちゃんに対する養育の仕方が適切でないために、子供時代はおろか、その人の人格形成に一生悪影響を及ぼす深刻な症状です。ただし、「障害」といっても、一般に言われる先天性の「障害者」の捉え方とは違い、生まれた後の環境状況によって引き起こされる後天性の症状のことです。
   その本の中に、「愛着スペクトラム障害」という言葉が出てきました。「スペクトラム」とは、「連続体」と言う意味で、乳幼児期に激しい虐待や育児放棄に遭った子どもが陥るような「反応性愛着障害」だけでなく、ごく普通の家庭に育った子供にも見られ、「反応性愛着障害」と比べれば程度が軽いだけの、似たような症状のことを指しています。また、岡田氏によれば、愛着スペクトラム障害(以下「愛着障害」)の症状を持った子どもは、約3割程度の割合で存在するとの事でした。この割合はまさに先程の「健常児であるのに問題症状を抱えている子ども」の割合と酷似しているのです。(続く)