【今回の記事】
「〇〇しなさい」という言葉が子供の能力をつぶす。 『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』

【記事の概要】
   勉強ができる子に育てる、お母さんの「言葉がけ」を紹介する『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』が2016年12月15日(木)に発売された。
   同書の著者は、自身の子供を岡山県から東大と早稲田大に入学させ、また家庭教師として数々の家庭を観察してきた楠本佳子。同書には自身の育児体験と、家庭教師歴15年、塾講師歴4年の経験を踏まえた独自の指導法が綴られており、「どうすれば子供の力を伸ばすことができるか」が、数々の具体例とともに説明されている。
①「〇〇しなさい」という言葉が子供の能力をつぶす
 子供に日常的に「しなさい」という言葉を使っているお母さんは多いもの。「起きなさい」に始まって、「食べなさい」「宿題しなさい」「寝なさい」など、毎日数えきれないほどの「しなさい」を使っている。だが、誰だって他人に命令されてやるより、「やりたいからやる」ほうがすぐ行動に移せるはず脳科学でも、人は「強制的にやらされている」と感じると脳の活動が抑制されて、前頭葉を中心とする「やる気の回路」が働きにくくなることが実証されている。つまり、親が「しなさい」と言えば言うほど、子供のやる気はどんどん低下するのだ。
   反対に「しなさい」と言われて、「はい、わかりました」と従う子供は、自分で考えて行動することができない人間になってしまう。母親の言うことにすべて従っていたら、本当の意味での「賢い子」は育たない。では、どういう言葉をかけたらいいのか? 同書ではその考え方や、子供の能力を伸ばす言葉がけについて解説している。
肝心なのは、親の「質問力
 人は質問されると、それに答えようとして考えて頭を使う。親が日頃からたくさん質問をすれば、子供の「考える力」が自然に養われていく今どきの子供は、トラブルが起きたときにきちんと説明できなかったり、就職の面接試験などでも、質問されたことに的確に答えられないと言われている。こうした能力は、子どもの頃から「質問に答える」習慣があるかによって、大きく違ってくるのだ。
   例えば、子供に学校の様子を聞くとき、「今日は学校どうだった?」と質問すると、大雑把すぎてどう答えていいかわからないため、「別に」という返答が多くなる。だが、「今日はお昼休みは何をしたの?」「今日の給食はどんな味だった?」などと具体的な質問をしてあげると、子供はきちんと考えて答えようとする。子供が自分の頭で考えたことを自分の言葉で話せるよう誘導していくことが必要だ。
ゲームや携帯で遊んでばかりで、勉強をしない子供には?
 小さいうちからゲームや携帯で長時間遊ばせていると、習慣づいてしまってなかなか直すことができない。すでに習慣化してしまい、ゲームや携帯を四六時中手放せずに困っている場合はどうすればいいか。同書では、そんなときの対処法も解説している。
   こうしたケースでは、勉強嫌いになる言葉かけをゲームをする場面で逆に利用するのだという。例えば、絶対にクリアしなくてはいけないノルマを課したり、上手くできなければ怒る。「なんでそこ、うまくできないの?」「なんでそんな簡単なものがクリアできないの?」「何やってるの!」と細かくダメ出しし、強制すればするほど、子供は嫌になり執着しなくなっていくのだ。

【感想】
   今回はある書籍の紹介です。テーマは「12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣」。項目毎に見ていきたいと思います。

①「〇〇しなさい」という言葉が子供の能力をつぶす
   これまで私も、「命令しない」支援については以下の「自立3支援」の記事で指摘してきました。このことについては以下の記事のURLタップにてご参照ください。
これは大ヒット! 子どもが必ず自立します! 〜『自立3支援(見守る。任せる。命令しない。)』〜

しかし、今回の記事では、「脳科学でも、人は「強制的にやらされている」と感じると脳の活動が抑制されて、前頭葉を中心とする「やる気の回路」が働きにくくなることが実証されている」と、なぜ命令しないほうがいいのか?ということについての科学的根拠まで示しています。

肝心なのは、親の「質問力
   この指摘はとても大切です。「親子の対話不足」や「子どもの思考力の退化」といういずれも重要な問題を一度に解決できます。特に、前者は精神科医の岡田氏が「人間の人格形成に一生影響を与える」と指摘している愛着の弱体化につながりますし、後者は、子どもの学力に大きく影響する問題です。
   気をつけなければならない事は、記事にあるように、抽象的な聞き方ではなく具体的な聞き方をするという事です。このことで、子どもは考えようとする意欲が増します。そして、子どもが教えてくれた時には、最後に「ありがとう」を付け加えれば、親子間の愛着の強化にもつながります

ゲームや携帯で遊んでばかりで、勉強をしない子供には?
   この記事の中で、唯一この点の支援の方法だけは賛同できません。つまり、子どものゲームにダメ出しを連発し、ゲームに対する意欲をなくそうという方法です。なぜかと言うと、子どもにとってゲームはとても楽しい時間。そこにダメ出しを連発されると自分にとって楽しかったゲームの時間を親から台無しにされた」という親に対する不満が残ってしまうからです。ゲーム機はもともと親が高いお金を出して買い与えたもの。その遊びを悪習慣にさせてしまったのはやはり親の責任です。せっかく買い与えたゲーム機を親の指導不足のために無駄にしてしまうことにもなり、とても不合理です。
   このような場合は、スモールステップ式の指導が好ましいと思います。「少しずつ」なら子どもも抵抗が少なく取り組めるからです。キッチンタイマーを与えて、「今日は◯分間まで」「明日はそのマイナス5分間」「明後日はさらにそのマイナス5分間」という約束(場合によっては、「3分毎」でも可)を事前に予告しておき、約束を守れた日には必ず褒めます。そのことによって、その取り組みに対する意欲が増します。
   どうしてもゲーム癖が治らないという場合には、子どもがゲーム感覚で楽しみながら取り組めるトークンエコノミー方式」をお勧めします。この方法は効果抜群です。このことについては以下の記事のURLタップにてご参照ください。
なかなか直らない子どもの行動改善に効果抜群!「トークンエコノミー法

この方法と今回の記事の方法との違いは、毎日子どもを褒めながら指導できるところです。親が子どもの楽しい時間を台無しにする悪役になるよりも、親子間の愛着が強まる方法の方が何倍も魅力的だと思います。