【今回の記事】
原発避難でいじめ、学校「被害届ないと動かない」

【記事の概要】
   学校の対応に厳しい批判が集まっています。福島第一原発事故によって自主避難していた生徒が転入先の小学校でいじめを受けていた問題。小学5年生のころ、この生徒は同級生が遊ぶ金として合わせて150万円も支払っていましたが、両親から相談を受けた学校は「警察に行って被害届を出すでもしないと動かない」などと対応していたことがわかりました。
「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」(男子生徒の手記)
   小学2年生で転校してきて以来、いじめを受けていた男子生徒は、小学5年生のころには、横浜駅周辺やみなとみらいの遊園地などのゲームセンターで同級生が遊ぶ費用を全て支払うようになっていました
賠償金もらっているだろ?
次のお金もよろしくな」(横浜市いじめ問題専門委員会 調査報告書より)
要求は1回当たりおよそ10万円にもなり、同級生に渡した金は総額で150万円にもなっていました。その後の関係者への取材で、家の金がなくなっていたことに気づいた両親が学校に相談したところ、学校は「警察に行って被害届を出すでもしないと動かない」などと対応していたことがわかりました。また、学校内の調査では「男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性がある」などと結論づけられていました
 「子供はいじめから逃れたい一心でお金を出していたようです。子供としては精一杯の防衛行為だったと思います」(両親の声明 今月15日)
 学校の対応について、第三者委員会は「積極的に教育的支援を行わなかったことは教育の放棄に等しい」と厳しく指摘しています。市の教育委員会に対しては苦情の電話がこれまでに140件以上寄せられているということで、教育委員会は、市立の全ての学校に対し、近く再発防止を求める文書を通知することを決めています。

【感想】
   前回に続き、原発避難いじめの問題について。
   今回の疑惑の焦点は、「なぜ校内の調査で、150万円もの大金を『男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性がある』と結論づけたのか?」という一点のみである。

   どのような経緯があったのかは分からないが、おそらく、校内の調査で「男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性がある」と結論づけられたことから、両親が学校に相談しても、「校内の調査でそのように結論づけられたため、これ以上金銭をもらった児童に対して責任を問うわけにはいかない」という判断の下、「警察に行って被害届を出すでもしないと動かない」という回答になったと考えられる。
   ここで、冒頭の“疑惑”が浮き彫りになってくる。ではなぜ校内の調査で、150万円もの大金を「男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性がある」と結論づけたのか?
   調査においては、加害側と被害側と双方に言い分を聞いたはずである。校内の結論から考えると、おそらく加害側は「◯◯君の方からくれた」と発言したのだろう(正直に話していれば、「男子生徒が自ら同級生に金を渡した」という結論には至らない)。それに対して、被害側の児童は、なんと言ったのか?
   まさか、普通はあり得ないが、双方とも全員がいる同じ部屋で一度に事実確認をしたのだろうか?もし、そうだとすれば、加害側児童の目がプレッシャーとなって、「はい。自分から渡しました。」と答えるしかなくなる。
   仮に、別々の部屋で個々に事実確認を行なったとしよう。加害側の児童らは、やはり口裏を合わせて「◯◯君の方からくれた」と発言したのだろう。一方、被害側児童の反応はどうだったのか?これは私の憶測に過ぎないが、おそらくその児童は何も話さなかったのではないだろうか?なぜなら、前回の投稿で紹介したが、被害生徒は手記で「いままでいろんなはなしをしてきたけど(学校は)しんようしてくれなかった」「なんかいもせんせいに言(お)うとするとむしされてた」と学校や教師への不信感を募らせていた。子どもは、不信感を持つ教師の前では心を閉ざし口を閉ざすものだ。さらに、話したとしてもまた仕返しをされるのではないか?という恐怖心から、この児童は何も話さなかったのではないだろうか。
   それにしても、この児童から話を聞いた教師は、150万円もの大金を差し出した児童の無言を貫き通すその表情をみて、「この子は何かを隠しているのではないだろうか?」と汲み取ってやることはできなかったのだろうか?もっとも、この被害児童が普段から不信感を募らせていたような教師ならば、短絡的に、「黙っているということは、自分から渡したということを認めることになるんだぞ」と児童を追い詰めたかも知れないが…。

   何れにしても、学校が得られた証言は、加害側からの「◯◯君の方からくれた」という証言しかないことになる。その結果を受けて学校側は「男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性がある」という結論を導いたのかも知れない。
  しかし、証言が一方からしか得られていないのであれば、判断は「男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性もある」と言うに止まり、その後は「疑わしきは罰せず」の考えによって、「男子生徒が自ら同級生に金を渡した」という“断定”はできないはずである。ところが、学校は「男子生徒が自ら同級生に金を渡した可能性もある」という段階でありながら、あえてその“断定”を行い「あとは警察に被害届を出してもらわない限り何もできない」とまで言い切っている。このあまりにも一方的で身勝手過ぎる論理の飛躍は「教育の放棄」と言われても仕方がないものである。